リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(10)トロイカ・コンサルティング
今回取り上げるのは「トロイカ・コンサルティング」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
「トロイカ」はあまり馴染みのない言葉ではあるが、「ロシアの三頭立ての乗用馬車」から転じて「3人で行うやり方」を指すことが多い。「3人体制でのコンサルティング」という意味合いになるが、「トロイカ」という響きが個人的に好きなので、そのまま訳語も「トロイカ・コンサルティング」にした。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
「ラウンドロビン方式」は、お互いに役割を入れ替えて順番に行う方式である。一般的なコンサルテーションでは、ある分野の専門家が相談を持ち込む側(クライアント)の話を聞き、問題を診断し、解決策を提示するというやり方で、相談する側とされる側は最初から決まっている。
しかし、このトロイカ・コンサルティングではそれを参加者同士で入れ替えて行う。これは「ピア・ツー・ピア式」という言葉にも現れている。「ピア・ツー・ピア」はコンピュータ通信で対等な立場同志の通信を指す。
参加者間の知識や経験に上下関係はなく、むしろ身近な人や意外なところにこそ良い解決策が眠っているという思想が窺える。
5つの構造要素
「トロイカ・コンサルティング」の名前の通り、3人1組で行うのが基本となる。2人が相談しながら案を考えるというのが、人々に眠る知恵を解放するポイントである。
もう一つの特徴が、アイデアを作成したりアドバイスをしたりするときに、背中を向けて行うという点である。これは面と向かって行うよりも対人間での緊張感を低減するという狙いがあると思われる。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
ここから読み取れるのは、このLSがその場をお互いの悩みを解決すること以上に、「普段から相談し合える関係づくり」を重視しているということだ。
先程の「5.ステップと時間配分」において、アドバイスを受けたのちに「今回の体験で最も価値のあったことを共有する」というステップがあるが、これもお互いに相談し合うことの価値や良い関係を作ることの意味を確認させる狙いも秘められていそうだ。
ここはほぼ、コンサルティングをすることについての罠をまとめたものといえよう。このLSを使わなくても、コンサルティングをするときの参考になる。
「15%での解決策」については以下の記事で紹介している。解決策をよりよいものにするために、「トロイカ・コンサルティング」方式(3人1組でする、後ろを向いて相談など)で進めることはより強力な方法だと感じる。ただ、その場合には2つのLSを組み合わせて進めるための、参加者へのイントロダクションが難しそうだ。
Q-stormingは、Webで調べてみるとブレイン・ストーミングの質問に絞ったやり方ということはわかったが、さまざまな手法や展開事例があるようで、誰がどのように始めて体系化したものであるかは、調べてみたが良くわからなかった。
ただし、多くの質問を考えることに集中することで、解決策に集中するのとは違う切り口や結果がもたらされる可能性は十分にある。
今後、LSの一つに加えられるのかもしれない。
また、「15%での解決策」のほかにつなげることのできるLSとしてあげられた「9つのなぜ」については、以下の記事で解説している。
「支援のヒューリスティックス」、「聞かれる・見られる・尊重される」もLSである。改めて紹介したい。
事例(推奨する使用場面)では、多くの人に知ってもらうこと、繰り返し使うことと、使う機会を増やすことが大事であることがわかる。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
心理的プレッシャーを軽減するために「背中をむける」という発想は非常に面白い。レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは「相手の顔を見ず、モデルを見て進めさせる」ことがポイントであるが、それと共通する点がある。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、考えるべき「問い」はファシリテーターが出すが、その「問い(解決してほしい悩み)」をモデルで参加者が作り、残りの参加者がお互いに「自分なりの解決策」をモデルで作る、というワークが考えられる。
以前に筆者は「タニモク」というという手法をレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドと組み合わせて行ったが、それに近いようなワークになるのかもしれない。
この「トロイカ・コンサルティング」は、お互いに悩みを出し、相互にアドバイスしあう機会をその後も作ることを狙っている。それがその組織や集団の良い文化作りにつながっていく可能性がある。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでも、ファシリテーターがいなくてもモデルを作りお互いに質問し合って内省力を深めることを習慣化する方法があることも大事なのではないかと考えさせられる。