レゴ®︎シリアスプレイ®︎で「見えない資産」を引き継ぐ
戦後復興期から経済成長を経て成熟期に入り、世代交代と産業構造の転換が進む日本社会において、「事業承継」は非常に重要なテーマとなっている。
「事業承継」においては、人から人へと資産を受け継ぐことが行われるため、その点に関しては公認会計士や税理士など法と向き合う士業の力が必要になる。
それと同時によく指摘されるのは、それまでの経営者が創り上げてきた人的・企業間ネットワークや企業の文化を、後継者へとうまく引き継ぐことの重要性である。これらは「見えない資産」と呼ばれたりすることもある。
後継者が決まり同じ時間を過ごしていても、「見えない資産」は簡単には引き継げない。先代事業者の頭の中を常に覗けるわけではなく、後継者が同じ経験をしたとしても、その経験の意味づけはそれまでの経験差が影響して異なるところが難しいだろう。もちろん、先代と全く同じ考え方をすれば経営がうまくいくわけではない。ただ、先代の考え方をしっかりと理解することで、それまで積み上げてきた良い部分をむやみに壊さずに済むはずだ。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎には時間はかかる(どんなにがんばっても1時間では終わらない)けれども、その企業や組織がどのようになっているのか、これまでの経緯も含め、経営者の視点と頭の中をテーブルの中に作品とその作品に伴う語りとして引っ張り出すメソッドがある。
頭の中にある要素を作品として次々につくり並べていくだけでもかなりの情報量になる(参考記事)が、それをネットワークを表現するパーツで結んでいくとさらに豊かな表現になっていく。
先代経営者のみが作るのではなく、後継者や経営に深く関わる人たちも加わって、先代がみているであろう世界の一部についての作品を投入し、お互いに作品について語り、質問し合って理解を深めていく。
他の人の作品に対する質問は非常に大切で、単に話だけ聞くよりも、作品が目の前にあり続けることで自分との感覚差をより強く感じ、質問がより多く浮かび上がってくる。そうして、さらにいろいろな語りが引き出す契機になるのがブロックでの作品を使った対話の特徴である。
それを繰り返していくと、それまであまり意識していなかった価値や課題について気づくことができたり、当初は現状を表現しただけだった作品でも時間軸を超えて過去や未来についての語りが引き出されていくこともある。
このようにしてレゴ®︎シリアスプレイ®︎は、「事業承継」のような問題に対しても「見えない資産」の掘り起こしと参加者間への共有を強力に進めることで貢献できる力をもっているのである。