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『under the shade of a tree』

 果歩が横で空に手をかざし、次に芝生をもう片方の手でなでている。私が今日はぬくいねぇ、とつぶやいたらおもむろにそうし始めた。
私の友人は少し変だったりする。時々当たり前から微妙にそれることがある。私は楽しいのでそれに従って同じようにふるまう。すると公園の舗装された道から逸れた時のような何とも言えない感情がこみあげてくる。だから多分この子とずっと一緒にいるのだと思う。

 果歩は謎の儀式を終え、満足したのかまた日向ぼっこに徹し始めた。
「私、結婚できるかな。結婚していい家族を作れるかな。」

 そう言った果歩の顔を横目で見ると、木陰に座っているので葉の影が彼女の顔にかかって、新婦の顔を覆うヴェールのようだった。顔は少し不安そうな、でもやっぱり私にはわかりかねる感情も混じってるような顔をして、ただ一点を見つめている。その方を見れば昼下がりに公園で遊ぶ子供とその親がいる。
 果歩は近々結婚するらしい。私は久しぶりに果歩に会ってその話を聞いたものだから最初はたまげた。まさか果歩が私より先に結婚するとは。小さなころから一緒に育った果歩と会える頻度が下がるのは正直寂しいが、嬉しくもある。
 
 果歩は私の返事も待たないでぐーと腕を前に伸ばして私の目を見つめた。私も、果歩の瞳に映った自分の姿を見る。
あーあ、どうして同じようじゃなかったのかな。よく子供のころは思ったものだ。今も果歩が結婚してしまうとわかってその気持ちがこみあげてくる。果歩とは全然違う姿形で、生きる年月だって違う。抱える気持ちも似てるけど、果歩のはきっともっと複雑だ。
果歩とは本当の家族、本当の姉妹、本当の友達になりたかった。

 ハルが何かを訴えるような眼で私を見る。久しぶりに実家に帰っていったら、ハルは大喜びで抱き着いてきた。たぶん、ハルは私の気持ちを分かっている。私のかけがえのない家族で、姉で、友達だ。ハルに触れようとして、手元にあった鈴付きのボールが転がった。
あぁ、ハルは遊びたいのかな。

果歩が分かった、というような顔をして、私と果歩の間にあったボールを日なたへと投げた。果歩は全く鈍い。

さて、しょうがないのでボールでも取りに行ってやろうか。

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