こうすれば

劣等感を克服する【こうすれば必ず人は動く6】

 恐れる心ほど、多くの人の人生を挫折させるものはないのではないでしょうか。さまざまな悩みについてお便りをいただきますが、いちばん多いのが、どうやって恐怖心を克服し、自信と勇気を養ったらいいのか、という質問なのです。

 例えば先日も、恐怖心に悩まされ続けてきた2人の若いご婦人から、10ページに及ぶ、実に痛ましい手紙をいただきました。2人の名前は、ミルドレッド・ディーフェンバックさんと、ルース・ディーフエンバックさんといいます。ロングアイランド、リッチモンド・ヒルズにお住まいの一卵性の双子の姉妹です。見た目も、考え方も似ています。職業は二人ともドレス・デザイナーですが、これまで八年間、次々に降りかかる災難に打ちのめされ、つらい経験を繰り返してきたということです。

 ミルドレッドさんの場合、恐怖心にさいなまされて、何年か前にはノイローゼに陥ってしまいました。子どものときにもうすでに、対人恐怖の傾向があったといいます。

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 ルースさんは、二人とも、生まれつき怖がりだったと証言しています。生まれつき恐怖心が強いと思う人々はたくさんいます。しかし心理学の実験によると、赤ん坊というのは、大きな音と空中を落ちていく感覚という2種類の恐怖心しか持っていないということが、証明されています。その他の恐怖心はすべて、自分で後天的に身につけて成長させていったものです。自分で身につけたものであるなら、自分で取り除くことができます。本当にそう望むならですが……。

 できるでしょうかって? 誰がそれを妨げていますか? 自分だけでしょう。そのあなたの恐怖心というのは、いったいどこにあるのでしょう。こんなことを、改めて考えたことがありますか? 恐怖心は、あなたの心の中にしか存在しないのです。ほかのどこにも存在しえないものなのです。それをどうやって心の中から取り除くかは、また後でお話しします。

 ところで、この2人は、8年もの間、恐怖心のため幸福も得られず、経済的にも困窮されたということです。ドレス・デザイナーとしての腕はいいようです。その証拠に以前アルトマンで6種類のモデルが売れたこともあるといいます。ところがどうやって売れたのかは、今考えても不思議でしょうがないようです。バイヤーとの約束をとっても、その人に会いに行くのが怖くてたまらないという状態だったのです。中に入っていく気持ちを奮い立たせるのに、通りを30分も歩き回るというようなこともあったといいます。

 まあ、それはよくあることです。私だって昔はそうでしたから。

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 さて、彼女たちはこれが非常に怖くて、人に会うときには、前もって自分たちの返答をすべて書き出しておくんだそうです。相手がどんなことを尋ねてきても、全部答えられるようにです。言いたいことは暗記したりもしていました。

 それでも、相手に会うと、覚えたことは全部忘れて言葉が出なくなってしまったり、ものすごい恐怖に襲われて、ルースさんの場合は、もう緊張のあまり、笑い出してしまうこともあるそうです。ミルドレッドさんの場合は、人と会う約束があると、胃が実際にムカムカして気持ちが悪くなるといいますから本当に深刻な問題です。こんなにも若くてきれいで、これからという二人が、人生で享受すべき幸福の10分の1も経験していないのですから、実にお気の毒です。私は2人のために心から、できるだけの力になりたいと思います。

 それでは、これから4つの指針を述べます。これを使えば、二人とも、いや誰でも、劣等感を克服して恐怖心を打ち砕き、大きな勇気と自信が持てるようになります。(つづく)

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『こうすれば必ず人は動く』
きこ書房

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