オンラインコミュニケーションに「偏愛マップ」を使ってみたら、初対面の新入生同士が楽しくお互いを知ることができた
管理栄養士を養成する学科で教員をしています。
新入生は、大学に一度も登校しておらず、同級生同士で顔を合わせていない中でオンライン授業が進行しています。
大学での学びにとって、一緒に学ぶ「仲間」の存在は大切だと思います。
「偏愛マップ」を使ってオンラインコミュニケーションを行ってみたら、新入生同士が楽しくお互いを知ることができて素晴らしいなぁと感じたので、その内容と方法についてご紹介します。
オンラインコミュニケーションの難しさ
オンライン授業中には、反応や質問についてチャットを有効に使って実施していますので、学生たちが授業に参加しているぞ〜感は持ってもらえていると思います。
どんな感じでオンライン授業を展開しているかはこちら
また、前回のnoteにも書いたのですが、新入生同士の交流の機会が減ってしまうからどうにかしなきゃと思って実施したのがこちら
これらはうまく機能して新入生たちの不安解消に一役買ったとは思っています。
ただ、新入生同士の交流が活発に行われているかというとまだまだだよなぁという感じです。
オンライン授業は基本的にZoomを利用したリアルタイム授業を展開していますので、授業中、学生たちは基本的に
ミュート&ビデオOFF
です。
そのせいで、オンライン上ではお互いの顔も声もわからないことが多く、新入生同士がお互いを知る機会がほぼ無く、コミュニケーションを取ることがとっても難しいなと感じていました。
新入生は「学び」の「かなり手前」にいる可能性を考えて、丁寧にケアしなければいけない。
大学って何かを学ぶときに「仲間」がそばにいること大事だとおもんです。
今の状況では、難しい。
新入生のことは、特にケアしなければいけない。
さらには、お互いのことを知ってはいるけど、全然会うことができていない上級生たちのコミュニケーション不足も気になる。
おそらく、どの大学も学生同士のコミュニケーションをどうするか困っているのではないかなと思います。
新入生の状況について「学び」の「かなり手前」にいる場合があると表現し、そのケアを丁寧に行わなければいけないと立教大の中原先生も書かれていて、その通りだなと感じました。
ブログを見てこのようにツイートしています。
「偏愛マップ」を使ったコミュニケーションを実施されていたてっちゃんさん
学生同士のコミュニケーションどうやればいいかと考えていたんですが、そんなときに見たのがこちらのnoteです。
山梨学院大学で特任講師をされているてっちゃんさんが「偏愛マップ」を使ったゼミ内のコミュニケーションについて書かれていました。
これだ!と思い、ぜひ新入生の授業で取り入れたいと考えて、まずは『偏愛マップ』を購入。よく読みました。
自己紹介に使うと、物凄い速さでお互いを知ることができる素晴らしいコミュニケーションツールだということがわかりましたので、これを授業で使って新入生同士のコミュニケーションの場を作ろうと思い立ちました。
「偏愛マップ」を使った実際の授業
早速準備をして、月曜1限の1年生の授業で「偏愛マップ」を使ったコミュニケーションを実践してみることにしました。
学生たちには、これから自己紹介をしてもらいます。と伝えました。
おそらくどよめいていたと思います。
(ミュートだから聞こえないんですが・・・)
安心して下さい。自己紹介が苦手でも、話すことが苦手でもうまくコミュニケーションを取れる方法があるよと、次にお伝えして、
「偏愛マップ」を紹介しました。
「偏愛マップ」は
・自分の「大好き」を書き込んだマップ
・自己紹介で使えば会話が弾む!
と伝えて、書き方は
・紙とペンを用意する
・自分の名前を書く
・自分が大好きな(偏愛している)ものを書きまくる!
と伝えました。
ただ、これだけ伝えて書いてもらうのもいきなり大変かなと思ったので、僕が作った「偏愛マップ」を皆さんに見てもらって、参考にしてもらいました。
実際のコミュニケーションの練習も兼ねて、君羅の「偏愛マップ」で気になるところをチャットに書き込もう!と伝えたところ、皆さん、どしどしコメントをくれました。
これが君羅の偏愛マップです。
学生たちからは
・シチューにご飯わかります。
・1番に家族っていうのが素敵です!
・体操好きなのが気になりました!
・写真のために料理するの面白いです。
・サバ味噌私も好きです。
・絵がかわいいです
・ただ君を愛してる、私も好きです!
・写真私も好きです。
なんてコメントがあっという間に集まりました。
チャットが来るたびに、
・シチューにご飯美味しいよね〜
・体操は5歳から大学までやってたんだよ〜
・サバ味噌好きって多いよね〜
・この映画いつ見ても泣いちゃうんだ〜
などのリアクションをとってコメントしてくれた学生とコミュニケーションを取りました。
基本的に、チャットは全員宛で送ってもらっているので、チャットにコメントしなかった学生たちにも、偏愛マップを使ってどうやって会話するかの実際が伝わったと思います。
ここから学生に作ってもらうことにしました。
作ってもらうときに伝えた注意点は、
・具体的に書くこと
「音楽」だけでなく、どのアーティストのどんな曲が好きなのか?
