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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(25)著名人インタビュー

 今回取り上げるのは「著名人インタビュー(Celebrity Interview)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 大勢の人々が、リーダーや専門家(有名人)と一人の人間としてつながり、その人がどのように課題に取り組んでいるのか、そのニュアンスを把握することができるようになります。うまく設計されたインタビューでは、受動的で退屈なプレゼンテーションになりがちなものを、エンターテイメント性があり、貴重な知識を与え、理性、感情、倫理、道徳のあらゆるダイナミクスを明らかにする個人的な物語に変えることができるのです。また、参加者グループの想像力を刺激し、結束力のある行動を促すために必要なあらゆる要素を引き出すことで、インタビューを行動へのきっかけとすることも可能です。

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 誰かの経験をプレゼンテーションや一方的なトークではなく、 会場を巻き込んで学びを高め、その後の行動へとつなげていくところに狙いがあるということである。

5つの構造要素

1.始め方
・著名人に、形式的なプレゼンやスピーチをやめてもらい、カジュアルな「トークショー」形式で、みんなの気になる質問に答えてもらう。
・有名人の背後にいる人も含めて著名人の話にグループメンバーに耳を傾けさせ、同僚と一緒に質問を書き留めるように促す。
2.空間の作り方と必要な道具
・インタビュアーと著名人は、誰もが見聞きできる部屋の前方にいる(ラペルマイク、バースツール、またはリビングルームの家具を推奨)。
・人数制限のないスペースで、座ってインタビューを鑑賞し、後で小グループを作ることができるようにする(劇場型の座席でOK)。
・75×125mmのカードで、「1-2-4」で発生した質問を集めることができるようにする。
3.参加の仕方
・第1部 インタビュー:誰にでも平等に聴く機会がある。
・第2部 質問:全員が平等に、質問を立てるために互いに関わる機会を持つことができる。
4.グループ編成の方法
・インタビューに答えるときは全体で。
・個人、ペア、小グループで「1-2-4」で質問を発生させる。
5.ステップと時間配分
・インタビュアーが歓迎の意を表し、著名人や話題の人物を紹介する。3分
・インタビュアーは観客が期待するような質問をします(ユーモアと重厚さの両方が適切です)。15~30分
・参加者に「1-2-4」の会話で追加の質問を出してもらい、75×125インチのカードに書いてもらう。5〜10分
・インタビュアーがカードを選別し、パターンを探し、有名人に追加の質問をする。5〜10分
・インタビュアーは最後にコメントをし、有名人にお礼を言う。1分

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 手順を見る限り、ポイントは「1-2-4」を使って参加者同士が意見を交換させたうえで、良い質問を引き出すことにありそうだ。「1-2-4」はLSのひとつである「1-2-4-ALL」についての以下の記事を参照してほしい。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・専門家やリーダーと聴衆とのつながりを作る、または高める。
・トピックに実質と深みを与える。
・退屈な講義やパワーポイントによるプレゼンテーションを避ける。
・一人ひとりが、さらなる探求のための質問を生み出す。
・役職や専門知の背景にいる人に光を当てる。
・インタビューで出てきたストーリーで大きな考え方を引き出す。

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 その人が知っている知識以上に、その背景にある哲学や人格に光を当てることによって、インタビューされる人と聴衆を心で結びつけていくというところにも気をつけたい。

コツとワナ
・スタート時の質問としては、以下のような順序が良いでしょう。「この仕事で最初にインスピレーションを受けたものは何ですか?」「この仕事において、何があなたの課題ですか?」「この仕事を続けている理由は何ですか?」「この仕事で私たちに何が起こることを望みますか?」
・質問は事前に有名人に渡しておく。
・可能であれば、事前に参加者に背景となる資料を送付する。
・イントロダクションをミニレクチャーにしないこと。
・ インタビューでの質問は、些細なことや簡単に答えられるようなものであってはならない。
・インタビュアーは、コンセプトを説明するエピソードや具体的な内容を繰り返し尋ねること。
・インタビュアーは、著名人に 「なぜ○○はあなた(大きな組織やシステムではなく)にとって重要なのですか?」と尋ねることがあります。

