今回取り上げるのは「一緒に描く(Drawing Together)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
5つのシンボルから絵を描くことで普段とは異なる思考を引き出すというところに最大の特徴があるLSである。
5つの構造要素
「4.グループ編成の方法」や「5.ステップと時間配分」に出てくる「1-2-4-All」は、頻出するLSの一つである。詳しいやり方は以下のNoteで紹介している。
実際に5つの記号でどのような絵ができるかがないとイメージがわかないと思われるので、サンプルになりそうなものを一つ描いてみた。どのような物語を感じられるだろうか。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
ここにあるように「描く」ことで私たちが普段行っている「話す」とは違う感覚で、対象(ここでは新たなものを生み出す「旅」)を捉えることができるようになるのが最大のポイントであろう。それが、新たな理解への糸口になる。
最初の項目でふれられているように「絵を描く」ことに抵抗のある人は少なくない。「うまく描く必要はない」ということをよく参加者に伝えて参加のハードルを下げることがまず重要である。
4番目の項目に出てくる「ヒーローズ・ジャーニー」は、ジョセフ・キャンベルによる神話研究から生まれてきたコンセプトである。「スターウォーズ」「指輪物語」をはじめ、多くの世界的なヒット作品のシナリオがこのコンセプトに沿っている(沿って構想されている)と良く指摘されている。
「ヒーローズ・ジャーニー」をベースとしたテンプレート(ステップ)は、解説する人によって少しずつ異なるが、以下のページは比較的読みやすく簡明にまとまっている。
「絵で考えを表現する」ということに馴染みのない場であればあるほど(戸惑いも大きいだろうが)、実施する効果も大きそうだ。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
このLSでは5つのシンボル図形(円、四角、三角、らせん、星)の意味を先に固定しているのに対して、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、ブロックに作成者が意味を付与する。
またこのLSが2次元上での表現になるのに対して、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは3次元上での表現になる。
表現の複雑さという点に関してレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの方が圧倒的に上回る。その分、さまざまなテーマに対応することができる。「一緒に描く」では「挑戦や革新に取り組む「旅」」が基本テーマでそこまでの幅がない。
逆に言えば、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドに比べ、「一緒に描く」では、複雑さをぐっと減らして簡明にしているとも言える。その分、伝わりやすく考えやすくなっている。
制約が創造性を高めるということもしばしば言われることである。ブロックの種類を減らし、意味を限定し、表現空間の次元を減らすことで生まれる創造性もあるかもしれない。
例えば、ブロックを5個のみに指定にして何かのテーマに沿って作らせる。または、いくつかのブロックの意味を先に決めておいて(「友達」「勉強」「先生」「親」を意味するパーツを決めておいて)理想の小学校生活を表現するなどもあるかもしれない。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使ったワークの可能性を広げるために、何かを縛ってみるという発想は、ワークのプログラム・デザイナーとして持っておきたい視点である。