2018年夏①〜鎌倉編
今から4年前の7月、大学生になったばかりの娘を連れて帰国した。それまでの帰国では、経由地で外に出たのはロンドンくらい。その他は世界のどこかでワンストップ(給油または乗り換えで)、後は真っ直ぐ日本に向かっていた。
前回は経由地のNYで4泊して観光を楽しんだ。真冬のブラジル、サンパウロから真夏のNY、そして日本へ。NYとサンパウロは時差が殆どない点は助かったが、季節が逆なことには閉口した。その先の日本はさらに大変だった。飛行時間もサンパウロ→NY(実際にはニュージャージーのニューアーク)よりもNY→成田の方が長い。その上、成田に着いた瞬間に感じるモワッとしたあの湿気。先が思いやられるなぁと思ったものだ。
日本の家族との再会も果たし、気候や時間にも慣れてきた2週間ほど経った頃に、娘は一人サンパウロに戻ることになっていた。男性陣二人を家に残していたから、料理や洗濯などの家事もある。月末には大学の授業が始まるので、もちろんその準備もしなければならない。私は引き続き残って(その先の約1ヶ月半)、普段は出来ない両親のサポートをする。娘にとっては初の海外一人旅になるが、シカゴでの乗り換えさえうまくいけば大丈夫。もう18歳。立派な大人だし、あまり心配していなかった。
娘の帰国が近づいてきたある日、私の弟がある提案をした。
「鎌倉にでも行かないか?」
私は何度か行ったことはあったけれど、娘にとっては初めての土地。大学で建築を学ぶ彼女にとって、日本の神社仏閣を見て歩くことは、良い経験になるだろう。本人も大層乗り気だった。確か行こうと提案されたその日は平日だった。週末の観光地の混雑を避けるため、弟が有給休暇を取ってくれることになった。
通勤ラッシュが落ち着いた朝の時間に、最寄駅である市川駅から総武横須賀線に乗り込んだ。約1時間余りで、鎌倉駅に到着。思ったより近い。そこから江ノ電に乗り換え長谷駅に向かう。駅から徒歩で大仏様に会いに。。
大仏様にお別れを告げ、次に向かったのは長谷寺。
昼時間になったので、鎌倉駅に向かう。小町通りでゆっくりできそうなお店を物色。
このお店で娘が不思議な経験をした。(娘にとってはそうでもないのかも知れないが。)お客さんの一人、幼稚園児の女の子に熱い視線を投げかけたれたというのだ。後から告げられたので実際に私はその光景を目にしたわけではないのだが、席から、トイレでも。熱い視線と言うよりは、口をあんぐりと開けて見つめて来る、と言う感じらしい。自国でも度々経験すること(小さな子供に限る)らしいので、本人はさほど気にしていない様子。でも聞かされるこちらは。。幼子には一体何が見えていたのだろう。
次に向かったのは、鶴岡八幡宮。そろそろ学校の下校時間になったせいか、向かう道すがら見かけた、ランドセル姿の可愛らしい小学生たちの姿に心が和んだ。(ニノ鳥居の辺り。)それにしても暑い。昼食で休憩をとったとはいえ、一同足取りも軽く、と言うわけには行かなかったが、ようやく見えてきた!
最後に向かったのは円覚寺。暑さでふらふらになりながらも、持てる力を振り絞る。
この日(私たち母子にはその年)最後のお参りを済ませて帰途に着く。帰りは北鎌倉から総武横須賀線、しかもグリーン車に乗車。弟に異論を唱えるものはいなかった(笑)次に戻って来られるのは果たしていつになることか。
娘は5年に及んだ大学生活を終え、間もなく社会へと羽ばたいて行く。忙しい生活を続けることには変わりは無いと思うが、自分で歩いて色々な世界を知って欲しいと切に願う。自分のルーツである日本にも、いつか必ず戻る機会に恵まれるよう。。
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【本日のおススメミュージック】
随分前の帰国を回想する旅日記となった。昨日、NY在住のジャズピアニストの大江千里さんご本人による、鎌倉でのライブレポート(noteエッセイ)を拝読して、放ったらかしだった日本での写真と頭の中の記憶を整理しようと思ったのだ。
おススメミュージックは大江千里さんのポップス時代の名曲「塩屋」。鎌倉の話なのに塩屋?とお思いになるかもしれない。千里さんが最近の凱旋中にご出演されたラジオ番組や、昨日のエッセイで触れられていたのだが、塩屋の舞台はもちろん、神戸市垂水区の塩屋町。でも詞の一節
は、お忙しい合間を縫って、夜中に東京から車を走らせては訪れていた由比ヶ浜、鶴岡八幡宮付近のガソリンスタンドを思い浮かべながら書かれたとのことだったので。今回の鎌倉の会場でも、ジャズに翻訳されたこの曲が演奏された。