【エッセイ】ノスタルジー(1000字)
故あって平日は実家に身を寄せている。生徒時代を過ごした地である。出身校の生徒をたまに見かける。否応なく少年時代の青春の日々を思い出すのだった。
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中学生の時、文化祭で合唱コンクールがあった。合唱コンクール。合唱コンクール。女子が張り切るあれだ。ウンザリする。私はその頃、合唱に全く喜びを見出せず、魂の「た」の字の子音の「t」も込めていなかった。
合唱コンクールを巡って印象深い出来事があった。母校では学年ごとに審査しクラス対抗で課題曲と自由曲(自由曲と言っても音楽の教師がクラスごとに決めるのだが)があった。その課題曲は学年ごとに決まっており3年生の課題曲は「アメリカン・フィーリング」というコーラスグループのサーカスの名曲だった。
その「アメリカン・フィーリング」を課題曲から外すとの噂が広がり、1人の生徒が立ち上がった。同じクラブの先輩で大嫌いな女子だった。性格のきつい痩せぎすで神経質で仕切りで能力がないのに偉そうな長身(の○女)だった。そんなやつの名前ほどよく覚えている。「憎まれっ子世に憚る」とはよく言ったものだ。彼女は中学3年になったら合唱コンクールで「アメリカン・フィーリング」を歌うことを楽しみにしていたらしい。知らんがな、んなこと。しかしである。彼女の懸命な署名活動の結果、なんと、その課題曲変更計画を覆しやがったのだ。音楽の先生がかわいそうだった。ほんまアホらしい、合唱コンクールの曲などどうでもええわと私は呆れていた。署名させられたような気がする。今の自分ならそいつが大嫌いなので絶対署名しないだろうが当時はこどもである。ビビって署名をした気がする(どうだったかな?そいつも私のことを嫌いだったから署名に誘われなかったかもしれない)。
その一連の出来事を見て、私はルカの福音書18章1-8節の「裁判官とやもめ」のたとえ話を思い出していた。しつこいやもめに悪徳裁判官が音を上げるって話だ。
主も認めたように。2000年前からずっと女性は主張の強い生き物のようだ。女性の言うことを聞いておけば、世の中うまく回るかもね。フェミニストではないがそう思う。
【余談】
エッセイを書きながら郷愁に吹かれ、懐かしくなってサーカスの曲をサブスクでいくつか聞いてみた。Mr. サマータイムってのが一番有名で人気みたいだ。しかしドロドロした失恋歌だな。ミントのように爽やかな曲調のアメリカン・フィーリングの影みたい。
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