憧れお弁当箱【食べ物のことについて毎日考えてみた】
晴れた日曜日の朝。パンとおかずを入れた弁当箱とを袋に詰め込んで、近所の公園に自転車で向かう。
朝の公園のベンチには、まだ誰もいない。
「お弁当食べる?それとも先に遊ぶ?」と娘に聞くと「お弁当食べる!」の返事。公園にすべり台をしにきたのではない。みんなでお弁当を食べに来たのだ!と主張するかのよう。
そう、彼女にとってはお弁当を持って公園に来たことが大事なのだ。「憧れお弁当箱」を持って公園に来たのだから。
娘がお弁当への憧れを持ったのは、僕が職場にお弁当を持って行くようになってからだと思う。ランチクロスに包まれたお弁当箱を見てから、自分のありとあらゆるおもちゃをタオルで包み「これお弁当箱!」と言うようになった。いつか自分もお弁当箱を持って出かけたいと思っていたんだと思う。お弁当箱に対する憧れだ。
保育園では給食が出るから、お弁当箱を持って行くことがない。お弁当箱への憧れは募るばかり。「憧れお弁当箱」を持って出かけたい。
そこへ公園でみんなで朝ごはんを食べようとの両親からの提案。お弁当箱を持って出かける時が来た!と興奮する娘。「包むんだ〜お弁当〜パンを買ってね〜チーズを入れてね〜食べるの!」と公園でのお弁当の話ばかりをする夜だった。
公園に持ってきたお弁当はいつもの朝ご飯と変わらない。パンに卵焼きにソーセージ、マヨネーズをつけたブロッコリー。
だけど彼女にとっては特別な朝ごはん。きょうはお皿じゃなくて、お弁当箱に詰まっているのだから。
むしゃむしゃお弁当を食べ終わった後はひとしきり遊ぶ。
家に帰ってから、公園で何が楽しかった?と聞くと「お弁当!!」と即答。「憧れお弁当箱」を持って公園に行き、みんなで食べられたことがよっぽど嬉しかったんだなぁ。
娘を見ていると、何かをこんなに楽しみにして過ごすことが自分にはあるだろうかと考えてしまう。
でもよく考えれば、娘がこんなにも楽しそうにお弁当箱を広げて食べている瞬間を一緒に過ごせることが僕にとっての特別な楽しみだなとも思う。
これから先、娘が今とは違う「憧れお弁当箱」に出会い、それを広げる瞬間を一緒に過ごすことが楽しみだ。