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霜降り明星はこのまま「爆笑問題ルート」を辿ってしまうのか?②
前回 ↓
霜降り明星と爆笑問題の共通点
そもそもなぜ私が「霜降り明星はこのまま『爆笑問題ルート』を辿ってしまうのか?」と杞憂しているのかというと、2組にいくつかの共通点を見出しているからである。
以下、ガバガバなものからそこそこ芯を食っていると思われるものまで各種挙げてみる。
■身長差が似ている
ガリガリのノッポとふくよかな小男。たたずまいのフォルムが似ている。
右がノッポ、左が小男の立ち位置も同じである(ボケ・ツッコミの役割は反対であるが)。
■MCを務めた番組がそこそこの数終わっている
2組の芸歴は25年もの差があるため、霜降り明星MCの終了番組のサンプル数は爆笑問題と比べるとまだまだ少ない。
ウィキペディアの「過去のレギュラー番組」の項目で見る限り、霜降り明星は現在9番組が終了。ただ、いま活躍しているコンビ歴12年目の芸人の中ではブッチギリの数であろう。
爆笑問題は「過去・テレビ」欄だけで堂々の「53」。
「僕らはことごとく冠番組を潰してきた」という彼らの述懐はダテではない。お手すきのときにはぜひウィキペディアにずらっと並ぶ“墓標”を見てきてほしい。
番組を終わらせる天才・爆笑問題と霜降り明星がタッグを組んだ「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」(テレビ朝日)はちゃんと面白い番組だったが、案の定2年で終わった(ただ、番組終了後も特番「芸人シンパイニュース」「勝手にシンパイショー」として不定期で復活しているのが救いだ)。
■小男が異様に歌謡曲に詳しい
爆笑問題・田中さんは伝説の歌番組「ザ・ベストテン」の直撃世代(ただ、それは太田さんも同様なのでこの時点でガバガバである、すみません)。番組企画でたまにある「ザ・ベストテン」関連の歌クイズに対して「何でそんなに真剣なの……?」と思えるくらいに命がけで挑む姿がしばしばよく見られる。
霜降り明星・せいやは年の割には昭和の歌謡曲に関する造詣が深い(時おり知識違いが見受けられるがご愛敬)。学生時代にアグネス・チャンを毎日聞きすぎて母親から「何であんたこんなに昔の人が好きなの!?」と心配されたというエピソードの持ち主である。
■ノッポがとにかく炎上する
粗品はM-1優勝時には「正統派」の印象が強かったが、どこかのタイミングでシフトチェンジしたようで今ではすっかり炎上キャラが定着してしまっている。
時事ネタを扱うときに逆張り寸前のきわどい所で強めの毒を大量に放出するのでファンとしては見ていてヒヤヒヤするが、そこには当然彼独自の笑いが一枚のっかっているのでギリギリエンターテインメントとして成立している。崩れそうでなかなか崩れないバランスは立派な芸だ。
太田さんの方は言わずもがな。
■漫才の上手さに定評がある
■ラジオ番組が超面白い
他にも「コンビの片方が離婚している」「片方が大の麻雀好き」「小男の下半身事情がニュースになった」など細かい点を挙げればキリが無いが、主要なところとしてはざっとこんなもんだろうか。
もうすでに霜降り明星の「爆笑問題」化は着実に進行していると言えよう。
霜降り明星の冠番組を検証する
霜降り明星のホームグラウンドと呼べる番組は今のところ二つある。
その二つについて検証してみよう。
1.「霜降りバラエティX」(テレビ朝日)
2019年4月開始時のタイトルは「霜降りバラエティ」。
3度の枠移動があり、現在は土曜深夜3時とかなり深い時間に放送されている。
TVerの番組説明欄には「霜降り明星のせいやと粗品が、様々な企画に体当たりでチャレンジ!!」とある。やや薄っぺらい説明とは言え、実際番組を見たところの感触としては、まさしくその通りといった内容でそれ以上でもそれ以下でもない感じだ。
