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「『わかりやすい』は、全ビジネスパーソン必須のスキルである。

福岡で開催しているコルクラボギルド「編集の学校」で講師を担当することになり、あす21日に展開する資料が出来上がった。今回は講座資料を作ったときに、資料に入れなかったアウトプットをここに全部吐き出します。

講義のテーマは「『わかりやすい』は、全ビジネスパーソン必須のスキルである」。元テレビマン・放送作家だったときに、私をはじめとして番組作りに関わるスタッフがゴールとして最上位に設定している「視聴者にきちんと伝わっているか」

番組作りは、テレビの向こうにいる視聴者がターゲットだ。子どももいれば高齢の方もいて、主婦もいればビジネスマンもいる。

YouTubeが台頭してからはテレビ業界にも本格的にマーケティング手法が導入され、ビデオリサーチの視聴率も世帯視聴率から個人視聴率の指標が重視され、テレビ番組の作り方も、私が現役テレビマンだった頃と比べると、かなり変わっている印象だ。

そんな時代の変化を横目にしながらも、テレビ作りの根本的にあるのは「わかりやすいか」と「伝わっているか」である。その昔、最高視聴率50.5%を叩き出した国民的お笑い番組「8時だョ!全員集合」は「お茶の間」に家族団らんを囲んだちびっ子たちが、ドリフターズのコントやその他の催しに釘付けになった。

公開生放送のスタンスで1時間の生放送の中に会場にいる観客や、ブラウン管テレビの向こうにちびっ子たちに向けて毎週稽古を重ねていた。今の時代では考えられない「やり過ぎる」がそこにあった。

そんな「やり過ぎる」過去の番組がいまは多くの配信プラットフォームで視聴できるのだから、便利な時代になった。その分、今のテレビ番組を作っている人たちは自分たちの番組を見てもらうために「過去の人気テレビ番組」を戦わないといけないのだから、ちょっと可哀想な気もする。

最近私はHuluに加入した。Huluにしか配信されていないガキ使の笑ってはいけないシリーズを見返して見ようと思ったから。おかげでこれまでずっと視聴していたお気に入りのYouTubeチャンネルは未視聴の「・」マークがつきっぱなしである。当然、テレビのリアルタイム視聴もない。


「わかりやすい」の本質は変わらない

「やり過ぎる」は、テレビにとって演出の最大化を図るための武器だった。

『8時だョ!全員集合』『笑ってはいけない』には「よく、そんなこと思いつくよね」という斬新な企画や演出が至る所に散りばめられていた。それも全て、視聴者の心を一瞬でつかむための工夫だった。

しかし、だ。ただ「ド派手なことをすればいい」わけじゃない。重要なのは「誰が見てもわかる。伝わる」ことだった。

コントのオチは誰が見てもわかるように。
リアクションは言葉がなくても理解できるように。
ルールは、初見の人でもすぐのみ込めるように。

つまり、「やり過ぎること」と「わかりやすさ」は、テレビの世界ではセットだったのだ。

では、時代が変わった今はどうか?

スマホ、YouTube、TikTok。視聴者は「家族みんなで同じ番組を見る」時代から、「自分が好きなものを選んで見る」時代へとシフトした。情報は細分化され、発信者の数は爆発的に増えた。それなのに、目に留まるのはやっぱり「わかりやすいコンテンツ」だ。

YouTubeのサムネイルは、一瞬で内容を伝えないとスルーされる。
TikTokの動画は、0.5秒で興味を引けなければ見てもらえない。

ビジネスでも、「短く、シンプルに伝える」スキルが求められる。かつての「わかりやすさ」が「やり過ぎること」だったように、今の時代の「わかりやすさ」も新しい形に変化している。

それは「簡潔で、直感的であること」

結局のところ、どんな時代でも人を引きつけるものは変わらない。
「わかりやすいこと」は、いつの時代でも最強の武器なのだ。

今の時代の「わかりやすさ」とは?

