今回取り上げるのは「生成的な関係へ STAR(Generative Relationships STAR)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
文中の「STARコンパスツール」を中心とするLSである。そのツールは以下のような図を使う。
この図のように4つの評価軸(頭文字をとってSTARとなる)で自分たちのグループがどのような状態にあるのかを診断する(赤い丸が診断結果)。そこから改善の道を探り行動プランにまでもっていく。
5つの構造要素
4つの評価軸(STAR)のそれぞれについて、参加者にしっかりと最初の段階で説明することが重要となる。
また、グループの評価に対して同調圧力がかかりすぎないように、まずは個人で評価し、その後に意見を共有しながら全体としての合意を作っていくという点も欠かせない。このときの「1-2-4」はリベレーティング・ストラクチャーである「1-2-4-All」のアレンジ版である。このLSについては以下の記事で扱っている。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
自分(たち)のことを客観的に診断し、改善することは思っている以上に難しい。それを乗り越えてこそチームパフォーマンスが上がる土壌を作ることができるということである。
自己評価に関しては、悪い評価になるほど「そんなはずはない」「評価そのものが間違っているのでは」という防衛本能が働きやすい(実際に評価する側に問題があるときもあるのでやっかいだ)。そのときに、判断留保をするというのは一つの知恵である。これは参加者だけでなく、ファシリテーターとしても心構えとして持っておかねばならない。
ここにあるように原因が解明した後も大事である。具体的に改善の手段を持っていないと「大事だと意識する」程度で終わることになり、行動につながらず分析の意味がなくなってしまうことも少なくない。その意味で、ここで紹介されている分析と行動をつなぐLSを使えるようになっておくことが望ましい。
ここで名前が出ているLSのうち、別の記事で紹介しているものは以下のとおりである。
まずは「分離」の程度が低い場合にそれをより高める(お互いの違いを浮立たせて多様性を作り出す)ものとして紹介されているLSとしては以下の記事を読んでほしい。
つぎに、「調整」の状態が悪い時に使うことができるLSは以下の通り。
なお、「合意-確信マトリックス」については機会を改めて紹介したい。
続いて、「行動」の低さを改善したい場合には以下のLSがある。
最後に、共に働く「理由」が不明確な場合のために以下のLSがある。
これらのLSを場合によってうまく選択し、より大きな改善効果を目指したい。
主に関係性の分析をすることから、チームや少人数の活動にフォーカスを当てたいときに使うことが想定されている。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドではいろいろな事象を扱うことができるが、その中でも関係性の分析はもっとも得意な領域である。なぜなら、メソッドの中で作られるモデルは、基本的にシステム的な説明を表現したモデルであり、システムの理解には要素だけでなく要素間の関係性が含まれるからである。さらにいえば、そのモデルを使って相互に説明をしてもらうことになるが、そこでの語りは基本的に参加者が事象に対して感じているストーリーである。そして、ストーリーもまたさまざまな要素が時間と共にある関係性の中で動くことを描写したものなのである。すなわち、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにおける作られるモデルと語られるストーリーには関係性が自然と織り込まれているのである。
このシステムとしてのモデルを作ってもらうということの中には、STARのような評価軸はない。しかし逆に、関係性の質をそれらの軸にとらわれずに参加者に表現してもらうことができる点に強みがあるといえる。すなわち見る幅が広い。
もちろん、表現で出される幅が広いということは、それらを総合し分析するには時間がかかることを意味する。
応用技術でいうとモデルをテーブルの上に配置して関係性を表現する「ランドスケープ」という方法を使ったり、関係性そのものをブロックや連結パーツで表現してもう「コネクション」という方法を使う。学びは大きいが時間もかかるので、その方法を取ることができないケースも考えられる。
そのときには、モデルを作った後、STARの枠組みにはめて収束を簡単にするという方法もあるだろう。より具体的には、参加者が作った自分たちのチームのモデルを4つの観点で採点してもらったり、大きなコンパスチャート(この記事の冒頭の「この方法で何ができるか」の中で示した図)を用意して、その上にモデルを配置してみることなどがあげられる。
また、このLSでは、現在の関係性の分析が主であり、今後の関係性がどう展開していくかという条件変化の検討はあまり意識されていない。レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、想像力を使った「プレイ」に強みがあるので、そのような条件変化による影響まで分析したい時にはレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを採用する利点が大きくなるといえるだろう。