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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(23)デザイン・ストーリーボード〜基本バージョン

 今回取り上げるのは「デザイン・ストーリーボード(Design StoryBoards)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

 この「デザイン・ストーリーボード」というLSの解説には「基本」と「上級」のバージョンが用意されている。今回は「基本」のバージョンを扱っていく。

この方法で何ができるか?

 機能不全に陥る会議の最も一般的な原因は、目的の不明確さまたは共通の目的の欠如、時間の浪費、参加制限、声の不在、集団思考(グループ・シンク)、参加者の不満であり、これらを解消することができます。ストーリーボードをデザインするプロセスは、目的を引き出し、それと一致した小さな構造とマッチングすることでより明確にします。それは、成功する実施のために誰が含まれる必要があるかを明らかにします。ストーリーボードは、目的を達成するために必要な、始め方、空間の設定、準備物、参加のさせ方、グループ構成、ファシリテーション、時間配分などの小さな要素をすべて慎重に定義するようデザイン参加者を誘います。ストーリーボードは、明確なデザインなしにミーティングを始めたり、運営したりすることを防ぐことができます。優れたデザインは、暗黙の了解や潜在的なイノベーションの源泉を明らかにし、期待以上の結果をもたらします。

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「デザイン・ストーリーボード」はLSを組み合わせて大きなワークショップを作るための手法と位置付けられる。参加者が他のワークショップのファシリテーター側になることが想定されているときに特に有効だと思われる。

 また、完成した「ストーリーボード」があると他の項目も理解しやすいだろうと思われるので、以下にサンプルを示す。

ストーリーボードのサンプル。
”LS Menu 21. Design StoryBoards”にあったものを翻訳の上、一部修正して作成したもの。

5つの構造要素

1.始め方
・デザインチーム(グループ内の代表となる小集団)を招待し、目的を達成するために参加者がどのように相互作用するかについて、視覚的な合図を含む詳細な計画を作成させることを伝える。
2.空間の作り方と必要な道具
・紙が貼られた大きく開かれた壁またはフリップチャート。
・50mmX100mmほどのポストイットおよび/またはリベレーティング・ストラクチャーのカードセット。
・白紙のストーリーボード。
3.参加の仕方
・会議の設計と企画に関わったすべての人に、平等に貢献する機会を与える。
4.グループ編成の方法
・以下の各ステップにおいて、1-2-All または 1-All を高速サイクルで行う。
5.ステップと時間配分
・一緒に仕事をする目的を明確にする(必要に応じて「9つのなぜ」を使用する)。2~5分
・このセッションで通常使用する標準的なアプローチまたは小さな仕組みを説明し(通常誰が参加するかを含む)、それが明示された目的を達成する上でどのように成功し、失敗したかを評価する。5分~10分
・必要であれば、目的の記述を再検討し、強化する。2分~5分
・誰が参加する必要があるか、再検討し、決定する。2分~5分
・目的を達成するための代替的な小さな仕組み(従来のやり方とリベレーティング・ストラクチャーの両方)をブレイン・ストーミングする。目的が1つのステップで達成することができるかどうか検討する。定められない場合、最初のステップの目的は何でなければならないかを定める。最初のステップのみを続ける。5~10分
・目的を達成するのに最適なLSを決定し、1つ(+予備)を選択する。2分~10分
・会議への招待者とファシリテーターを決定する。決定したことはすべて白紙のストーリーボードに記入する。2分~10分
・デザインを評価するために使用する質問とプロセスを決定する(例:「デザインは望ましい結果を達成しましたか?」「グループは生産的な方法で一緒に仕事をしましたか?」何か新しいことが可能になりましたか?」「『3つのW』を使ってまとめてみてください」)2~5分
・複数のステップが必要な場合、デザインチームと協議し、上級デザインストーリーボードで作業するためのミーティングを手配する。5分~10分

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

4.グループ編成の方法」にでてくる「1-2-All」「1-All」はリベレーティング・ストラクチャー(LS)のひとつである「1-2-4-ALL」の改変バージョンである。1-2-4-ALLについては以下のNoteで紹介している。

 また、「5.ステップと時間配分」にでてくる「9つのなぜ」と「3つのW」もLSである。こちらについては以下の記事で紹介している。

 これらの他にも、一通り主要なLSについて知っていないと、理想的なストーリーボードを組み上げるのは難しい(カードセットを見ただけでは十分かどうかの判断がつかない)ので、そこがこのLS活用の一つの鍵になりそうである。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・全員が明確な目的を持つようにする。
・会議での作業を生産的にし、全員が楽しめるようにする。
・全員に貢献する機会を与える。
・参加者間の相乗効果を高める。
・デザインプロセスを可視化することで、参加者全員が自分の役割を見つけることができる。
・現状の弱点を明らかにし、そこからステップアップする。
・イノベーションのためのあらゆる知識の源(形式的、暗黙的、潜在的)を利用する。

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正した。

 イノベーションのための知識の源の「形式的」「暗黙的」「潜在的」は、「形式的」は言葉で語られる知識、「暗黙的」は言葉で語れないがわかっている感覚がある知識、「潜在的」は共同で何かを行ったりする時にその場で作り出される知識(スポーツのチームプレイや即興劇など)というように考えておけばよい。

コツとワナ
・高速での反復を奨励し、真剣に想像力を働かせ、デザインを繰り返し、深める。
・最低限、2人組(もう1組の目や耳があると本当に助かる)または少人数のグループで作業を行う。
・アイコンやスケッチを使って、共通の理解や実行可能なアイデアを素早く開発する。
・(「3つのW」で)デザインの報告会を必ず行う。
・良いデザインを生み出すために必要な時間をケチらないでください。良いデザインは、それを作るのにかかった時間よりもはるかに多くの無駄な会議時間を減らすことができます。悪いデザインは、フラストレーションを生み出します。

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正した。

 最後の「良いデザインを生み出すために必要な時間をケチらない」ことは私の個人的経験から言っても、非常に大切で、繰り返し打ち合わせやテストプレイをできる範囲ですることが重要だ。

繰り返し方とバリエーション
・同じ手法で、現在の実践について見た通り観察した内容を図にする。
・円グラフを使って、デザインのゴールとフローを明らかにするとともにバランスをとる。

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正した。

 第1項目の訳文がわかりにくいが、事前のデザインだけでなく、後の報告や記録のためのまとめとして「デザイン・ストーリーボード」を活用するということである。

事例
・あらゆる種類の経営会議に。
・プロジェクトのレビューに。
・クラスルームのセッションに。
・ブレイン・ストーミングのセッションに。
・ 1対1でのミーティングに。
・ある会議のための学習セッションの計画をした事例:第3部の「現場からの声」の「崩壊した児童福祉制度を修復する」をご覧ください。

”LS Menu 21. Design StoryBoards”より。DeepLで翻訳し一部修正した。

 LSを当てはめることにこだわらず、「達成したいことは何か」「そのためにはどのような方法をとるか」「その方法を選択した理由は」などの問いをしっかりと当てはめて全体のバランスをとれば、ここにあるように応用の範囲は大きく広がりそうである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 まずは、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのワークショップを設計する時にも、この「デザイン・ストーリーボード」の考え方をそのまま使うことができる。
 ストーリーボード内のLSの部分に、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの「応用テクニック」を当てはめればよい。

 このようなストーリーボードを繰り返し作ることで、全体の流れをイメージし、進行のバランスをチェックできる。また事後報告や事例共有においても、デザイン・ストーリーボードの考え方でまとめれば、自分の実践に対する振り返りもしやすいだろう。

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