今回取り上げるのは「25/10クラウド・ソーシング」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
短い時間で参加者全員でアイデアを出していき、参加者が主体的に採点に参加して良いものを絞り込むという手法である。
「25/10」という表現は、次の項で進め方を見ればわかるが、参加者全員で出したアイデアを「25」点満点で採点していき、そのうちのトップ「10」を選んでいくという流れを表している。「クラウドソーシング」は「群衆から湧き出る知恵」というような意味合いである。
5つの構造要素
「全員で何かを考えアイデアを出す」というじっと座って考え込むというイメージとは真逆で、会場を動き回りつつ、テンポよく進む(3分ぐらいでどんどん場面が転換する)。ワークの全体像がよく分かっていないと「戸惑い」が生じやすい。
そのため、最初にこのワークの狙いと「ミル&パス」や「リード&スコア」などのステップをしっかりと参加者全員が理解できるように配慮することがポイントとなる。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
良いアイデアを出すことも大事だが、中長期的に考えれば、全員がアイデア形成に貢献しようとする態度を作ることがより重要である。
このLSには、よいアイデアを考えることに自身の無い人であっても、採点やちょっとした気づきを加える機会が上手く織り込まれていることから、全員がより主体的に参加できる環境や文化をつくるという狙いが込められている。
上記でも述べたが、手順が簡単なようでいて混乱する人が多いとのことで、それを防いだり、混乱が生じたときの対応方法をいろいろと用意しておくことがポイントになりそうだ。
「オープンスペース・テクノロジー」「合意ー確実性マトリクス」「エコサイクル・プランニング」もLSである。別の機会を改めて紹介したい。
また、基本の問い(「もしあなたが10倍大胆になったら、どんな大きなアイデアをお勧めしますか?始めるためにどんな最初の一歩を踏み出しますか?」)のバリエーションを持っておくことで、応用場面はさらに広げることができる。
「何かを止める」については、別のLSである「TRIZ」との組み合わせが役に立つだろう。LS「TRIZ」については以下の記事で紹介している。
第3部で紹介されている「医師教育のためのコンピテンシー開発」では、前半は別のLSである「DAD」で、問題の分析と基本的な解決アイデアの方向性を共有したのちに、最後にこの「25/10クラウ・ドソーシング」を使って、より具体的なアイデアへと結晶化させていった事例となっている。
このような解決策を考える場作りでは、問題の分析や基礎知識の共有を参加者間でしっかりと行なっていくことによって、よりよい成果が出ることを忘れてはならない。その意味でも他のインプット・分析系の取り組みと組み合わせたり、まとめ的な位置付けに持ってくるのが良さそうだ。
また「DAD」というLSについては以下の記事で紹介している。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは、人々の中に眠っている経験を知識という形で表現させ、お互いにそれらを組み合わせて新たな知識を作ることに優れている。
また、頭にあるアイデアは、基本的に視覚的なイメージが先行しているはずなので、文字よりもより良く他の人に自分のアイデアを表現できる。
一方で、出された多くのアイデアを相互に評価していく、絞り込んでいくという点については、まだメソッドとして十分に熟していない。
それぞれのアイデアをつなげ、配置することで、より大きな見取り図を構成していくことはできる(メソッドも確立されている)。ただし、つなげたり、配置していけるのは元になるアイデアの数がそこまで多くならない範囲である。
個人的な経験の範囲であるが、多くても15個ぐらいまでであろう。このアイデアの数については、それ以上の関係性を考える場合、参加者にとって複雑さの方が優ってしまう(そのワークで得られることが少なくなる)と思われる。
つまり、参加者が多くアイデアの数を上手く絞り込む必要があるときには、アイデア・モデルをカードへと文章に落とし(できればモデル写真付きで伝えたい)、この「25/10クラウド・ソーシング」へと繋いでいくという方法が考えられる。
もしくは、アイデア・モデルを展覧会のように机の上に並べランダムに人々に作品の前に立ってもらいコメントと点数をつけてもらうことを繰り返す(5ラウンド)方法もあるだろう。
上記のようなことを考えていけば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使ったアイデア創出のワークにおいて組み合わせて活用すれば、よりよい結果を導ける可能性がある。