トーク・ロケ・大喜利・グルメ・ゲーム・芸歴が近い芸人との対決……などなど様々な企画が繰り広げられおり、一応楽しく見れることは見れる。
ただ、何かがもの足りない。
私が思うに、その不足感は「構成作家が考えたお仕着せの企画にただ乗っかっているだけ」という印象から来ているように思う。
もちろん企画をこなすプレイヤーとしての霜降り明星は十分に魅力的である。
二人とも平場が強いので、当意即妙の返しの数々にはほれぼれする。
しかし、霜降り明星の二人が打ち出したい笑いのカラーが全く見えてこない。
肉体(プレイヤー)の実技はさんざん見せられてきたのでそちらの実力の方はすでに証明済みだ。私としてはそろそろ笑いを生み出す源泉の「頭脳」の方をもっと見たい。
たとえば「ガキ使」の企画構成を松本人志が務めているように。
かつての「神さまぁ〜ず」が大竹一樹の色で染め上げられていたように。
乗りに乗る「テレビ千鳥」の企画の殆どを大悟が発案しているように。
せいやは本番組の1時間スペシャルで行われた「家を買う」的な企画で本当に一軒家を購入している(4LDK・約30坪・4,000万円・35年ローン)。
一世一代のデカい買い物をしたにもかかわらず、そのオンエア回の1年後に番組は深夜3時スタートに降格。
冠番組を盛り立てようとメインがここまで身を切ったのにド深夜に都落ちした番組を、私は他に知らない。
2.YouTubeチャンネル「しもふりチューブ」
厳密には「番組」という枠組みではないのかもしれないが、これを取り上げる。
2019年7月10日の動画「霜降り明星YouTube毎日投稿始めます!」が初回。
5月19日時点でチャンネル登録者数211万人の大人気チャンネルである。しかも驚異の毎日更新だ。
概要欄には「霜降り明星の2人がYouTubeで様々な企画に挑戦します!」とあり、「霜降りバラエティX」の説明を更に薄くした内容になっている。それにしても霜降り明星の二人は「様々な企画」に挑戦してばっかりだな……。
「最近流行っている〇〇をやってみる」などのすでに誰かがやっているチャレンジ企画やゲーム・クイズ企画をやることが多く、彼らの自前の予算でやっているため「霜バラX」よりも低予算でできる企画が多い。
投稿される動画の時間は大体10分前後とオーソドックスである。
ただ、時たま「醤油なし」という過酷な条件で二人で寿司200貫を食べ尽くすという、地上波よりも気合いの入った6時間超えの生配信を敢行することがあるので目が離せない。
日々の過密スケジュールの合間に撮影されていることもあり、多少くたびれた二人が楽しさ優先の企画にキャッキャと挑戦する「オフ感」を楽しむチャンネルであると思われる。
テレビもよりももっとラフな手触りのある雰囲気の分、親近感が増す。そしてこのチャンネルでも彼らのプレイヤーとしての地肩の強さを堪能することができる。
しかし、裏を返せばただそれだけの内容とも言える。やはり彼らの笑いの独自色はどうしても見えてこない。そこかしこに笑いはちりばめられているが、視聴者を楽しませる要素の内の一つでしかない。
それにしてもチャンネルの当初の目標は「漫才100本をアップする」だった筈なのに、2020年の26本目で更新が止まっているのはなんとかならんもんでしょうか。
上記2番組の他にも静岡で放送されている「霜降り明星のあてみなげ」がある。
これも面白いのだが、厳しい見方をすると様々なロケに挑戦するだけの番組である。
◆ ◆ ◆
さて、霜降り明星と爆笑問題にはまだ重要な共通点がある。
それは「二人だけの空間が面白すぎる」ということである。
「面白すぎる」という点がミソであり、それがかえって彼らの弱点になっていると私は思っていて、次回はそのことについて述べていきたい(おそらく次が最終回)。
つづく。
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