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思考ルーチンとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(3)「ズームイン」

 今回はこの本の中で紹介されている「ズームイン」という思考ルーチンをとりあげる。

 使い方の一例として、何らかの画像を用意し、その一部だけを見せてじっくりを観察させる。
 そこに何が見えるか、そこからどのような仮説が考えられるかを話し合わせる。

ある画像の一部

 上記の絵なら、「人が横たわっている。」「青い服を着ている。」「生気のない顔」「左下にも手が見える。」となり、「寝ている?」「死んでいる?」「殺された?」「複数人いる?」などが挙げられるだろう。

 その後、もう少し広げてみせる。

見せる部分を広げた

 すると情報が追加され、また見えたものとその解釈についていろいろな会話を引き出すことができる。

 例えば、「複数人が横たわっている」「左の方は服も着ていない」「立っている足も見える」「死んだ人の確認に来たのかな」「絶望や悲惨な情景を描いたのかな」などという意見である。

 表示範囲を広げて、情報を得させ、考え直させる、を繰り返しながら全体像に辿り着く。

ウジェーヌ・ドラクロワ「民衆を導く自由の女神」

 徐々に情報を追加しながら、情報が加わると仮説が変わっていくことを体験させる。仮説は1度立ててで終わりではなく、追加の情報でどんどん仮説は修正させるべきものだということに気付かせる効果がこの体験にはある。

 情報の追加によって仮説が変わると、その分だけ、そこに出てくる情報そのものの印象も深くなる。すなわち記憶にも定着しやすくなる。

 また、この体験をもとに、誰かに一部の情報だけを与えることの意味や、与える情報の順番(例えば、銃をもつ少年から広げていったらどう解釈が変わっていったか)などの意味なども考えさせることができる。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおける「ズームイン」

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおいて「ズームイン」と同じ思考ルーチンが出る場面としては、まず同じ問いに基づいて作られた自分の作品と他の人の作品の話を比べるという瞬間があげられる。
 自分の意見は、さまざまな意見の一つでしかないことがまずわかり、その中で自分の意見がどれだけ偏っているかを見ることができる。

 さらに、他の人の意見との関係性をランドスケープ(風景)作成の技法などを教えて表現させたのち、改めて自分の意見の居場所を確認させれば、多くの意見という文脈の中で自分の意見についての感じ方も変わってくることをより強く体験させられるであろう。

 また、一つには作品を作った後に「追加の問い」を出すことも「ズームイン」の効果を生み出す。例えば、「現在の自分」についての作品を作り、現在につながる「過去の自分」や「理想の自分」を作ることで、「現在の自分」の作品についての意味づけが変化するということである。

 さらに、問いに合わせて作品を作ったのち、そのままその作品について共有することがレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのワークでは普通の流れであるが、先に作品の中で最も重要な表現部分だけ抜き出して、その部分だけ共有(他の人に解釈させ)し、その後に抜き出したものを作品に戻して全体を話すというやり方も考えられる。
 この方法をとれば、「ズームイン」の思考ルーチンの効果がはっきされ、作品について話す方も聞く方も、より深く作品にある情報を理解できる可能性が高まるだろう。

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