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smashing! いつもどおりなひび

今日の診療は午前中のみ。混みがちな半日も、意外に暇になる時がある。診察室の片付けを終えた佐久間は、昼食を用意しがてら病院周りの掃き掃除をしようと待合室から外へ出た。

いつもなら外の寄せ植えに水をやりながら歌っている喜多村の姿がない。だが耳をすませると微かに歌が聞こえる。洗濯物のとこかな、佐久間は外階段を登り屋上を見渡した。

屋上の一番奥、公園が見渡せる佐久間家ビューポイントに喜多村がいた。佐久間の足音が聞こえたのか、喜多村が振り向いて笑った。早く降りてこいご飯だぞ、吹き抜ける風のせいでうまく聞き取れないのか、耳に手を当て首を傾げている。佐久間は口を大きく開けてもう一度叫んだ。

「は、や、く、お、り、て、こ、い」

ようやく通じたらしく、わかった、喜多村がそう答えたのに安心したように階段を下り、2階住居部分の玄関を開けた。なぜだか佐久間はそのままドアを閉めた。見てはならない何かがあった気がする、佐久間は首をぶんぶんと横に振り、再度ドアオープン。そこに立っていたのは下半身丸出しですっかり  したソレを従えドヤ顔で仁王立ちする喜多村。待っていったいどこでどうこいつに湾曲して伝わった?佐久間は震えながら喜多村に問いかける。

「…ちづ、お前一体」
「しかと耳にしたぞ。鬼丸、お前は俺に」

はやく   してくれ

「って言ったんだよな♡」

…はェ…。佐久間のヒョロヒョロな叫びは喜多村の勢い、勢いと言っても力士ではなく、とにかく圧倒的な熱量に飲み込まれ消え失せる。全裸の喜多村に組み伏せられ自由を奪われた佐久間は、妙にはっきりした意識の中で考えていた。そう、千弦の部屋のクローゼットの奥には、俺宛のプレゼントがみっちり詰まっているのを知っている、ああそうか。

そういえば今日は俺、誕生日だった。


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2021年の節分から
あっという間に四年目に突入です。
ネタが尽きないのはまさに
「向こう側の世界の人々」の日々の暮らしを
私がただ覗いているから、じゃないかと。

よろしかったらこれからも
お付き合いいただけますと
超絶嬉しく存じます。

イラストが間に合わなかったのですが
そのうち載っけます、楽しみにしていてください。

(喜々)


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