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【旅するコンフィチュール(横浜・関内)】私が“クラフトマンシップ”を学んだお店

ジャムとコンフィチュールは、どちらも主に果物と砂糖を煮詰めて作るが、総合してコンフィチュールの方が素材感が残るような製法のようだ。甘味も控えめらしい。

明確に分類しようと思えば分けられそうだが、どっちも好きだしどっちでもいい。でも、違さんが作るプロダクトは確かにジャムではなくてコンフィチュールと呼ぶへきだと思う。

というわけで、横浜の関内に「旅するコンフィチュール」という、過去にお仕事をご一緒させていただいたのをきっかけにお気に入りになったコンフィチュールの専門店がある。そのお店のオーナー違克美さんがこの度書籍を出版され、記念トークイベントが開催されるとのことで、行ってきた。

場所はみなとみらいのコレットマーレ内にある、カフェや雑貨売り場も併設した今どきな本屋。限定20名でこじんまりと行われた、がゆえにチケットは争奪戦だったようだ。(私はタイミングよく案内が出たタイミングですぐにチケットを手に入れたのであった。)

旅するコンフィチュール。
ここ数年、多くのメディアにも取り上げられているので、ご存知の方も多いかもしれない。

果物、スパイス、調味料それぞれの個性はもちろん、その個性同士の足し算や掛け算もお上手。そして何より、引き算の可能性まで熟知して体現されるのが本当にお見事。身近にある食材をコンフィチュールにして、確かな「らしさ」をひとさじ、さりげなくきらめかせるのが、本当にお上手だと思う。

味と香りが何層にも重ねられているので、そのまま食べても美味しいが、他の食材やお茶と組み合わせるとまた違った姿を見せたりして、色々試している間にあっという間にひと瓶食べ切ってしまうし、名残惜しさも感じる。そして気付けば虜になっている。

魅了されるのは買い手だけに止まらない。素材の生産者さんも「うちの子をぜひコンフィチュールにしてくれませんか」と声をかけているような場面もお見かけする。違さんの手にかかれば、天塩にかけた食材の新しい一面が光るのではないか、という期待があるのだろう。

司会進行のナツメ社の担当さんと違さん

薄曇りな日曜日のお昼時、私は桜木町駅で下車して、会場に向かった。到着した頃にはすでに多くのお客様がいらっしゃっていて、メモを取る準備をされている方なんかもお見かけした。

ふだんはガス火と銅鍋を使う違さんだが、この日は商業施設内での実演兼トークショーということで、この日はIHの熱源とテフロンの鍋で実施だった。試食もあったからだろう、接客時の違さんでは見られない、職人としての目の奥の鋭さがこの場で見られただけで、いちファンとしては来た意味があると思った。

イベントは書籍の出版元であるナツメ社の方が司会進行をされていた。会話の中で「どうして本を出そうと思ったんですか」という質問に「本を出そうと思って、調べようと思った矢先に、出版社の方からご連絡をいただいたんです」と違さん。

「ご縁だなあと思って〜」と軽くお話されていたけれど、これは、一度違さんとお仕事をご一緒したことがある方ならお分かりいただけると思うのだが、違さんは、「ご縁を受け入れる準備ができている」のだ。

メールに期日内に返信がある、確認に抜け漏れがない、こちらからのご要望に120%で答えてくださる……

私がお仕事をご一緒していた時も、何か新しいプロジェクトを始めたい、となればまずお声がけ候補に上がったのが違さんだった。

手がけられるプロダクトのクオリティは先述の通りだが、何より社会人としての信頼が厚い。

はたまた、ビジネスの場面ではありがちな「予想斜め上の出来事」にも全身全霊で対応されているお姿にも都度感銘を受ける。

そういえばお会いした時は、大量注文を受けてシグネチャーでもある金柑ジャスミンティのマーマレード用に金柑を大量に仕入れた後、コロナによって全キャンセルとなり(400キロもの金柑だったと記憶している)、とにかくものすごい量の金柑をどうしようかと思っているんです〜、とお話されていて、そのふんわりとした感じにあまり危機感を受け取らなかったのだけれど、400キロの金柑って想像したらとんでもなくてすごい。(その後大躍進され、廃棄することなく無事マーマレードとして皆さまのお手元に届けたのもすごい)

はたまた、出る杭になったとて毅然としていてくださるお姿も、凛々しく心強い。 本件詳細は省くが、やはり目立つと面白くないと思う人が出てきて重箱の隅を突くような事案が出てくるが、そんな場面でも毅然と対応してくださる。やるべきことはやっているし、対応すべきでないことはやらない。NOをはっきりと伝えるというのもビジネスにおける所作の一つだと思う。


過去お仕事をご一緒した時に、オリジナルのアイテムを作ってもらう、という企画を担当したことがある。

この時も、一番にお声がけしたのはやっぱり違さんだった。

当時商品企画開発担当側として、どうしてもこだわりたい契約の内容があった。

「オリジナルアイテムの独占販売権は期間限定とし、一定期間が過ぎたのちは、自社の商品として販売できるようにする」という内容だ。

食というとんでもなく入れ替わりが激しい界隈で、独り占めするというのはあまり意味をなさないと思っていた。

この日、イベントでテーブルに置いてあった本を開くと、色とりどりのコンフィチュールの中に、当時依頼して作っていただいたアイテムが並んでいて、とても嬉しい気持ちになった。

最後少しだけ違さんとお話する時間があって、そのことを伝えると、当時とはかなりレシピが変わっていて、全くの別物になっているらしい。

それも良かった。盛者必衰甚だしい食の世界で、作品が生きてる証拠だと思った。


最後に「どういうことがしていきたいか」と聞かれた違さんは「香り使いをもっと追究してゆきたい」とお話されていた。

おそらくこれからもっともっと違ったニュアンスのコンフィチュールがたくさん生まれるのだろうと思うと、いちファンとして楽しみで仕方ない。

ギフトなどにもとても喜ばれますので、ぜひ。
私のイチオシ貼っておきます。

グリーンのマーマレード!甘味もさることながら酸味と苦味がしっかりあって、組み合わせ次第で全く違う風味を見せてくれるので飽きない

コンフィチュールやジャムというと甘味料のイメージがあると思うが、旅コンのコンフィチュールの多くは料理にも使えるものが多い。新生姜はこの前初めて食べたけどもう何にでも合います。

旅するコンフィチュールの瓶にはもちろん、他の瓶でも端の端まで掬い取れる万能スプーン。

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