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現代の教養のための大学入試小論文 #17 ~海水の大循環~

ごきげんよう。小論ラボの菊池です。

今回は海洋における「海水の大循環」を扱います。海洋生命科学部からの出題ですが、中学レベルの理科の知識があれば理解できる問題です。

キーワード

海水の大循環
大西洋、太平洋、インド洋をまたいで、水温と塩分の違いによって生じる海水の循環のこと。ブロッカーが提唱した。

説明と要約

 海では、暖かい海水は密度が小さいために上にとどまり、下には沈降しない。この状態が続くと、下の冷たい海水は底層にとどまり続ける。海水中には様々な有機物があり、それらは水中に存在する細菌によって常に分解される。有機物分解過程で水中の酸素が消費されるため、深層水は貧酸素もしくは無酸素になる。表層の海水が冷えて沈降しない限り、底層への酸素の補給は期待できない

 ここで重要となるのが海水の大循環という現象である。大西洋では海水の蒸発量が降水量を上回るために太平洋やインド洋の海水より塩分が高い。これが海流によりグリーンランド沖まで流されて冷やされ密度が大きくなり沈降する。その冷たくて重い海水は難局に達して高塩分の海水と一緒になり、やがて海の表層に上昇して世界中の海に広がっていく。これは2000年をかけて循環するもので、このおかげで深層水は無酸素にはならない

出典

蒲生俊政著「日本海 その深層で起こっていること」ブルーバックス2016 講談社

出題校

北里大学海洋生命科学部海洋生命科学科[公募制推薦・帰国生徒]

解説

 課題文によれば、海洋が、浴槽のように冷たい層と暖かい層に分かれたままではないのは、海水の温度と塩分によるものだとのことです。問題では、日本海でも100~200年で循環が起こっており、その理由を地図と天気図をもとに答えさせていました。これは日本海北部に北西季節風によって流れ込むオホーツク寒気団と親潮、黒潮が関連していると思われます。地球温暖化が進むと、この現象はどうなるかということも問われています。皆さんも考えてみてくださいね。

拙著もよろしくお願いいたします。それでは♨


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菊池秀策
皆さまのサポートで、古今東西の書物を読み、よりよい菊池になりたいと思っております。