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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(3) 1-2-4-ALL

 今回から具体的な33のリベレーティング・ストラクチャー(LS)を見ていく。
 最初に挙げられているのが「1-2-4-ALL」というLSである。

それぞれのLSはホームページ上で実にわかりやすく整理されている。最初に「この方法で何ができるか?」が示される。そのつぎにLSを作っている5つの要素が示される。その後に、進行のコツや展開例などが示されている。

この方法で何ができるか?

 グループの人数に関係なく、すぐに全員を参加させることができます。より良いアイデアを、より多く、より早く生み出せます。事前に知らないところに広く分布しているノウハウやイマジネーションを活用することができます。オープンで新しいものが生み出されるような会話が繰り広げられます。アイデアや解決策が迅速にふるいにかけられます。最も重要なことは、参加者がアイデアを得ること、それでフォローアップと実行が簡単に進められることです。買収戦略は必要ありません。 シンプルかつエレガントなものです!

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

  全員が参加している感覚を保ちながら、アイデア出し、選別、共有を迅速に行えるという手法であるといえるだろう。

5つの構造要素

1.始め方
・課題の提示、解決すべき問題や提案に対して質問をする(例:あなたなら、この状況をどのように処理しますか?どんなアイデアや行動をお勧めしますか?)

2.空間の作り方と必要な道具
・グループ数は無制限
・参加者が2人組や4人組で対面して作業できるスペース
・椅子とテーブル(なくてもいい)
・参加者が観察やインサイトを記録するための紙

3.参加の仕方
・グループの全員が参加する(多くの場合、ファシリテーターは参加しない)。
・誰もが平等に貢献する機会を持つ。

4.グループ編成の方法
・一人でスタートし、2人組、4人組、そして最終的にグループ全体となる。

5.ステップと時間配分
(1)質問形式で、共有された課題について個人が黙々と内省する(例:この課題を進展させるために、あなたはどんな機会があると思いますか?あなたならこの状況にどう対処しますか?どんなアイデアや行動をお勧めしますか?)1分
(2)内省から得たアイデアを基に、2人組でアイデアを出し合う。2分
(3)自分のペアのアイデアを4人組で共有し、発展させる(類似点と相違点に気付く)。4分
(4)"会話の中で目立ったアイデアは何ですか?"と尋ねる。各グループが重要なアイデアを1つずつ全員で共有する(必要に応じてこのサイクルを繰り返す)。5分

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 特に追加の説明が必要ないぐらいに簡明に書かれている。
 「4.グループ編成の方法」で明らかになるが、最初に1人でアイデアを考え、2人組、4人組、そして全体へとアイデアを出して絞り込みながら全員(ALL)へ共有するステップを指して「1-2-4-ALL」という名称が付いているのだろう。

実施にあたっての追記事項

 「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・一人ひとりが答えを探すことに取り組む。
・過剰な支援、過剰な管理-依存の悪循環を避ける。
・表現するための安全な空間を作り、力の差をなくす。
・沈黙の "会話 "を表現し、インプットの多様性を拡大する。
・表現する前に、観察力と洞察力の質を高める。
・合意や共有された理解に向かって自然に構築する。

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 安全性を高めた上で、まずは一人一人にしっかりと考えてもらい、そこから出てくるアイデアを平等に扱うというところがポイントである。
 それによって集団全体としてのアイデアの多様性や洞察の質を高めるとともに、参加者一人一人が参加できている気持ちを高めることから、そこでなされた理解や結論にもコミットしやすくなることも重要だ(自分が不当に軽く扱われていると感じたら、結論の良し悪しを客観的に判断できなくなる)。

コツとワナ
・ペアで会話する前に、静かに自分を振り返ることをしっかりと促進する。
・黙想の間、全員に自分の考えを書き留めるように頼む。
・転換を知らせるためにベルを使用する。
・正確なタイミングを守り、必要であればもう1ラウンド行う。
・大人数のグループでの「全員参加」では、共有するアイデアの数を3つか4つに絞る。
・大人数の場合、共有されなかったアウトプットを記録するために、ファシリテーターやハーベスター(共有を促す人)を利用する。
・各グループに1つのインサイトを共有するよう促すが、すでに共有されているインサイトを繰り返さないようにする。
・グループ全体の議論からアイデアの創出を分離し、保護する。
・判断を遅らせ、アイデアを視覚化する。
・停滞期に入ったら、別の表現方法に切り替える(例:即興劇、スケッチ、ストーリー)。
・グループ全体で、一人だけが話すというルールを守る。
・深さが足りなかった場合は、2周目を行って!

