smashing! げこくじょうなそのよかん
佐久間鬼丸獣医師と喜多村千弦動物看護士が働く佐久間イヌネコ病院。そこで週1勤務をしている、大学付属動物病院の理学療法士・伊達雅宗と経理担当である税理士・雲母春己は付き合っている。そして二人と一緒に住み始めたのは伊達の後輩で恋人、設楽泰司。
「もー何言ってるかわかんないん」
「や、だから」
年の瀬も押しせまった雲母のペントハウス。どうやら雲母が白河弁護士関係で不在な年末年始。とりあえず気持ちよく送り出したものの心持ち面白くない。ムーディな年末をハルちゃんの膝の上で過ごしてハッピリィな年始をハルちゃんの膝の上で迎えたかった32歳。そんなんいいんよ年齢は!イキってはみたけど斜めってますねわかりみ。少々怪しげな雲行きの夕ご飯タイム。
「白河先生んとこに押しかけましょうか」
「わかってないんよお前は!理解ある年上のパートナーてスタンスでやってきたのにい!」
「雲母さんにビデオ通話かけましょうか」
「も、い」
ご機嫌斜めな主君となんとかラブラブに持ち込みたい設楽は、自分の持てる限りの持ち駒を駆使してご機嫌を取る作戦。それもほぼ空振りに終わりそうな予感、流石のスーパーコンシェルジュもそろそろ持ちネタが尽きてきた。
「じゃあ」
「…んあ?」
「伊達さんがしたいこと、俺が叶えます」
「何でも?」
「スーパーコンシェルジュなんで」
夕飯の鶏肉のクリーム煮のスープ部分を美味そうに啜りながら、伊達の目が悪戯っぽく光った。それって何でもいいん?はい何でも。仏頂面の設楽をチラ見しながら、伊達はとんでもない案件をぶっ込んできた。
「お前に突っ込みたいん!」
「御…ハァ?」
伊達がこの上なく嬉しそうに、隣に座っていた設楽の顔を下から覗き込む。設楽の萌えな角度(らしい)。オレはバリタチだから面白くないと思いますよ、ぶっきらぼうに流す設楽。それなのに伊達は明後日の方向で大騒ぎしているので話が通じない。
「そうと決まれば準備準備!さあお手洗い行こ、すっからかんにしてやるよお♡」
「や、いいですオレすっからかんじゃなくても」
「いいの?俺がお前の コだらけになっても」
「…すいませんやっぱりすっからかんで。てか無で」
夕食の片付けを終え設楽は一人手洗いに向かう。やる気満々やないか、言い出したら聞かない伊達に翻弄されながら、バリタチを貫き通せない己の方向性を少しだけ憂いてもいた設楽。俺がやると言って聞かない伊達をなんとか宥めすかし、設楽は後ろを洗うのに専念した。洗浄は、以前に雲母にナ☆イキをキメさせてもらった時に体験済みだ。思ったのは、とにかく受ける方の負担は相当なんだなと。今度から伊達さんを丁寧に扱おう、設楽は改めて思った。結局なんだかんだで忘れるけど。
シャワーも浴びて準備万端。多分オレの部屋だろうな、と思いながら襖を開けたらベッドで伊達がドヤ顔のバスローブ姿で待っていた。うわなんか引く。シャワーして待ってたん!この短時間にですか流石ですね。おいで設楽、差し出された両手に導かれるようにベッドに乗り上げ、設楽は伊達の腕に抱きしめられた。
「回りきってない、腕」
「お前でっかいからねえ。さ、始めよか」
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数時間後。設楽のベッドの上では「ただのしかばねのようだ」な二人が息を荒げぐったりと横たわっていた。
「な、んか、こんな感じなるとは思ってたん…」
「すみません、つい気がついたら」
最初からいい感じにことは進み、流石な伊達のリードに身を任せていた設楽は、その「いちいち上手い」伊達に徐々に興奮度もヴォッキ度もマシマシになり、ソーニュー一歩手前でまさかの体勢逆転。ビックリ顔の伊達にたまらずインしてしまった。あ、と思ったら時すでに遅し、伊達の内側の油断していた感が新鮮でこう、矢も盾もたまらず(略)。設楽は隣で全身クラゲのようにクッチャクチャになって脱力する伊達の前髪をそっと梳いた。
「風呂行きましょう、立てますか?」
「もーお前あれだわ」
「?あれとは」
「シン・バリタチて呼ぶ」
ありがたいのかそうでないのか不明だが。通り名まで頂けて光栄の極みです、設楽は真面目くさって伊達を抱き起こしバスルームに向かう。うわあお姫様抱っこ、ちょっと嬉しそうな伊達の声の掠れ具合がまた設楽のシダラを煽ったようで。
何戦目なのかわからないタッグマッチの予感しかしないのだった。