かつて、テレビは「一家で楽しむもの」だった。番組はできるだけ多くの人に届くように作られ、視聴者は放送時間に合わせてテレビの前に座った。私もそうだった。巨人戦の見ようとする父親と、加トちゃんケンちゃんごきげんテレビが見たい私でのチャンネル争いは毎週土曜日のイベントだった。

でも、今は違う。人々は「自分が見たいもの」だけを選んで見る時代になった。NetflixやHulu、YouTubeのアルゴリズムは視聴者の好みに合わせて最適なコンテンツを届ける。

つまり、今の視聴者は「編集された情報」しか目にしない。「おすすめ」に出なければ、気づいてすらもらない。タイトルやサムネイルが「おっ」と目にとまらなければ「トン」とスマホをタップすらしてもらえない。

情報が溢れすぎた今、ただ発信するだけでは届かない時代になったのだ。

では、今求められる「わかりやすさ」とは何か?

それは「情報を整理し、受け手に最適な形で届けること」

テレビの時代は「万人向け」に作るのが基本だった。でも今は、「この人に刺さるか?」が問われる。ターゲットを明確にし、「その人が欲しい情報を、最適な形で届けること」。これが、今の「わかりやすさ」だ。

これはビジネスでも同じだ。

プレゼン資料は、「全員に伝わる」ではなく、「会議の決裁者に刺さる」ように作る。SNSの投稿は、「みんなに届く」ではなく、「フォロワーが思わずシェアしたくなる」ように編集する。マーケティングも、「自社の強みを全部伝える」ではなく、「相手にとっての価値が一瞬で伝わるようにする」のが重要だ。

つまり、「編集」が「わかりやすさ」を作る時代になった。

「何を伝えるか」ではなく、「どう伝えるか」で、すべてが決まる。「届く言葉」と「スルーされる言葉」の違いは、編集力にある。だからこそ、ビジネスの世界でも「わかりやすく伝える技術」が求められているのだ。

だから、ビジネスパーソンも「編集力」を鍛えるべきだ

かつて、テレビは「みんなに向けて」作られていた。
視聴者は番組を選ぶのではなく、番組のほうが視聴者に届けられた。
だから、伝え方の基本は「できるだけ多くの人に伝わること」だった。

でも、今は違う。情報が溢れ、誰もが「自分が興味のあるもの」しか見なくなった。テレビは選択肢のひとつに過ぎず、YouTube、Netflix、TikTok、X(旧Twitter)、Instagram…人々は、自分にとって「わかりやすい情報」だけを受け取る時代になった。

これが、今の情報発信のルールなのだ。万人が見て盛り上がるのは日本代表が活躍するメジャースポーツくらいしかないのではないだろうか。

ただ伝えるだけでは届かない。相手に「見てもらうための工夫」が必要になった。

ビジネスパーソンも「編集力」を鍛えろ!

これはテレビやSNSの話だけじゃない。ビジネスの世界でも、「情報の編集」ができる人だけが生き残る。

例えばプレゼン。「このプロジェクトは重要です!」と10枚のスライドで説明しても、「で、結局何が言いたいの?」と流されることがほとんどだ。

例えば営業。自社商品のメリットを全部並べて説明したところで、相手の「今、必要なこと」に響いていなければ、契約にはつながらない。

例えば社内のコミュニケーション。「詳細を共有します」と長いメールを送っても、大事なことが埋もれてしまい、誰も読まない。

情報が多すぎる時代、ビジネスパーソンに求められるのは「情報の交通整理」だ。何を伝えるかよりも、「何を削るか」「どの順番で見せるか」「どう言い換えるか」。この3つのほうが、よほど重要になっているのが今の時代だ。

「わかりやすくする技術」は、すべてのビジネスパーソンの必須スキルだ

これまでの時代は、「みんなに向けて話す」だった。でも、これからの時代は、「相手に合わせて、伝わりやすくする」ことが重要だ。

資料は、読み手が一瞬でポイントを理解できるように編集する。
プレゼンは、最初の1分で「この話は聞く価値がある」と思わせる。
SNSや広報は、「何を伝えたいか」より、「相手がどう受け取るか」を考えて作る。

ビジネスで成功する人は、「わかりやすさ」を設計できる人だ。わかりやすく伝えられる人だけが、選ばれ、影響力を持つ。だからこそ、すべてのビジネスパーソンが 「編集力」 を鍛えなければならない。

情報は、ただ発信するだけでは届かない。「伝える」のではなく、「伝わるように編集する」こと。それが、これからの時代を生き抜くための武器になる。

「伝える」から「伝わる」に進化せよ。

情報が溢れるこの時代、編集力を持つ者だけが生き残るのだ。






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