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『マザー・スノー』覚醒スレバ、発令セヨ③

「そっか、こりゃ夢だ!!」


そう言って、優希は両の手で思いっ切り自分の両頬をぶっ叩いた。


『パチン!!』「いっっってぇ!!!」


当たり前である。


(なんかめっちゃ不思議過ぎることが起きた。英語で誰かが私に何かを禁止させようとしてるのは解る。でも、誰が?ひょっとして、オバケ?地縛霊的なやつ?)


そんなことをグルグル思い巡らしながら、優希はペン立てに挿してあった未使用の割り箸を取り出し、封を切った。

以前コンビニで夜食用のカップ麺を買った時に付けてもらった割り箸だが、結局その日は家の箸を使ったので、余ったそれを適当にペン立てに挿していたのだ。

コンソメ味のポテトチップスは指が汚れやすいので、彼女は必ずお箸で頂く。


ポテチをポリポリと食べながら、眉間にシワを寄せては何やら深刻そうな表情で色々と考え込んではいるものの、根っこが非常に単純な彼女は3分間だけ悩んだ後、英和辞典を片付けだした。


「ほんまに大事なことやったら、幽霊だって頑張って日本語で書くやろ!多分!」


こう言ってまた優希はキャラクター図案の作成に勤しんだ。


深夜1時半を経過した頃、流石に目の疲れを覚えた彼女は眼鏡を外し、右手の人差し指と親指で眉間にあるツボを刺激した。

軽い近視なので、家で絵を描く時だけ眼鏡をかけている。

眼鏡をかけ直し、2回程まばたきしたその時。

眼鏡の内側で、何やら小さな小さなミニシアターが上映され始めるかのように、何かが投影されているではないか。

優希の両目がまるで、小さな小さな映写機にでもなったかのように、明らかに彼女自身の目から光が発射されている。

「?!?!?・・・私って、ひょっとして、ギリ人間じゃなかったってこと?!?!?」

これが現実なのか幻影なのか定まらない状態の中、もはや自分自身が人間であるのかどうかも疑わしくなりだした優希。
すると次の瞬間、まるでアニメ『ルパン三世』の冒頭でタイトル文字がタイプライターで一文字ずつタイプされるようにして、カシャカシャと、次のように眼鏡に投影された。

『そ・の・コ・ン・ペ・に・応・募・す・る・な・君・の・才・能・を・今・は・使・う・な』

「?!?は?!?キモッ!!何?!ダレ!!」  

深夜であることを完璧に忘れたボリュームでついに叫び声をあげた優希。

眼鏡の内側の文字は消えてゆき、次第に現れたのは、ガラス玉のように透き通ったファウンテンブルーの大きな瞳と、それを覆い隠せるほどの長い長い睫毛だった。


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