【感覚過敏だから…で終わらせないで】#15
”子どもと遊ぶ”が仕事の
小児の作業療法士ミキティです。
遊びに隠された7種類の感覚の秘密を
簡単にまとめています。
今回のテーマ:
身近にこんなお子さんいませんか?
# 15 感覚過敏
1.「感覚過敏」は触る時に嫌がる事だけじゃない
今から13年位前、
作業療法士になるなんて考えてもいない時、
アメリカに1年間、8歳の息子を連れて
プライベートスクールでインターンシップを
していたときの話。
当時、3人の男の子がいるご家庭に
ホームステイしていました。
そこは庭が広大な森になっている
素敵なお家でした。
私たちの与えられたお部屋は
当時日本で住んでいた居間より広く
バスルームも別にあり
ここから始まるアメリカでの生活に
胸を躍らせていました。
ただ知らされていなかったのは
兄弟の障がいについて。
長男12歳のお兄ちゃんは今思えば
自閉症スペクトラム。
次男10歳は発達がゆっくりで
吃音がある優しい男の子。
三男3歳は元気一杯の男の子。
ステイが始まった最初は
良かったのですが…。
ある時、日本料理を作って振舞うために
椎茸を煮詰めていた時、
いきなり、長男が鼻と口を
塞いで走ってきて言いました。
”○※▲◉〜!!”
英語力のない私でも
”あっ、怒っているな”と
肌で感じる英語。
なにやら始めたと思ったら、
シナモンスティックを大量に
鍋に投げ込み、水をジャッと入れ
火をつけてその場から去りました。
そう、彼は嗅覚過敏も持っていたのです。
もちろん、その頃、知識がない私は、
『えっ?なんなの?!性格悪い子ども!
親はどういうしつけしてるんだろう?
この先思いやられる…』
と本気で思ってました。
(最低ですね…。)
今だったらわかります。
彼のこの行動は
息が苦しくなるくらいの苦痛な匂い
から逃れるための防衛だったからだと。
2.その他にはどんな過敏があるの?
お兄ちゃんは食べるものが甘いもの、
ピザ、ハンバーガー、ポテトなど。
食べられるものが決まっています。
味覚・触覚の過敏さもあったんですね。
振り返ると、朝は毎日パンケーキ。
メイプルシロップを私たちの10倍位かけます。
初めてみた時はびっくりしました。
お皿から流れ出そうな位だったから。
スクールが終わり、毎回パパかママが
夕方お迎えに来てくれます。
時々、こんな事もありました。
頭をダッシュボードに打ち付けて
”甘いものが食べたい!甘いもの!”
と自傷行為が始まります。
困ったご両親はそれを抑えるために
Krispy Kreme Doughnutsに寄り
甘いドーナツを慌てて買って食べさせ
落ち着かせていました。
ここまでは経験談ですが、
他にもよく聞くお話で
歯医者さんが
大嫌いなお子さんも沢山いますよね。
お子さんの口の中が過敏で
触れるとそれだけで痛みを感じたり、
歯をウィ〜ンと削る音は
この世の終わり(聴覚過敏)
と感じて大暴れすることも。
”動くと危ないから”と、
体を押さえたり、ネットで巻いて
治療しざるを得ません。
3.どうしたらいいんだろう?
偏食は触覚による舌触り・温度、
味覚による過敏さが原因であることが多い
と言われています。
後にホストのママと話して
分かった事なのですが、
まだ長男が赤ちゃんだった頃、
”Dr.に「この子はあまり食べないから
好きなものだけ食べさせなさい」と
言われたから従ったの。
そうしたら、こうなってしまったのよ、
私だってどうしたらいいかわからないわ”
と涙ながらに話していた事を
思い出しました。
もしかすると、幼少期に味覚だけじゃなく、
食感を受け入れられるような経験や
言語聴覚士による口腔マッサージを行う等、
何か他に手立てがあれば食生活も
変わり、過敏さが軽減されて
いたかもしれません。
4.まとめ
感覚過敏がある子どもの支援には
まずこの子どもの行動がこのような
過敏さがあっての事であると
理解する必要があります。
大人がそれを理解しないと
私が冒頭で感じたように
「親の躾の悪さ」と思ったり、
子どもの行動を「わがまま」、
「性格の悪さ」と捉えがちです。
親御さんも子ども自身も
苦しんでいます。
助けられるのはDrやセラピスト
だけではありません。
これを読んで頂いてる
みなさんも「理解する」という
手を差し伸べる事が
出来るのです。
もし、周りにそのようなお子様が
いたら、ぜひ、視点を変えて
見守っていただけると嬉しいです。
参考文献:
感覚統合Q&A
感覚統合療法入門講習会資料集