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陰キャ代表ユヴァル・ノア・ハラリとヨーダに最も近い人類ジョン・カバット・ジンがAIについて話してた

ユヴァル・ノア・ハラリ、言わずと知れた世界中でベストセラーとなった『サピエンス全史』を書いた歴史学者だ。
イスラエル人xゴエンカ式ヴィパッサナー瞑想実践者xゲイで同性婚をしていることも公表している。多分相当なマイノリティではないだろうか。
そんな彼が、世界的に有名なオピニオンリーダーとなり、日本でもNHKとかすっかりメジャーなメディアで取り上げられている。
毎日2時間も瞑想している。そうしないと、まともな仕事や生活ができない、と本人は語る。先日も水が出なくなって、水道屋さんに電話するのにめっちゃ緊張したのに、こういう場でたくさんの人の前で話す仕事は辛い、と話している。
大丈夫よ、と声をかけたくなってしまう。母性本能をくすぐられているのか、わたし。

こういう場、というのは今日(アメリカの2024年9月12日)ニューヨークで行われたWisdom2.0主催のカンファレンスだ。
主催のソレン・ゴードハマーがファシリをして、マインドフルネスのゴッド・ファーザー、ジョン・カバット・ジンとAIについて対談している。

ジョン・カバット・ジン(以下JKZ)は、「人生の時間全て瞑想みたいに生きようよ」というスタンスで、地に足のついたゆったりとした話し方。さすが、ヨーダに最も近い人類。
対して、ユヴァルは、自分の話している内容によっては、エキサイトしたり、話が止まらなくなったり、緊張してるのかな、と思わせるところがあったり、なんか人間っぽい。

そんな彼(どんな?)が、人間ならではの特徴やニーズについて次のように言った。

「今こそ沈黙と退屈が人間には必要。」

現在世界で最もはびこっているAIはつまりはSNSだ。SNS(=AI)の精緻なアルゴリズムは、私たちの沈黙と退屈をなくして、面白いエンゲージメント(注意を惹きつけること)をもたらしてくれる。
しかもAIは常にONのままトップスピンで働き続けられる。人間はそうはいかない。寝たり、食べたり、病気したり、ロスがいっぱい。AIには敵いそうもない。
だから、人の思索能力はどんどん退化して、簡単な意思決定も複雑な意思決定も自然にAIにおまかせになっちゃうよね、とユヴァルもJKZも懸念する。
つまりは、政府、医療、教育、国家間政策、結婚相手、どんな人になるべきか、今日のランチは何にするか、これからどんな記事やYoutubeを見るか、ぜんぶアルゴリズムにお任せになる、というか既にそうなっていると。
一人の人間の行き先も、人類全体の行き先も、人間が舵取をしなくなって、AIにお任せになりつつある、そして人々はそれに気づいていないしあんまり問題にも思ってない。
やばい。最近の「イケてる」という意味のやばいではなく、ガチでやばい。

そして、ユヴァルはこう続ける。

「人間の意識というのは、『苦しむ』能力がある。それが、倫理や価値観を教えてくれたり、苦しみを克服しようと意識を進歩させる。」
「でも、AIには苦しむ能力は、ない。」

苦しみやそれ以外でも、人間にモチベーションはあるが、AIにはモチベーションはない。アルゴリズムというルールがあるのみだ。苦しむこともないし、トップスピンで常に働き続けてる。
なので、ユヴァルはAIを「エイリアン・インテリジェンス」と呼んだ。なんか怖い。
しかも、モチベーションのないAIは人間にモチベーションを与える方法をものすごい速さで学習している。
典型的な例が「いいね!」の数競争だ。

「承認を求めるという人間の脳のバグにつけこんで、AIのこのシステムは、人間の批判や判断・好き嫌い・エゴを即座に強化する。」(抄訳)

人類は、AIに教育されてちっちゃなエゴを自分の全てだと思い込むファンタジーを強化していると。
JKZがさらに続ける。

「SNSのポスト=自分、となってスマホから目が離せない人間の姿は、
ギリシャ神話のナルキッソスが池の水面に映る自分の姿から目が離せなくなっているのと同じだ。」

うわ、自分自身ナルキッソス化、思い当たる。恥ずかしい。
そんな人類皆ナルキッソス現象もあるけど、同時に瞑想している人口も昨今間違いなく増えている。
私もそうだが、好き嫌いのオピニオンや批判や判断、エゴから少しでも解放されたくて、「沈黙と退屈」を自分に課している人たちだ。

アナログな本当の自分は、もっと大きな存在。スマホの小さな画面になんかには収まりきれない、そして世界や他者との境界もない存在なのに。
もう一方で、AIによってトレーニングされる私たちは、とても矮小化されている。難しいことはAIに任せればいいし、あとは自分の評判だけ気にしていればいい、みたいな。

この人間の可能性が極端に2分化している状況で、たぶんJKZとユヴァルという、人類でもトップクラスの頭脳を持ってしても、何が正解か、何がソリューションかを言うことはできないだろう。
ただ、二人が共通して言ったことがこんな感じ。

「AIと同じように、人間のマインドにももっともっとこれから開発できる余地がある。これからAIと同じだけ、人間のマインドにもお金と時間を投資すれば、希望があるんじゃね?」
「問題は、人間のマインドって『困難』『楽勝』の二択だと、必ず『楽勝』に流されるから、コントロールむずすぎるんだよね。」

やっぱだめか。
すると、ユヴァルがなんか楽しそうにこんなふうなことを言った。

「沈黙、退屈、アホな考えーーこれらのための時間を基本的人権にするといいんじゃない?」

沈黙、退屈、自分の心が編み出したアホな考え、こうゆうことに我慢できてその時マインドに何が起こっているか気づけるようになったら、AIに意思決定を依存する将来も変わるかも。
論理に飛躍があるって?そうだけど、ユヴァルとJKZという特上の脳内では飛躍してないらしい。

「自分の思考をそのまま認められるようになれば、ハート(コンパッション)の機能が湧き起こってくる。そして、生きとし生けるもののために、という視点とモチベーションによって、人間ならではの叡智も浮かぶ、と思う。」

これは、JKZが言ったこと。私もそう思う。でも皆がそう思うとは限らない。
そして、ユヴァルも瞑想が全ての人のマインドに役立つわけではないから、自分に合うマインドの育て方を見つけて、そこに投資してほしい、と。
自分の場合は毎日2時間の瞑想で、これはもうサバイバルのために必要なんだと。それは大変だ。自分でもめんどくさい人間である自覚があるようだ。

そして最後に、いきなり仏教っぽい話題になってしまう。これのどこがAIと関係するのかは、よくわからないけど、関係してそうだ。

「今呼吸を通して吸い込んでいる原子には、ブッダやヒットラーの残骸が含まれているかもしれない。そして、もちろん今この時代に生きている人たちは何らかの形で原子や何かを交換しあっている。人間の身体、なめたらいかん。時代も空間も膨大な範囲から集まって、ここにある。」

いや、やっぱりAIとは関係ないか。

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