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ケンカが起きる、知られざる原因

 先日、タイムズスクウェアで地下鉄に乗ったところ、私の後ろから一組の男女が乗り込んで来ました。男性のほうは、重そうなスーツケースを持っていて、2人とも私の隣に座って、女性のほうが話を始めたんです。

 この2人の会話は当然私のところまで聞こえてきたんですが、2人とも非常によく見かける過ちを犯していたのです。それは今でも何百万もの人々の人生を惨めなものにしているものなのです。

 本章の主題とはずれますが、とても参考になると思いますので、この場面を再現してみましょう。

 それでは、その地下鉄に乗っているところとしましょう。

❖ ❖ ❖

女:(非常に口うるさい感じで)ジョージ、あの隅に座りましょうよ。

男:でも、ここでいいじゃないか。

女:ここは窮屈よ。あの隅なら余裕があるじゃないの。

男:でも、メアリー、動く必要なんかないだろう。座れたんだし、もうへとへとだよ。このスーツケース、重くってしょうがないんだ。

女:私はね、そうしたいの!

男:僕はここのほうがいいんだ!

女:ジョージ、どうして私がしようっていうことに、いつも、いちいち逆らうの?

男:メアリー、頼むから、そうギャアギャア言うなって。

女:(皮肉っぽく)ギャアギャア言って何が悪いの……。あなたったら、私の頼みなんか、なーんにも聞いてくれないんだから。

男:(うんざりした調子で)そうカッカすることないだろう、まったく!

女:何よ、私のために、もう小指一本だって上げようとしないんだから。カッカするのも、あたり前でしょ。

男:(妻を黙らせるように)しっ! 人が聞いてるじゃないか。静かにしろよ。

女:静かにしろですって! 結構な言い草じゃないの、ジョージ。騒いでるのはどうせ私ですよ! 悪いのはいつも私! あんたはいつも完璧なのよね……。

男:頼むから、メアリー、静かにしてくれよ!

❖ ❖ ❖

 それから二分後に電車が駅に着いたときも、二人の口論はなおも続いていました。この場合は、たまたま口うるさかったのは奥さんのほうでしたが、どうか誤解しないでください、夫のほうも同じように口うるさい人はたくさんいるのです。

 同じ車両にいた人で、この夫婦を見て笑っている人もいましたが、私は笑えませんでした。かわいそうになりました。2人ともべつに悪意があってのことじゃないんです。しかし、お互いに最悪の敵を作り出してしまっているのです。

 この夫婦も、あなたや私とまったく同じように、相手の優しさ、愛情を欲しがっているわけです。ところが、気がつかないままに、お互いに人生でいちばん欲しいと思っているその愛を、完全に打ち壊すようなことをしているわけです。

 今日もまた、何百万という夫が妻に小言を言い、妻は夫を責め、親は子どもに当たり散らし、教師は生徒にうるさく言い、上司は部下を叱りつけ、友人同士が互いに相手をけなし合っているのです。実際そんなことをしても、反抗心と人生の悲哀以外は、ほとんど何の結果も生み出さないのにもかかわらず。

 ですから、細かいことで、人を変えようなどとするのはやめましょう。

 人のあら捜しをするのはやめましょう。

 自分の思いどおりに人を変えようとするのはやめましょう。

 人を変えようとするなら、まず自分自身を変えることから始めるべきです。それでは、これを私たちの「成功ノウハウその5」としましょう。

「うるさい小言は言わないこと! 小さなことであら捜しをしないこと! 人を自分の思いどおりにしようとせずに、人それぞれの幸福を、尊重しようではありませんか!」


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