今回取り上げるのは「9つのなぜ(Nine Whys)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
この方法を使うことで、参加者間であいまいになっていたり、バラバラになっている目的をすりあわせて皆の気持ちを一つにすることができるというLSである。
5つの構造要素
ポイントとしては、基本は相互にペアで「なぜ?」を効果的に織り交ぜながら、インタビューをして、その後「1-2-4-ALL」のLSと同じように共有の範囲を広げるということである。
また、「なぜ?」を問う際に「より深い答えを優しく探す」というところも大事で、「なぜ?」が圧迫感に結びつくとそこから逃げようと、その場しのぎの答えを繰り返してしまう可能性があるからだ。この点については、ステップを踏むだけではどうにもならないので全体を進めるときに注意が必要そうである。
なお「1-2-4-ALL」については以下の記事にまとめている。
実施にあたっての追記事項
「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
その場で仲間感覚を作るだけではなく、ワークが進むなかで参加者が「これはうまく行っているか」と確かめるための進行評価の基準を作るという点にも注目して導入したい。
「なぜ?」を単調にぶつけるだけでは、早晩行き詰まってしまうイメージがあるため、上記のアドバイスは大変有益である。
特に、尋ね方に変化をつける技術はいろいろなところで役に立ちそうだ。
ここでも「コツとワナ」に続き、さまざまな工夫が紹介されている。
問いが文脈(ビジネスとかコミュニティとか)で変化するということは気をつけておきたい。
また、さまざまな回答を集めて逆三角形に整理して貼って行く方法は、どこまで自分たちが深く内省できているかについて視覚化する良い方法だと感じた。加えて、最終的に「目的文」の作成も絡めれば、それだけで一つの完結したワークショップになりそうだ。
「賢い群衆」と「3つのW〜何があった?、それが何なの?、今からどうする?」については以下のNoteで紹介している。
他のLSである「目的から実践へ」「生成的な関係性」などについては、改めて紹介することにしたい。
上記では、他のLSと組み合わせて使う事例が散見される。「問い」に関するLSだけに組み合わせの仕方もいろいろと考えられそうだ。
「トロイカ・コンサルティング」については以下のNoteで紹介している。
「デザイン・ストーリーボード」などのLSについては、改めて紹介したい。
リベレーティング・クエスチョン
この「9つの理由」では、「リベレーティング・クエスチョン」と題された問いの階層を図式化した資料もついている。
こちらも日本語にざっと訳してみたのでここに掲載しておきたい。よくまとまっていると思う。確かに、このような問いの階層を意識しておくことはいろいろな場面で役立ちそうだ。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
まずレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで最も「なぜ?なぜ?」がファシリテーターから出されることが推奨されている場面がある。それは「リアルタイム・ストラテジー」での「出来事のプレイ」における判断の正しさを検証する場面である。
私自身、実際にしてみて、「なぜ?」を繰り返して参加者が良いインサイトを得られるようにするのはなかなか難しいと感じていた。
今回、この「9つのなぜ」のことを見て行く中で、それだけでは反応が良くない場合には、優しく深く潜って行くイメージで「なぜ?」を問うたり、「リベレーティング・クエスチョン」の構造を意識して、事実(What)の確認から徐々に理由(Why)に近づいて行くように、問いの表現の変化をつけるという工夫もできるなと感じた。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、最初に共通の問いが一つ出され、それに答えるように各人が内省を深めながらモデルを作る。このモデルを作るときには、この「9つのなぜ」のようにペアで行うことは基本的にない。そこに、この「9つのなぜ」のエッセンスを取り込むのであれば、モデルを作る人自身が「なぜ」を意識してモデルを作りながら「なぜ」を自分に問いかけ、さらに表現を深めてもらうように導かねばならない。
また、「出来事のプレイ」以外でも、レゴ®︎シリアスプレイ®︎のワークショップのクオリティを上げるために、この「9つのなぜ」はいろいろと活用できそうだ。
例えば、標準的なレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのコア・プロセスのうち、モデルを作ってその説明をしてもらうときにも、「9つのなぜ」を取り込むチャンスがある。作品を見ながら大事な部分に「なぜ?」を投げかけたり、次のように問うてみてはどうだろうか。
「全体の中で最も中核となる大切な表現はどれなのか」
「あなたにとって最も大事なことはどこに表れているか」
「もっとも大事なブロックの底にもう一つブロックが埋まっているとしたら、それは何を意味しているか」
また、同じ問いに対して各参加者のモデルを持ち寄って、お互いのモデルの関係性について探る「ランドスケープ」のテクニックのときにこの「なぜ?」を意識し、「What」「How」「Why」が見えてくる逆三角形の配置を推奨するという方法はあるかもしれない。
同じようなWhyを意識した構造化としてはサイモン・シネックの「ゴールデン・サークル」がある。こちらはWhyを中心とした同心円であるが、逆三角形のほうがやや並べやすいだろうか(ゴールデン・サークルは情報整理を目的としたフレームではないので当然と言えば当然ではある)。
「ゴールデン・サークル」については以下から本人による講演がある。
サイモン・シネック『優れたリーダーはどうやって行動を促すか』【日本語字幕完全版】 - YouTube
ワークショップの全体的な問いの構成を設計するときに、WhyーHowーWhatの関係性に沿って組むのは、有効な場合が多いと思われる。