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パニック障害と生きるということ。

 私はある障害を抱えています。
 タイトルにあるようにパニック障害というもの。

 自覚のあるなしにかかわらず、この障害を抱えている人は少なくないでしょう。実際、私の周囲には同じ症状に苦しんでいる友人、知人が何人かいるのでこの記事を読んでくださっている方の中にも断続的、慢性的に発作やその不安に悩まされている方がいらっしゃるかもしれません。持病などがある方の参考となれば、持病のない方にもご理解をいただければと、この記事を公開いたします。

パニック障害とは

 結論から申し上げれば、脳機能障害です。医学的なメカニズムはわかりませんし、ネットで検索して出てくる情報が正しいかも判断できませんので、私や友人の実体験からその症状を説明させていただきます。

 症状は人によって異なるようで、吐き気、過呼吸、めまい、動悸、腹痛など様々です。そういった発作が起こる場所や場面はさほどバラつきがない印象です。ほとんどの場合は電車内や映画館などの長時間とどまる必要がある閉所。旅行などで自宅以外の場所で過ごす際に起こることもあります。ひどいときは自宅でも。

 私の場合は電車移動の際に発作が起きる可能性が高いです。その症状は吐き気と過呼吸。全盛期(?)には電車に乗る前どころか出かける前に自宅で吐き気を感じるほどでした。柄にもなくスーツを着て会社員をしていたころはその苦痛に怯え、片道1時間半かけて徒歩で出勤しており、結果的に辞職することを選ぶ要因となります。

 苦手なところへ向かう前から発作の前兆があるのは予期不安と呼ばれるもので「前も発作が起きたし、今日も起こったらどうしよう……」というところから始まります。

 そこから自宅を出ると吐き気と過呼吸はさらに激しくなり、駅について電車がホームに滑り込んできても不安で乗車することができませんでした。意を決して乗車した場合には案の定、発作によって座っていることもキツい状態となります。そして次の駅に到着するまでの数分間が体感として30分ほどに感じるほど長く、到着したら電車を降りてホームにしゃがみ込んでしまうこともありました。

 過呼吸によって身体は痺れはじめ、それに伴うめまいで視界は極端に狭くなります。そして吐き気によって溢れ出る唾液を吐き出すこともできずヤニ臭いよだれを垂れ流しておりました。

 他人の目など気にしている余裕もなければ、駅のトイレに向かう気力もありません。ただ症状がマシになるのを待つのみ。しかし自律神経によって無意識にコントロールされているはずの呼吸の仕方がわからない状態です。

 その苦痛はわかる人にはわかるでしょうし、わからない人にはわからないでしょう。私は会社員時代や脚本家として企業のオフィスに常駐していたころ毎日、このようにボロボロになりながら通勤しておりました。

医師が必ず言うこと

「パニック障害の発作が原因で死亡する心配はありません」

 この症状について、決まって言われることです。
「ああ、それなら大丈夫だ」となるわけがありません。そういう問題ではないんです。

 この障害は内臓気管に問題があるわけではなく、脳機能障害であり、要するに精神的なものであるということを患者に伝える義務が医師にあることは十分、承知しております。

 しかし、この症状が直接的な原因で命を落とすことがなかったとしても、この症状を苦にして自ら命を絶つ人は確実にいると思われます。本当にそれくらいの苦痛なのです。

楽しさに勝る苦しみ

 前述の予期不安というものはクセになってしまいます。通勤ではなく自分が楽しむために外出する場合に電車移動の必要があれば、その目的に関係なく不安に襲われます。そして実際に移動中に発作が起こります。その症状は通常30分ほどで収まるというのが定説のようですが、私の場合は2時間ほど余裕で継続する傾向にあります。外出の理由が楽しみにしていた好きなアーティストのライブであれ、気の合う仲間との会合であれ、恋人とのデートであれ、目的は関係ありません。

 すると、どういう心理になるかと申しますと「外出をしたくない」となります。そうなるのは必然です。発作の苦しみが外出先での楽しみを余裕で上回るのですから。生きている理由は人それぞれですが、私が生きている理由は「楽しいことがあるから」です。その楽しみが苦痛に阻まれるならば、いっそ死んでしまいたいと思ったものです。

それでもこの障害とともに生きる

 私は10年ほどフリーランスとして自宅で仕事をしているため毎日、発作に苦しむという状況にはありません。外出する際に予期不安を感じることも少なくなりました。

 しかし、それでも1年に10回は症状が出ます。自分なりに発作が起こるときのパターンを考えると原因として睡眠不足、空腹時の過度な喫煙、前夜に食べたジャンクフードなどにあることに気がつきました。外出の際はそれらは絶対にしないようにしております。

 それでも発作が起きるときはあります。最近も飲食店で注文した料理のあまりの油っこさに吐き気をもよおし、それが過呼吸に繋がるということが二度ほどありました。NG行動をまたひとつ気づいてしまったのは血涙を流すほど、やり場のない怒りと悲しみを感じます。

 私はこの障害と20年弱、ともに生きています。

 10年ほど治療のため心療内科で処方された薬を何種類も飲んでいますが、快方とはいきません。毎日決まった時間に決まった場所に行くということがなくなって多少、生きやすくなりましたがフリーランスになっていなければ自ら死を選んでいた可能性もゼロではなかったでしょう。

 学校ならばともかく生活のために仕事はせねばなりません。その生活自体がパニック障害によってメチャクチャになってしまい、楽しめるはずのものが楽しめず、愛する人に会うこともままならない。それならば生活を支える仕事をする意味もない。こんな思考から抑うつ状態へ堕ちていくのは想像に難くないと思います。

 それでも生きてきました。
 何のために?と問われれば答えに窮してしまいますが、理由のひとつとしては家族や友人の存在です。

 私は自分の人生の最重要人物であった親友を若くして亡くています。半年ほど前には最愛の父も旅立っていきました。

 その時、感じたのは「自分の命は家族や友人のものでもある」ということです。人間が自分の意志で自身の生死をどうこうするなんておこがましいことなのではないでしょうか。生まれたからには自然に死ぬまでは生きる義務があるのだと今は心底、思っています。

 もし、この記事を読んでくださった方が同じ障害に悩まされているならば、私が発作に襲われたときに意識している具体的な対処策をお知らせしておきたく存じます。

 それは「息を吐くことを意識する」ということです。気分や体調が悪い際に深呼吸をすることがあると思います。

 そのとき「息を大きく吸う」ことを意識されている方が多いでしょう。しかし思考や体調の不調を改善するためには、新鮮な空気を吸うよりも身体の中にある悪い空気を吐き出すことのほうが重要だと私は感じております。ぜひ、これを意識していただきたく存じます。

 では、最後に偉大なアスリートの言葉を紹介し、この長文を締めようと思います。

「不調が続いたら最初にすべきは食事と睡眠を見直すことだ」  王貞治

ばーい、せんきゅ。


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