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現代の教養のための大学入試小論文 #9 ~給食費未納問題~

ごきげんよう。小論ラボの菊池です。

小中学校での給食費の未納問題がピックアップされることが多いです。今回はその実態についての問題です。

キーワード

給食費未納問題

要約

 文部科学省は「学校給食の徴収状況に関する調査」を2005、2009、2010、2012の4回行い、その結果を公表している。
 2005年度の給食費未納調査では、小中学校全体の1.0%にあたる全国9万9000人が給食費未納であり、未納総額年間22億円(未納費割合訳0.5%)と報告された。学校の意識として、「保護者の経済的な問題」が原因であるとの回答は約33%、「保護者としての責任感や規範意識」が原因であるとの回答が約60%を占めた。新聞各社も「保護者のモラルの問題」と大きく報じた。
 直近の2012年度調査でも、学校側が意識する未納の主な原因のうち、「保護者としての責任感や規範意識の欠如」が約61%、「保護者の経済的な問題」が約34%である。学校では、「お金があるのに払わない」場合が3分の2、「お金がなくて払えない」場合が3分の1だとみている。
 未納額の割合は、直近の調査である2012年度において小中平均して0.5%である。小中別での金額割合は、中学校0.6%、小学校0.4%と中学校の未納額割合が高い。学校割合も常に中学校が高い
 仮に給食費未納のほとんどが「保護者のモラルの問題」ならば、中学生の未納率の高さをどう説明するのか。小学生と比較して中学生の未納率の割合が高いのは、子どもにかかる費用が中学生の方が高いという経済的要因が影響しているのではないか。文部科学省の調査によれば、学校関係で必要な費用は小学生年間約10万円に対して、中学生は年間約17万円である。中学3年生の学習塾費平均32万6333円も見逃せない。
 調査では未納額が減ったかどうかの調査もあったが、「未納額が減った」と回答した学校には、「未納が減ったと思う原因」を「督促の継続・強化」、「奨学援助制度等の活用の推奨」が多く、「保護者の規範意識の向上」を挙げた学校は3%のみだった。

出典

鳫咲子『給食費未納 子どもの貧困と食生活格差』(光文社新書、2016年)

出題校

岡山大学法学部法学科(後期)

解説

 日頃のニュースでは、「給食費未納」の問題について、「保護者の規範意識の低下」が挙げられることが多いです。「モンスターペアレント」という言葉と共にセンセーショナルに取り上げられることがよくありますよね。ただ、その認識は本当に正しいのかという検証は常に必要です。課題文でも、文部科学省の統計調査を基に、「規範意識」では説明がつかないことを論証しています。正確なデータを基にして、特定の社会問題について他の要因がないのかを考えることは、給食費未納の問題だけではなく、他の社会経済的な問題にも適用できる思考法と言えるでしょう。

拙著もよろしくお願いいたします。それでは♨


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菊池秀策
皆さまのサポートで、古今東西の書物を読み、よりよい菊池になりたいと思っております。