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ホロライブ新人「ゲーム飽きた」的な炎上を防ぐとっておきの方法

 秋も深くなり、すっかり肌寒くなりましたね……と言いたいところですが、ここ最近は11月にしては温暖な日があったりして時候の挨拶がやりにくくて仕方がない。
 というわけでどうもこんにちは、木屑でございます。
 久々のVTuberの記事です。
 当初は「さくらみことインド哲学の親和性」について書くつもりだったのですが、最近目に飛び込んできたとあるニュースが気になったので、予定を変更しまして本日はそれについて書こうと思います。


■ ホロライブ新人の炎上

 今月、ホロライブ傘下のhololive DEV_IS(デバイス)から新人5人がデビューしましたが、その内の1人(仮にQさんとします)が少々やらかしてしまったようです。
 どんなことがあったかをざっくり申し上げますと、今月12日(火)のQさんの配信において

● 視聴者参加型ゲームのプレイ中に「(このゲーム)飽きた」と発言。
● ゲームを途中で打ち切り、雑談ののち、歌枠に移行。

 ということがあり、それに対して視聴者から

●「ゲーム配信というのは開発側から許可をもらって『やらせてもらっている』立場なのに、『飽きた』は失礼な発言である」
●「視聴者参加型ゲームであるにもかかわらず、しかもプレイの途中で参加リスナーを置いてきぼりにしてゲームを中断するなんてのは言語道断」
●「ゲームしてると思って見に行ったら歌枠をやっていてビックリした」

 などの批判が押し寄せ、コメント欄が大荒れに。
 翌日の配信の冒頭でQさんはこの件について謝罪し、くだんの配信は現在アーカイブ非公開となっております。
(詳しく知りたければ『ホロライブ ゲーム飽きた 炎上』で検索すると、情報がわんさか出てきます)

 この件について私がどう思ったかをまず述べます。
 最近はとんとご無沙汰ですが、私もゲームに親しんだ時期がありました。
 好きでやっているゲームの筈なのに、「なんか飽きたな……」と思うことはしょっちゅうあり、「ゲームに飽きる」というのは人として自然なことだと思います。
 しかしそれをいざ「配信者」が口に出してしまうのは、ただただ視聴者を萎えさせる・冷めさせる悪手でしかないので、配信をこれからの生業なりわいにしようという人が最も言ってはいけない「それを言っちゃあ、おしめえよ」的な発言だったと思います。

 ただ、人間というのはミスをする生き物です。
 私も今まで数々の間違いを犯してきました。ミスをしない人間なんていないのです。
 本人も反省して心機一転することでしょうし、これからも暖かく見守っていきましょうや、ガッハッハ!
 と、私の中のハートウォーミングな山男やまおとこ的な部分がそのように擁護するのですが(ちなみに私に登山経験は無い)、一方私の中の爬虫類のような目をした冷血野郎な部分が「もうちょっとこの件について検証してみましょう(メガネクイッ)」と冷ややかに告げるので、もう少し問題点を掘り下げます。

■ 配信業とのミスマッチを疑うレベル

 「飽きた」という発言は本当に何気なくポロッと言ってしまったのだと思いますが、パンチとしてはなかなかヘビーな一発で、しばらく尾を引くような気がします。
 何故ならば、視聴者のあいだで「この配信者はゲームに飽きやすい」という印象が一度付いてしまうと、今後ゲーム配信でQさんが本当に心の底から「楽しい!」と思ってゲームをプレイしていたとしても、一部の視聴者は「でもこの人、前に自分のこと『飽き性』って言ってたよな…」ということが頭をよぎり、最悪「このリアクションはフェイクじゃね?」と疑ってQさんの配信に入り込めなくなるからです。

