今回取り上げるのは「エコサイクル・プランニング(Ecocycle Planning)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
このLSで使われる「エコサイクル」は、活動分析の前提となっている一つの枠組みである。
4つの活動は4つの段階と2つの罠に位置付けられ、組織や個人の活動がどの段階にあるかに当てはめることによって、必要とされるリーダーのタイプ(ネットワークを作る人・起業家・マネジャー・異端者という表記がそれにあたる)や先の段階に進むための打ち手を議論するということになる。
5つの構造要素
大きく、「エコサイクル」に合わせて現実の活動を当てはめることを前半で行い、後半は問題のありかと対策を考えるという構成になっている。
「エコサイクル」のどの場所に現在の活動が位置するかについて、意見が割れるケースが想定されるため、リベレーティング・ストラクチャーの「1-2-4-ALL」を使って集約していく。
「1-2-4-ALL」については以下の記事にまとめてある。
対策については、特に「貧困の罠」と「硬直の罠」に着目させることを中心に進められることになる。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
この項目からは、組織は同時に様々な問題を抱えていることが前提となっていることがわかる。そこで何に力を入れるべきかについて合意をとるための分析枠組みが「エコサイクル」ということになる。
最初の項目にもあるように、「エコサイクル」で分類しても、より多くの活動を同時に扱おうとしたら、分析の難易度が跳ね上がる。ファシリテーターや参加者のこのフレームでの習熟度をよく見ながら進めていくという点が最も重要なポイントになりそうだ。
最後に紹介されているBrenda Zimmerman教授の著書は以下から購入できる。残念ながら日本語訳はされていないようであるが、複雑系の知見をわかりやすく紹介しているようだ。
組織活動はステークホルダーを巻き込んで進むため、彼らを呼んで一緒にこの「エコサイクル・プランニング」のセッションができれば、よりよい結果になることは容易に想像がつく。そうなるとステークホルダーをこの場に呼び寄せることができるかどうかはセッションのアウトプットを左右するポイントの一つになりそうだ。
LSのひとつである「私があなたに望むこと(WINFY)」は、分析ができたあとに、必要な対策をお互いに明確に伝えるための文化づくりに役立つ。そのやり方の詳細は以下の記事を参考にしてほしい。
LSのひとつである「オープンスペース・テクノロジー」は、解決すべき問題がたくさん見えてきたときに、参加者が手分けをして対策を考えていくときに役に立つ。詳しくは以下の記事で扱っている。
2項目目で紹介されている「パナーキー」については機会を改めて紹介したい。
また、LSのひとつで、創造的破壊の思考を促進するための「TRIZ」については以下の記事で扱っている。「TRIZ」が扱う、逆に失敗を考えさせるというアプローチは「硬直の罠」を脱するのに一役買いそうだ。
LSのひとつである「3つのW」「25/10クラウド・ソーシング」はワークで考えたことを要約し、行動へと接続するために役にたつ。後者は行動の選択肢がたくさん出そうな場合に、その絞り込みのときに使う。これらのLSはそれぞれ以下の記事で扱っている。
ここの事例で挙げられていることをみても、広範囲なケースに適応できそうだ。特に、同時並行的に色々なことが進行している組織においては強力なツールになるだろう。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
この「エコサイクル・プランニング」では、組織の中で起こっている様々な活動と問題を分析するときに、その問題について参加者に素直かつ実直にピックアップしてもらうことが前提となる。その組織が抱える文化やステークホルダーとの関係次第では、その「素直さ」「実直さ」という態度になれないことがある。
そのような場合には(万能ではないが)、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドが効果を発揮するだろう。モデルを作ることで、今の活動の問題を浮かび上がらせるのである。
一方、「エコサイクル」のように活動を4類型に分類するような考え方はレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにはないので、組み合わせるときには、組織の「状況」をモデルで作ってもらった上に、大きく印刷したマップの上に配置するようなワークになるだろう。
配置された組織の「状況」をどのように次の段階へと進化させていくかの「アクションプラン」についても、モデルで表現してもらうことが考えられる。そのプランは他の「状況」(組織には色々な活動や段階があるので)にどのような影響を与えるのか、関係性などもチューブ型のパーツで連結させて表現できる。
あるプランは別の状況を同時に改善する「一石二鳥」型の取り組みかもしれない。逆に、あるプランは他の状況のブレーキになるかもしれないということが、つながりを可視化することでより明確に検討できるのである。