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共に育つ手帳-フラクト礼賛

さて、先日購入した手帳を讃えていきたい。この手帳で私の人生が変わるかも、という期待感をもって迎えたのは、KNOX社のFLUCT(フラクト)というシステム手帳だ。バイブルサイズの ベルト付き。色は革そのままの色を活かしたナチュラルである。

オフィシャルサイトには、「クラフトマンシップを極めたKNOXのオールハンドメイド」と銘打たれている。日本を代表する手帳企業の商品で、全国に流通していながら(抽選販売していることもあるが受注生産ではない)、オールハンドメイドだなんて。その素晴らしさを順を追ってお伝えしていきたい。

ハンドメイドゆえの「ゆらぎ」

フラクト、という名前は英語のFluctuationからきているそうだ。人の脈拍、ろうそくの炎の揺らめき、小川のせせらぎなど、自然界に存在する波長にみられる「1/fゆらぎ」をテーマにしたデザインだという。言われてみれば、内ポケットの曲線や上下非対称なペンホルダーなどに、直線で構築された通常の手帳にはない「ゆらぎ」を感じる。とはいえ歪んだり曲がったりしているわけではない。まっすぐあってほしいところはピシっとまっすぐに、粒ぞろいのステッチが並んでいる。レザーブランド「m.ripple(エムリップル)」を展開する村上裕宣さんが足踏みミシンで一針ずつ仕上げておられるのだそうだ。オフィスにも似合う端正なつくりだが、大自然の中に連れ出したいような野性味も感じるのは、この「ゆらぎ」ゆえかもしれない。

ゆらぎを感じる、ペン全体を覆うペンホルダーは安心感がある。

アラスカレザーとブッテーロ革のコントラスト

手帳の表面はアラスカレザー、中面とベルトはブッテーロ革という二種類の革が使われている。アラスカレザーは、染料で染めたダブルショルダーを軽くバフがけし、ロウ吹き後に専用ドラムでロウを浸透させながらシュリンク加工を施した革だそうだ。タンナーはイタリアのラ・ぺルラ・アッズーラ社。きれいなシボの上に、白い蝋がうっすらと浮かぶさらりとした外観は、さながら子豚のおなかのよう(産毛は映えてないけれど)。「使えば使うほど上質な艶を帯びていく(『システム手帳STYLE Vol.7』 p27)」のだそうで、経年変化が楽しみすぎる。

ブッテーロはイタリアを代表する上質スムース革。成牛(ステア)のショルダー部の硬い部分のみを使用したもので、ハリとコシがあり、端正な表情に仕上がっている。タンナーはトスカーナのコンツェリア・ワルピエ社。この革の名前を冠した「イル・ブッテーロ」というブッテーロの一枚革を使った手帳を仕事用にしているので、しなやかな使い勝手の良さは太鼓判だ。発色が美しいことで有名なレザーでもあるが、ナチュラルがどのように化けるのか大いに期待している。

いずれの革も、クロム鞣しより経年変化が出やすいと言われる植物タンニン鞣しで、その分お手入れも必要にはなるが、環境にもやさしそうだ(植物由来ならなんでもエコなかんじになっている昨今の潮流には懐疑的なのだが、昔ながらの伝統の製法で、といわれると俄然お財布のひもが緩む)

内ポケットのわずかな曲線とゴールドリング

クラウゼ社製16㎜リング

リングは、ドイツの金具メーカー、クラウゼ社製の16㎜径、ゴールドメッキだ。16㎜径は大きすぎず小さすぎず、アシュフォードのメモリーフを2冊分(100枚)入れても余裕がある。リングの真ん中にはKRAUSEの刻印が光る。クラウゼ社製でないリングのシステム手帳も持っており、それらにも不満はないので、クラウゼ社でなければ、などとと言うつもりはない。しいて言うなら、国産車と外車のドアの違いに似ているか。バン、じゃなくヴン、と重く閉まる外車のドアよろしく、カチャ、ではなくヂャッ、と重く開き固く閉まる。20年以上使っているものも複数あるが、いずれも不具合はないので、耐久性はお墨付きだ。リングのブランドで手帳を選んだりはしないが、クラウゼ社製なら信頼感はある。ちなみに今回私が気に入ったのはリングのブランドより色である。ナチュラルに映える柔らかなゴールドの色味がお気に入りだ。

ファスナーポケットの中にこんなに入る!

収納力抜群のポケット

他の手帳にはない魅力の一つが、大きなファスナーポケットだ。シャーペン、消しゴム、水筆、ペン型のり、ミニはさみ全部入れてもまだゆとりがある。ポケット側を下にして筆記も可能だ。必要なものが、全部ひとところにまとまっている便利さよ。これで探し物ともおさらばである。たくさん入れてもすっきり見えるササマチのため、手帳自体は膨らみすぎずスマートな見た目を保っている。

フラクトン

ああ、商品サイトに載っている性能について語るだけで1900文字も費やしてしまった。ロウの白みを帯びたアラスカレザーがこれからどんな風に変化していくのか。毎日撫でさすっている。わが家にやってきた日、子豚のような風情から、心の中でフラクトン、と呼ぶことにした。1か月たって、すでに印刷物の黒ずみがついたり、子どもに絵の具を飛ばされたりと、白く無垢な雰囲気は失われつつある。がしかし、子豚は泥浴びが大好きな生き物だ。いっぱい遊んで、いろんな所へ行って、ともに育とうフラクトン。


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