 また、視聴者参加型ゲームを途中で「飽きた」で終わらせてしまうのは「視聴者を軽視している」と思われても仕方ありません。
 そしてQさんがデビューしたのは今月の9日(日)。
 くだんの配信があったのは12日(火)なので、デビュー4日目にして早くも炎上したことになります。
 人間、初めてのことをやるときには何事もミスが付きものであり、そのあたりは大目に見る必要がありますが、一週間足らずで無意識にゲーム配信の根幹を揺るがす発言をしてしまうのは、本人と「配信業」の間に何らかのミスマッチが起きているのではないかとも思ってしまうのです。

■ ゲーム配信からは逃れられない

 今回直近でデビューした5人のグループはhololive DEV_ISに所属しているわけですが、最初から「音楽アーティスト」を志向しているという点で従来のホロライブとは路線が異なります。
 ただ、音楽アーティストを謳っているからといって音楽のみに専念できるかというと、そうは問屋が卸さないようです。

 DEV_ISにおいて、直近デビュー5人の先輩には同じく5人組のReGLOSS(リグロス)がいます。
 彼女たちがデビューしたときは「歌とダンスを中心に据えた活動をするグループ」という前触れだったので、イチ視聴者としては「ということはそのジャンルの配信しかやらないのか、これはすごく革新的だなぁ!」と勝手に思っていたのですが、フタを開けてみれば5人ともゲーム配信をドカスカやってるので「従来のホロライブとそんなに変わんねーじゃねーか!」と虚空に向かって叫んだ覚えがあります(ゲーム配信は好きなのでそれ自体は全然OKですけども!)。
 配信内容においては「ゲーム配信を中心としつつ、歌とダンスがきもち比重高め」というのが実際のところのようです。
 直属の先輩たちがそんな感じなので、直近デビュー5人組も「ゲーム配信」からは逃れられないのです。

 とは言え、現在ReGLOSSにおいて頭一つ抜けた登録者数を誇る儒烏風亭らでんはその従来の「慣習」から抜け出した配信で人気を博しており、そのあたりの凄味についてはまたどこかの機会で……

■ 配信活動における挫折

 さて、「配信活動における挫折」ということなんですけども。
 話は変わりますが、昨年私は(今とは別の名前で)とある「ラジオ配信アプリ」で配信に挑戦していた時期がありました。
 3ヶ月くらいやったのですが、それはもう見事なまでにボロボロな負けっぷりでした。
 前もってトークの内容を練っても、サムネを多少凝ってみても、それらの処置はすべて焼け石に水でしかなく、そもそも基本的にリスナーが自枠に来てくれない。
 たまたま偶然枠に入ってくれたとしても、彼らは「あ、すみません、何かの間違いでした」みたいな感じですぐにいなくなります。

 視聴人数はいつまでも「0」→「1」→「0」→「1」→「0」→「1」→「0」の永久ループ、果てしなく続く非情なゼロイチ進行に「俺は二進法の世界に迷い込んでしまったのか!?」と頭がおかしくなりかけました。
 始めた当初は「おどれの声のみで投げ銭ガッポガッポ稼いだるでぇ、フハハハハ!」なんて鼻息荒く息巻いていたのですが、あまりにも厳しい現実を前に早々と自信と自尊心は破壊され、そのアプリにはログインすらしなくなりました

 そのような挫折を経てから、規模の大小など関係なく私は全ての「配信者」を尊敬するようになりました。
 大手の箱でも特に初期からVTuberをやっている人たちなんかは、最初は絶対にこの地獄のようなイバラの道を通ってきている筈です。
 YouTubeを見ていると「いかに初期のさくらみこが苦労したか」についての切り抜き動画がレコメンドで上がってきたりしますが、絶大的な人気を誇るみこちを現在我々が享受できるのは、彼女が「配信における二進法」の虚無の世界に負けず、「なにくそ」と歯を食いしばって今まで折れずにやってきたからです。

 逆に言えば、このように「配信における」挫折経験の欠如が「飽きたwww」などの不用意な発言を引き寄せてしまうのではないでしょうか。
 今回のQさんに限らず、大手の箱からデビューする場合のいきなり「強くてニューゲーム」という状況は、配信新人組にとって実は不幸なことなのかもしれません。