「食べることが好き」だけでなく、どんな料理?どこのお店?どんなシチュエーション?など、具体的に書くことで、コミュニケーションがもっとうまくいくよと伝えて、10分くらい時間をとって書いてもらいました。
10分後、おそらく完璧なものは書けてないと思うし、書き足りない〜という人もいたと思うのですが、ここからオンラインコミュニケーションを実際にしてもらうことにしました。
Zoomのブレイクアウトルームを使った 「偏愛マップde自己紹介」
偏愛マップを使った学生同士の自己紹介は、Zoomのブレイクアウトルームの機能を使って実施しました。
ブレイクアウトルームの使い方はまりぺさんのnoteが詳しいかなと思います。
ここに書かれたこと以外で実施したのは、メインルームに学生が残ることないように
✔︎全参加者を自動的に分科会室に移動
にチェックを入れておきました。
これを押しておかないと、各自で移動を選択することになり、ルームへの移動にばらつきが出てしまいますので。
偏愛マップの本の中にもあるんですが、この偏愛マップを使った自己紹介は、1対1で行うのが最も効果的と書いてあります。
3人や4人でやることもできるのですが、どうしても話さない人が出てきてしまうとのことで、お互いの偏愛マップに注目できて、コミュニケーションを取れるのが1対1とのことでしたので、緊張するだろうなぁとは思いつつも、1対1でやることにしました。
ルーム内では、お互いの偏愛マップを見せ合いっこしてもらい、気になるところを相手に聞いてコミュニケーションする形です。
今回の方法の参考にさせていただいた、てっちゃんさんは「Slack」を有効活用されていましたね。
さて、ブレイクアウトルームを使うときには、移動したあとのルール設定がとても重要になります。
伝えたのは以下の点
・ルーム内では音声ON、偏愛マップを見せるときにビデオON
・1分で相手の偏愛マップを見て、2分間で気になったところを聞いてみる→交代
・学籍番号の小さい方から偏愛マップを見せる
・「あなたが大好きなこれ、私は大っ嫌い!」とははっきり言わない
・制限時間は7分
・時間が余れば、さらに相手の気になる点を聞いてみよう
・たまに君羅がお邪魔しまーす
・何か困ったことがあれば「ヘルプを求める」でお知らせを!
このようなことをスライドで示してから、ルームに移って自己紹介をしてもらいました。
伝えたルールで大事なのは、太字の部分かなと思います。
学籍番号の小さい方から偏愛マップを見せる
行動の順番を指定しておかないと、どっちからやるかを決めるので、時間が過ぎてしまいますし、そもそも喋ったことのない相手とルールを決めるというのは難しいので、順番を決めておくことは大事です。
「あなたが大好きなこれ、私は大っ嫌い!」とははっきり言わない
あと、相手を否定しないのも大事です。ポジティブに相手の好きなことを聞き出すよう心がけてくださいと伝えました。
何か困ったことがあれば「ヘルプを求める」でお知らせを!
何かあれば助けに行くからねと伝えておく。これも大事かと思います。
ブレイクアウトルームで起こったトラブル
なにかしらトラブルは起こるだろうと思っていたので、皆さんが移動してから待ち構えていると、すぐにヘルプが入ります。
行ってみると
知り合いなんですが、続けますか?