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 興味深いインタビューは、ライブ感があってその場で様々な質問が生まれているような印象を受けるが、それを支えているのは入念な事前準備にあるということを忘れてはならない。

繰り返し方とバリエーション
・トークショーのジャンルのいろいろなものを楽しむ:Oprah Winfreyや、Stephen Colbert、またはあなたの好きな有名人のインタビュアーにチャンネルを合わせてください。
・インタビュアーは事前にリサーチを行い、参加者に「知りたいけどあえて聞かないことは何ですか?」「この人やこれからの仕事について、一番知りたいことは何ですか?」と質問します。
・インタビューの構成には、ストーリー・テリングのテンプレートを使う(例:英雄の旅)。
・戦略セッションの場合は、次のように問いかけて課題を深堀りする。「創造的な適応を必要とすることが、私たちの周りで起こっているのか?」「何もしないとどうなるのか?」「私たちの目的を考えると、今、何が可能だと思われますか?」「もし昨夜、現在の戦略が消滅してしまったとしたら、今日、どのような部分を復活させますか?」
・バーチャルなグループで使用する。音声/ビデオインタビューを行いながら、他の参加者全員にペアやグループで質問やコメントを練ってもらいます。インタビューが終了したら、チャット機能で「全員」に上位の質問を共有します。
・「ユーザー体験フィッシュボウル」、「オープン・スペース・テクノロジー」、「DAD」、「あなたからほしいもの」と連動させる。

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 第一番目のOprah Winfreyや、Stephen Colbertはアメリカの有名なトークショーの司会者である。人の話や魅力を引き出すトーク番組の司会者がどのような質問をどのようなタイミングで出しているのかを観察するのは、ファシリテーションに限らず大きな学びになりそうだ。
 合わせていろいろな質問の形を意識して収集していくことも有効だろう。

 ストーリー・テリングによく使われるフレームを当てはめるというのは、質問の力を高めるのに役に立つだろう。ここで例に挙げられている「英雄の旅」は、スターウォーズや指輪物語などにも活用されているという人々を惹きつける映画のシナリオ作りにも活かされている。

 「ユーザー体験フィッシュボウル」、「DAD」もLSである。どちらも人々から話を引き出し共有する方法であるため、この「著名人インタビュー」との組み合わせは有効だろう。この2つのLSについては詳しくは以下の記事で扱っている。

 最後の項目にある「オープン・スペース・テクノロジー」、「あなたからほしいもの」もLSであるが、またの機会に紹介したい。

事例
・新しい取り組みの立ち上げに貢献するリーダーや指導者のために。
・組織に入ってくる新しいリーダーを歓迎し、知り合うため。
・専門家の貢献を個性化し、深化させるために。
・重要なイベントで数名の参加者の体験を要約するために。
・事例研究プレゼンテーションの代わりとして:インタビュアーは、分析の下にあるストーリーや地域の背景を蘇らせるのに役立ちます。

”LS Menu 22. Celebrity Interview”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 人々の体験や考えを聞く、さまざまな機会で活用ができそうである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは、100-100の会議(全員が等しく考えを出して参加する会議)を目指している。そのため、誰か特定の人に焦点を絞ることはない。
 しかし、特定の人から集中して考え方を引き出して自分の糧にしたいということは多くの人が普通に抱いている気持ちであるだろう。そこで、焦点を当てたい人にモデルを作ってもらい、時間をかけていろいろと質問しながら考えを引き出すという方法をとることも考えられる。単にその人が知っていることにとどまらず、その背後にあるより大きな考えや底に沈んで考えを支える哲学や世界観を表現してもらうために、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは最適だからである。

 「ユーザー体験フィッシュボウル」の記事のときにも述べたが、体験の濃度に応じてグループを分けるという考え方も条件次第では採用することを考えておくことが重要だろう。

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