■ ラーメン店の「のれん分け」の話

 そこで、思い出した話が一つありました。
 ちょっとうろ覚えなのですが、それは「とあるラーメン店の『のれん分け』」の話です。
 ラーメン店におけるのれん分けは、その店で働く従業員が店主から「一人前」と見なされたときに「お前、この店の味とのれん(ブランド)を引き継いで営業してもいいよ」と従業員の独立をサポートするシステムです。

 そこの店ののれん分けが独特だったのは、確か最初の一ヶ月くらいは「元で働いていた店の名前を出してはいけない」というルールがあったのです。
 ある意味仮のオープンなので、大々的に広告を打つこともできません。周囲から見れば、ある日急に新しいラーメン店がポツンと出来たというだけの認識です。
 弟子は、強制的に「味だけで勝負する」状況に放り込まれるのです。

 元の店からのれん分けできるくらいの実力があるので、ラーメンの味はきっと保証済みでしょう。しかし無名のラーメン屋ですので、何事もゼロからの出発です。
 すると、自ずと「もっと店を盛り上げるために出来ることは他にないか?」とグルグル考えるようになります。この期間の試行錯誤が、弟子を飛躍的に成長させるようです。
 そしてようやく苦難の1ヶ月を乗り切ったタイミングで、元の店のブランドを公表して再オープン。
 「あの名店ののれん分けならうまいラーメンが食えるぞ!」とお客さんが店に押し寄せます。
 その瞬間、弟子はのれん(ブランド)の価値を噛みしめるのです。

■「実地研修」のススメ

 というわけでのれん分けの話をしてきました。
 ここからは私の提案ですが、ホロライブに限らず大手の箱は新人がデビューする際、今までその人がVTuberとしての配信経験がなかった場合、事前にそんな感じの「実地研修」をさせればよいのではないでしょうか。
 そう、所属するブランド名を使わせずに野ヅラの状態でYouTubeの荒野に放り込むのです。

 アバターも企業特有の美麗なモデルではなく、「無課金仕様の初期アバター」みたいな非常に簡素なものを使用させる。
 ガワの良さで客を引き込めないので、まさに己の腕だけでの勝負となります。
 そして個人の仮アカウントを用意させ、配信に関するあらゆることはいったん全部新人ひとりに準備させる。己のリソースを最大限に生かすべく、きっといろいろ試行錯誤することでしょう。

 大手の箱からデビューする新人さんは超高倍率の熾烈なオーディション(もしくは一本釣りのスカウト)で勝ち上がってきた優秀な人材なので、私のようなブザマな「二進法」にはならないと思います。
 しかし今やVTuber業界は完全なレッドオーシャン。
 「名も無き個人勢」がデビューしたところで誰も見向きもしません。
 初日の同接数はせいぜい一ケタ、いって十数、下手すればゼロでしょう。
 そのとき新人は思い知ります。

でも、初期は先輩も同じ道を通ってきたんだ……

 配信業が決して甘くない世界ということを身を以て痛感し、それと同時に先輩へのリスペクトも自ずと芽生える筈です。

 例に出した、のれん分けの大元となった店も、最初から人気店だったというわけではなく、きっと閑古鳥が鳴いていた時期もあったことでしょう。
 しかし、自分の店の味に自信を持ち、「いつか絶対に客はやってくる」と歯を食いしばって耐えてきたからこそ、今の大成した店が存在するのです。

 VTuberの新人が苦難の一ヶ月を乗り切ったとき、「ブランド」の名前を使って再デビューすればとんでもない数のお客さんが押し寄せます。
 「二進法」スレスレの低空飛行の日々を経験しておけば、そこで感じるありがたみも当然違ってくる筈です。
 極楽とんぼ・加藤浩次いわく「当たり前じゃねえからな! この状況!!」なのです。
 目の前に広がる賑やかな世界にちゃんと向き合えば、「飽きた」なんて言ってられないのではないでしょうか。



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