リモートワーク
とつじょとして発生して地球のすみずみまで大流行して人の動きとか経済とかとにかくもういろんなものをストップさせて世界を大混乱させちゃったコロナウイルスですが、僕とキクノスケはどちらかというと、それによる恩恵を大きく受けた側だと思ってます。
なによりリモートワークというものが僕が勤めている会社にも浸透してくれたおかげで、コロナウイルスがやってくる以前は考えられないくらいとても長い時間をキクノスケと一緒に過ごすことができるようになりました。
それまでの平日は、朝6時には起きて、出勤しなくてはならない9時まで支度をしながら全力でキクノスケと遊び、22時くらいに帰宅して24時くらいまでまたキクノスケと全力で遊んでからおのおのベッドとケージで寝るという生活をしていました。
少しでも早く家に帰ろうとしたり、休日は朝から晩までキクノスケと一緒にいるようにしたり、とできるだけ自分なりにキクノスケと長く一緒にいるための努力はしていましたが、それでも僕が仕事をして帰るまでキクノスケは部屋にずっと一人ぼっちでした。
僕が帰ってきたら、出かけるときにあげたケージの中のご飯も全くてつかずの日も多くて、帰ってきた僕のことを見たとたんにお腹が空っぽだったことを思い出したように食べ始めるという日も多かったですし、野生では数千羽の群れで生きているヨウムが一羽で留守番しているのはきっと寂しかったと思います。
ほぼ勢いに任せてキクノスケを飼う決断をしちゃいましたが、今になってその頃を思い出すと、やっぱり自分はヨウムを飼う資格のある人間じゃなかったんだと思います。(一緒に過ごせる時間でもこんな事件も起こしたりしてるし)
そんな生活でもキクノスケはストレスで毛引きすることもなければ、アタマタッチとかウンコシタとかババアシネとかいろんな言葉を覚えてくれて、僕とのコミュニケーションを少しづつ理解していってくれました。
で、キクノスケと暮らしてちょうど4年くらいがたったときに、コロナウイルスがやってきて、僕の会社も強制的にフルリモートワークで仕事をする環境になりました。
するとどうなったか。
もうとにかくキクノスケと過ごせる時間が死ぬほど増えました。
僕の仕事がいわゆる営業のような絶対にだれかと対面で行わなければならないものではなかったこともあり、平日も家で会社から支給されたノートPCを使って、キクノスケの世話をしながら仕事をすることが新しい僕らの日常になりました。
僕がリビングのダイニングテーブルで仕事をしているとき、キクノスケはケージの外に出て、部屋の中の好きなところでくつろいでいます。
2025年1月現在、僕が仕事をしているときにキクノスケがよくいるところといえば、
止まり木スタンド
キッチンの鍋類のふち
水道の蛇口の上
あたりです。
やっぱり平らな地面よりも木の枝みたいに足でとまれる場所の方が落ち着くらしく、家の中でそれらしいところを見つけて、違和感なくそこに溶け込みながらくつろいでいます。
僕が仕事している時間の9割くらいはぼーっとしてるか、寝てるか、羽繕いしてるかのどれかで、たまに一人でおしゃべりの練習をしています。
仲のいい同僚とのフランクなオンライン会議には文字通り"飛び入り"で肩の上に乗って参加してきたりもします。
Teamsの背景をボカすモードのときは肩の上のキクノスケもボカしてくれるのですが、足先まではボカしきれていないのでたぶん打ち合わせの相手にはバレてると思います。
社外の方などとの大事な会議のときだけは、隣の仕事をしている部屋とは別の部屋のケージの中に入ってもらっています。
コロナが収束してしばらくたった2025年も、僕とキクノスケにとっては本当にありがたいことに、(コロナ真っ只中のころよりはさすがに出社や訪問の機会も増えましたが、)こんな感じのリモートワーク中心の毎日が続いています。
おかげでキクノスケは、僕が寝るときか大事な会議のときかお風呂に入るときか外にご飯を食べに行くとき以外の時間を狭いケージの外で過ごさせることができるようになりました。
実施直前だった大きい仕事のプロジェクトが軒並み頓挫したり、ボーナスが減ったり、大好きだったご飯屋さんがいくつも閉店しちゃったりとコロナのせいで本当に大変なことも多かったけど、仕事をしているときもキクノスケを一人ぼっちにさせなくてよくなったのは本当によかったなと思いますし、それで僕も前よりもずっと安心して仕事に取り組むことができるようになりました。
さらによかったのは、一緒の時間が長くなったことで、キクノスケのいろんなことに気づけるようになったことです。
毎日同じ時間にケージの上に飛んできて晩ご飯を欲しがる、ご飯のペレットは種類ごとに食べる順番が決まっている、食べた後はナスカンを使って反芻しがち、ご飯は2回に分けて完食する、午前中に昼寝をする、キレイなジャイアンのフィギュアが嫌い、何回かに分けて1日で2〜3時間は羽繕いしてる、羽だけじゃなくて爪を自分でかじって長さを整えることもある、僕の姿が見えていないところにいる方がよく喋る、片足立ちするときは基本右足を上げるがごくたまに左足を上げるときもある、カラスの鳴き声に反応する、鏡やガラスなど自分の姿を反射するものに興味がある、外が雨の日ほど水浴びしたがる、初見のものには大抵近寄らない、暗いところよりは明るいところの方が好き、飛ぶ前にはしっかりストレッチをする、極端な内股歩きでよく自分の足につまづいている、お気に入りの場所では絶対にうんちをしない、そして自分のウンチには絶対に触らない、、、
それまでも僕と遊んでいる時間、二人でコミュニケーションをとっている時間にキクノスケについてたくさんのことを発見して理解してこれたけど、リモートワークをしながら、キクノスケが部屋の中で僕から離れているときにどうやって過ごしているのかを観察できるようになったことで、それまで見えなかったキクノスケの"生態"がもっとはっきりわかるようになりました。
キクノスケの方もリモートワークで一緒にいる時間が伸びた僕の"生態"を同じように少しでも理解してくれるようになってたら本当にいいなと思ってます。
でも僕がノートPCの前で夜遅くまで資料を作ったり、酷く焦ったり、特大のため息をついたり、たまにノートPCからひどく怒られたりしているその意味を、労働というものをキクノスケが理解することはだけはきっと永遠にないでしょう。
リモートワークになって、キクノスケの世話をしながら仕事をすることで困ったことはあったでしょうか。
まあそんなにはないです。
ちょっと昼寝をしたすきにテーブルの上で開きっぱなしにしてた会社から貸与されたノートPCのキーボードが31箇所剥がされたり、
僕が電話で言いがちな気だるい「はい」を覚えられて永遠に繰り返されたり、
ケージの外で過ごすことに慣れすぎて24時を過ぎてもまったくケージの中に帰ってくれなくなってしまったり、
クライアントの常務が参加する超々々大事なオンライン会議で僕が発表しているときに明らかに参加者全員が聞こえるくらいの大声で「バイバイ」を連呼され続けたりしたくらいです。
それくらいです。