の質問。
「お互いに顔は知っていても、相手の偏愛しているものはまだまだ知らないだろうから続けてみてね」
と伝えて、ルームを後にしました。
その後、何件かヘルプ要請がきます。
どれも
相手がいなくなってしまった
と言うものでした。おそらく回線の問題だと思うのですが、コミュニケーションを取れないのはもったいないので、ルームに残った学生の偏愛マップを見せてもらって、君羅が質問をすると言うのをトラブルのあったいくつかのルームで行いました。
学生同士のコミュニケーションにはならなかったのですが、まずは体験してもらうことにしました。
回線が落ちちゃってメインルームに戻っていた学生たちには、メインルームで待機してもらっている先生にトラブルの解決方法も含めて対応してもらっていました。
いくつかのトラブルはあったのですが、多くの学生が初対面同士でコミュニケーションを取ることができました。
今回うまくできなかった学生も次回やれるようにアドバイスをして、初回は終わりとしました。
偏愛マップを使ったオンラインコミュニケーションを実施してみての学生たちの感想
学生たちには、偏愛マップを使ってのオンラインコミュニケーションについて、アンケートを実施しました。
偏愛マップを作ってみての感想
・自分を見つめ直せた気がする
・自分はこんなに好きなものがあったのだと改めて気づきました。
・自分で思っていた以上にたくさん書けたので驚きました。
・自分の好きなものを知る良いきっかけになりました。
・自分の好きなものが意外とあることに気が付きました
・自分が何を好きで、どうして好きなのかな書き出す機会はあまりなかったのでとても楽しかったです。
・自分の大好きなものを考えて書くのが楽しかったです。
・初めて作ったけど楽しかったです。時間があったらもっと色々書きたいと思いました。
・自分の好きな物をノートに書いて好きなようにまとめるのはとても楽しかった。
・好きなことについて詳しく書くことができて楽しかったです。
・意外に難しい
・あまり自分の好きなものなどが思いつかなかった
・思ったよりもなかなか思いつかなくて少し大変でした。 でも、作ってみると自分を振り返ることができるいい機会になり良かったです。
・全然かけなかった。
・意外と出てこなかった
こんな感想がありました。
偏愛マップを作ることで自分を知ることができた、と言う学生さんがほとんどだったなと言う印象です。
オンラインでのコミュニケーションを体験してみての感想
・初めは緊張していましたが、話していくうちに慣れてきて相手のことを知ることができました。今は直接会ってコミュニケーションを取ることができないので、いい機会だったと思います。楽しくできました。
・初めて学生と喋ってみて会話が弾んだので楽しかったです。知らないこともたくさんあって面白かったです。
・緊張したがちゃんと話せた
・お互いに好きなものが合って話が弾んで楽しめました
・初めはちゃんと話せるかすごく不安でしたが、少し話始めると慣れてきて、自然に話すことが出来ました。
・7分があっという間に過ぎてしまったように感じて、とても楽しかったです。
・2人1組だったので、大人数が苦手な私でも話せたので良かったです
・二人でコミュニケーションと言われたときはとても緊張しましたが、偏愛マップのおかげで仲良く話すことができたのでまたやりたいと思いました。
・顔も知らない同級生と個別で互いの大好きなもので話題が広がりあっという間でした。不思議なことに不安とか解消された気がします。
・初めての人とも楽しく会話ができて嬉しかったです。
・初めて同じ学科の子と話せて楽しかったです。
・オンラインでしたが実際に会ってるみたいに話せたので良かったです。
・顔を出すことにより相手の表情が見えて安心感がありました。また、相手の好きな物、共通してる事を話せて楽しかったです。またこのような機会があるとうれしいです。
・最初は緊張しましたが、少しずつ話していくうちに慣れてきて、ペアの人と一緒に笑い合えたり、同じ話題で共感できたりなど、実際に目の前にその人がいなくても、直接話しているような体験ができました。 とても楽しかったです。
・直接話すよりも緊張せずに話せました
・偏愛マップのおかげで初対面の人とも話しやすくなれるし、とてもいいと思いました。
・話すのが苦手だったけど、好きなものだからかなり話せた
・今までの初対面の人とのコミュニケーションの取り方より少ない時間で相手の事を知り、自分の事を伝えられたので楽しかったです。
などなど。
本当にたくさんの正直な感想を書いてくれていました。
1対1で緊張する!と思いながらも、偏愛マップがあるおかげでスムーズに話せたし、最後には盛り上がってお互いを知ることができた。不安も解消されたと言う意見が多くて、あ〜やってよかったなと思えました。
一方で、うまくコミュニケーションを取れなかった学生さんもいたので、そこのケアの必要性も考えて、次の週の授業でも偏愛マップを使ったコミュニケーションを実施しました。
音声入力、ビデオONの方法について、再度アナウンスして、ルールもしっかり確認して実施したところ、全員が1対1のコミュニケーションを取ることができました。
上級生の授業においても、初回にこの偏愛マップを使ったコミュニケーションを実施してみたところ、
友達と久しぶりに話せてよかった〜
のコメントをたくさんみることができました。
初対面ではなくても、お互いに長い間会うことができていないので、オンライン上でもお互いのことを感じることのできるコミュニケーションの機会は大切にしなきゃいけないなと思いました。
最後に
緊急事態宣言が解除されて、今後の通学などがどうなるかの議論もされていますが、当面続くであろうオンラインでの授業において、お互いを知る機会は限られると思います。
特に、一度も会ったことのない新入生同士においては、お互いを知る機会を意識して多めに作る必要があります。
今回学生の皆さんに作成してもらった「偏愛マップ」は、初対面同士でも会話が弾む素晴らしいコミュニケーションツールなので、オンラインでのコミュニケーションにおいてもその力を十分に発揮してくれました。
学生同士が知り合うことにも使えますし、長らく会っていなかった友達同士の中をさらに深めることにもなると思います。
ぜひ、オンラインでの学生同士のコミュニケーションの方法をお考えの先生方には使用を検討していただければと思います。
そのときにこの記事がお役に立てれば幸いです。