今回取り上げるのは「聞いてもらう、分かってもらう、尊重してもらう(Heard, Seen, Respected: HSR)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
「傾聴」の重要性に気付かせるシンプルな狙いのLSとなっている。人間関係において聞くという行為の占める比率と影響力は高い。その部分を良くすることでさまざまな場面での改善が期待できる。
5つの構造要素
「聞く」ということを、それを十分にしてもらえなかった体験を物語ることを通じて理解を深めるという比較的簡明な構成になっている。
「5.ステップと時間配分」に出てくる「1-2-4-All」は、頻出するLSの一つである。詳しいやり方は以下のNoteで紹介している。
また、上記の文中では紹介されていないが振り返りのまとめ方にはLSの一つである「3つのW」を使うこともできる。このLSによって、このHSRでの体験の意味づけと次へのアクションをより手堅く行うことができるようになる。「3つのW」については以下のNoteで紹介している。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
ここにあるように、聞いてもらえないということに始まる苦しみや問題は非常に一般的である。多くの人にとって聞くことが直接成果に結び付いているように感じられないことや、すぐには悪い影響が出ないために対応を怠ってしまうことが原因の一つであろう。
この原因は、別の角度から見れば人間における「システム思考の欠如」にもつながる。この先については、その問題に立った組織づくりを論じた『学習する組織』という書籍を扱ったマガジンを作っているので興味のある方はそちらを辿っていただきたい。
なお、6項目目にある「カタルシス」は心に溜まったネガティブな感情やモヤモヤを会話などで外に出すことによって、心理的にすっきりした状態になることである。
聞いてもらえなかった体験は辛い感情と結びついて、それゆえ心理的抵抗感が強く、それをほぐすことが実施のポイントの一つであることが上記からわかる。
このHSRというLSは単独ですることもできるが、他のLSのワークで時間的に余裕があるときに「聞く」ことを強化するワークとして入れ込むということもできるということである。
「トロイカ・コンサルティング」「援助のヒューリスティックス」「真価を見出すインタビュー」「会話カフェ」などのLSについては以下のNoteで紹介している。
「関係を生み出すSTAR」も同じくLSであるが別の機会に改めて紹介したい。
傾聴の態度は良好な人間関係の基本であるがゆえに、あらゆる場所や機会にそのような態度が十分に見られるかを注意しておく必要がある。必要に応じていつでも行えるように構えておくぐらいでちょうど良いのかもしれない。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、ブロックで作るモデル自体が、自然と人の注意をひきつけ好奇心を喚起させるので、「傾聴」ということについては、ファシリテーターとして注意しておかねばならない要素の一つではあるが、そこまで心配しておく必要はない。
しかし、そうであるがゆえに自然と「傾聴」が確保できていることの有り難さを忘れてしまいがちである。
それを参加者の方に感じてもらうために、締めくくりで「今回のワークを通じて「聞く」ということについて普段の会議とどのような違いがありましたか?」などと聞いて印象に残させるのもいいだろう。
また、「お互いに『聞く』ことができていない職場で何が起こるか、あなたの考えをモデルにしてください」という問いのもとに、ワークの一つにしてしまう方法もあるだろう。