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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(9)15%での解決策

 今回取り上げるのは「15%での解決策」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 どんなに小さくても、誰もがすぐにできるアクションを明らかにすることができます。少なくとも、これらは勢いを生み出し、大きな違いを生むかもしれません。「15%での解決策」は、待ちぼうけになったり、無力感を感じたり、恐れを抱いたりする必要はないことを示します。人々がレベルアップするのを助けます。個人もグループも、変えられないことではなく、自分の裁量でできることに目を向けるようになるのです。とてもシンプルな質問で、何ができるかということに話を向けることができ、前もって知り得ない場所に広くちらばっている大きな問題群への解決策を見出すことができます。数粒の砂を動かすことが地滑りの引き金となり、全体の景色を変えてしまうかもしれないのです。

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「15%」は、ある人が物事に対して自分が影響力を与えられる程度や範囲である。残りの85%は自分の力ではどうにもならないと、しっかりと理解できており、この15%で全体を変えていこうと工夫する人こそが成功するという考え方を反映している。自分の力だけで100%を変えようとする試みは失敗する運命にあるともいえる。

 そうすると、ちょうど梃子を使って大きなものを動かすように、15%の力を使って全体を動かす知恵をだそうというのがこのLSの根っこにある。「15%での解決策」という訳語もそれをふまえてつけた。

 なお、この「15%」が大事だという主張はGareth Morgan教授が唱えたものであるといわれる。以下から彼の論文を読むことができる。

https://www.researchgate.net/publication/266795502_Morgan_G_and_Zohar_A_1998_The_15_approach_quantum_change_incrementally_Holland_Management_Review_53_pp_14-25

5つの構造要素

1.始め方
・個人的な課題やグループの課題に関連して「あなたの15%とは何ですか。あなたには、どこで行動する裁量や自由がありますか。より多くのリソースや権限がなくてもできることは何ですか。」と問いかける。
2.空間の作り方と必要な道具
・グループの数は無制限。
・2~4人のグループで座るための椅子、テーブルは必要ありません。
3.参加の仕方
・全員が参加する。
・誰もが平等に貢献する機会を持つ。
4.グループ編成の方法
・まず一人で。
・次にペアや小グループで。
5.ステップと時間配分
・まず一人で、各自が 15% の解決策のリストを作成する。5 分
・小グループ(2~4人)で、各自が考えた案を共有する。1人あたり3分
・グループメンバー同士で相談(明確な質問とアドバイス)。1人あたり5~7分

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 進め方はシンプルだが、先の「この方法で何ができるか」で述べた基本的な考え方をどこまで参加者にうまく説明できるかが大事だと思われる。

 よい15%に至るには、単に「自分にできること」を考えるのだけは不十分だといえそうだ。小さいが全体を大きく動かしていく取り組みの重要性と、できれば理解しやすいケースを紹介できることが大事になるだろう。

 また、「明確な質問とアドバイス」とあるが、ここも「15%」の意味を踏まえて行うことが欠かせない。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・閉塞感、ネガティビズム、無力感から脱却する。
・個人と集団の力を発見してもらう。
・ボトムアップの解決策を明らかにする。
・実行可能なアイデアを共有し、互いに助け合う。
・信頼関係を構築する。
・未使用の能力と資源を思い出す(15%ならいつでも手に入れることができる)。
・無駄を省く。
・分かっていることとやっていることとのギャップをなくす。

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 組織を健全にするには、自分の影響力を過信(100%で動かそうとする)してもいけないし、過小評価して無力感に陥ってもいけない。特にこの追記では、後者に陥る可能性を心配しており、多くの人に勇気を与えることを重視しているようだ。

コツとワナ
・各項目をチェックして、個人の裁量の範囲内であることを確認する。
・バタフライ効果で大きなものが出てくることに備えよ。
・車輪の再発明もOK。
・15% ソリューションは、何が可能かをより理解させる。
・明確な共通の目的と境界線があれば、多くの15%ソリューションに一貫性が生まれる
・会議で15%ソリューションを求めることを日課にする(そうしないと15%ソリューションは気づかれず、見落とされがちである)。
・アイデアを紹介しながら、ある個人が行った小さな変化が大きな結果をもたらしたというストーリーを話す。
・このコンセプトを広めたGareth Morgan教授は、www.imaginiz.com/index.html の挑発的なアイデア(Provocative Ideas)というコーナーで詳しく説明しています。

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 どれも重要だと感じるが、理解を促すストーリーは特に重要だと思われる。

 なお、最後で紹介されているWebページは、2023年2月2日現在、残念ながらアクセスすることができない。

 繰り返し方とバリエーション
・「トロイカ・コンサルティング」、「賢い群衆」、「オープンスペース・テクノロジー」、「援助のヒューリスティクス」、「統合された〜自律性」と自然にフィットします。
・グループに戻って「最近、あなたの15%で何をしましたか」と尋ねることができます。

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「トロイカ・コンサルティング」については次のNoteで紹介している。

 「賢い群衆」については以下のNoteで紹介している。

「オープンスペース・テクノロジー」「援助のヒューリスティクス」「統合された〜自律性」もLSであるが、改めて紹介したい。

事例
・問題解決や計画立案の際に、個人にイニシアチブをとってもらいたい場合に。
・オープンスペースのセッションで、招集者の報告書に記載することをつくるために。
・成功のために多くの人が変化する必要があるような課題のために。
・成功の小さな「塊」を生み出し、それを組み合わせて簡単で安価にテストできるプロトタイプ(雑なプロトタイプ)を作成する場合。

”LS Menu 7. 15% Solutions”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 事例では、多くの人たちの背中を押し、行動を促すような場面での利用を推奨しているように見える。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 「自分からできることを考えよう」というのは簡単だが、「小さくても、やる価値がある」と思わせるのは必ずしも簡単ではない。人々の思考が前者ではなく後者とうつるには、全体の状況や相互の関係を視覚化することが必要だ。つまり、小さなアクションが全体を動かすことがイメージできる必要がある

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、全体の状況や相互の関係を視覚化するのに大変優れたツールである。以下の写真のようなつながりを作り、どのような取り組みが何を引き起こすのかを共有するワークは、まさに「15%での解決策」ワークショップといえるだろう。

 ただし、それをするには時間がかかる(時間をかける価値は十分にあるが、それを理解し踏み込む組織はそうは多くない)。
 次善策とはなるが、その問題を克服するために、ある人の小さな取り組みが大きな変化を起こすことについて理解してもらうためのケース紹介が重要だろう。

 多くのワークショップでは最後に「明日から何をするか」を締めくくりにするため、「15%での解決策」ワークショップと銘打たなくても、小さな行動が大きな変化を起こすことを意識させ、そのような思考を促す有効なケースを知っておくことの重要性は変わらない。

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