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 この手法の落とし穴についてである。
 特に「優れたアイデアが全体に共有されない(色々考えさせた上で最後に全体に共有するアイデアはグループで1つ)」と「アイデアが出なくなる(話し合うけどアイデアの発展性がなくなる)」というところに注意を払った方が良さそうだ。
 前者について、発表されなかったアイデアを記録・回収していくハーベスターという役割を置くのはなるほどと感じる。それを大きな会場に張り出し参加者全員で見る時間を取ることは非常に有効そうだ。後者について、別の表現方法を取るというのは面白そうだが、やり方の教示法に熟練が必要そうだ。

繰り返し方とバリエーション
・グループから得られたインサイトを図式化し、記録する。
・ラウンド2、3ではポストイット・ノートを使用。
・「デザイン・ストーリーボード」、「即興劇プロトタイピング」、「エコサイクル・プランニング」とリンクさせる。
・4人グループから8人グループへ、コンセンサスを意識しながら進める。同僚のLiz Rykertはこれを「オクトパス」と呼んでいます。

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「即興劇プロトタイピング」については以下のNoteで紹介している。

 「デザイン・ストーリーボード」、「エコサイクルプランニング」もLSである。また改めて紹介してみたい。

 事例
・スピーチやプレゼンテーションの後、"Any questions?" と聴衆に尋ねるのではなく、豊かなフィードバック(質問、コメント、アイデア)を得ることが重要な場合に使用します。
・ある管理職のグループは、1-2-4-Allを2ラウンド使って、あまり刺激的でない週次会議を再設計しました。
・会議のトピックが発表された後に始まる自然発生的な会話に対して。
・問題やイノベーションの機会に取り組むために招集されたグループに。
・機能不全に陥ったり、行き詰ったりした議論を再開させるために。
・リーダーが人々に何を考え、(しばしば無意識のうちに)何をすべきかを「指示」する代わりに。
・リーダーに過度に影響されがちなグループに。
・1-2-4-Allを合併の意思決定管理に使用したCraig Yeatmanの話、"皆を巻き込んだ重大な意思決定を簡単にする"を読んでください。

”LS Menu 1. 1-2-4-all”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 Craig Yeatmanの話は、LSのホームページの「現場の物語(Field stories)」の中にインタビュー形式で収録されている。
 大きな意思決定の際に、誰かが代表でプレゼンテーションをするのではなく、参加者に資料を先読みしてもらって「1-2-4-ALL」を使って話し合った方が全員が満足する意思決定ができ、関係性も改善するような場になったということが述べられている。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドと比べ、「1-2-4-ALL」では、実施の時間設定が短いことがまず目に入る。上記の標準的なやり方においては、1ラウンド終わらせるのに12分となっている(実際にはやり方の教示やグループ移動を考えるともう少し長くなるだろう)。
 この点については、基礎演習を別途済ませ、ブロックを最小セットのWEKにしておくことで、問いに対するモデルの製作2分、第1回シェア2分(2人組で行う)、第2回シェア4分(4人組)、全体への共有5分とすれば同じぐらいのテンポで進められそうだ。
 モデルが表現する全体的な主張に目を向けてもらい、部分表現に対する質問などは最低限に済ませることでスピードを確保するという方法もワークの目的次第では有効な方法になるだろう。もちろん、スピード重視によって失われてしまう良さもあると思うので、その点には注意しなければならないのは間違いない。

 また、「1-2-4-ALL」では、他の人にアイデアを話していく中で、各自のアイデアを共有するだけでなく、どんどんアイデアを発展させていくという要素が入っている。レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでも、アイデア(作品)の共有のなかで、本人が作り変えるのであれば、質問や他の人の話などを通じて発展させていくというやり方があってもいいかもしれない。
 また共有モデルも、ペアとなる2人で作るということから始めるのも一つの選択肢としてありそうだ(レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで2人で共有モデルを作るという事例はあまり聞いたことがない)。
 その後、2人のペアを2組あつめ4人ひと組にさせ、さらに大きな共有モデルを作ってみるということである。参加者同士間で、モデル表現の理解の食い違いに気をつけなければいけないが、いきなり4人もしくは8人で共有モデルを作るのとどのような違いが出るのだろうか。さらに、その話し合いで見えてきた修正点も参加者の合意のもとでブロックで追加で表現できるとしたら、よりダイナミックでアイデアに富んだ対話の場がつくれるかもしれない。この点については、この記事を書いている時点では、思考実験の範囲を出ていないのでどこかで実験的に試してみたいところである。

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