今回取り上げるのは「15%での解決策」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
「15%」は、ある人が物事に対して自分が影響力を与えられる程度や範囲である。残りの85%は自分の力ではどうにもならないと、しっかりと理解できており、この15%で全体を変えていこうと工夫する人こそが成功するという考え方を反映している。自分の力だけで100%を変えようとする試みは失敗する運命にあるともいえる。
そうすると、ちょうど梃子を使って大きなものを動かすように、15%の力を使って全体を動かす知恵をだそうというのがこのLSの根っこにある。「15%での解決策」という訳語もそれをふまえてつけた。
なお、この「15%」が大事だという主張はGareth Morgan教授が唱えたものであるといわれる。以下から彼の論文を読むことができる。
https://www.researchgate.net/publication/266795502_Morgan_G_and_Zohar_A_1998_The_15_approach_quantum_change_incrementally_Holland_Management_Review_53_pp_14-25
5つの構造要素
進め方はシンプルだが、先の「この方法で何ができるか」で述べた基本的な考え方をどこまで参加者にうまく説明できるかが大事だと思われる。
よい15%に至るには、単に「自分にできること」を考えるのだけは不十分だといえそうだ。小さいが全体を大きく動かしていく取り組みの重要性と、できれば理解しやすいケースを紹介できることが大事になるだろう。
また、「明確な質問とアドバイス」とあるが、ここも「15%」の意味を踏まえて行うことが欠かせない。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
組織を健全にするには、自分の影響力を過信(100%で動かそうとする)してもいけないし、過小評価して無力感に陥ってもいけない。特にこの追記では、後者に陥る可能性を心配しており、多くの人に勇気を与えることを重視しているようだ。
どれも重要だと感じるが、理解を促すストーリーは特に重要だと思われる。
なお、最後で紹介されているWebページは、2023年2月2日現在、残念ながらアクセスすることができない。
「トロイカ・コンサルティング」については次のNoteで紹介している。
「賢い群衆」については以下のNoteで紹介している。
「オープンスペース・テクノロジー」「援助のヒューリスティクス」「統合された〜自律性」もLSであるが、改めて紹介したい。
事例では、多くの人たちの背中を押し、行動を促すような場面での利用を推奨しているように見える。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
「自分からできることを考えよう」というのは簡単だが、「小さくても、やる価値がある」と思わせるのは必ずしも簡単ではない。人々の思考が前者ではなく後者とうつるには、全体の状況や相互の関係を視覚化することが必要だ。つまり、小さなアクションが全体を動かすことがイメージできる必要がある。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは、全体の状況や相互の関係を視覚化するのに大変優れたツールである。以下の写真のようなつながりを作り、どのような取り組みが何を引き起こすのかを共有するワークは、まさに「15%での解決策」ワークショップといえるだろう。
ただし、それをするには時間がかかる(時間をかける価値は十分にあるが、それを理解し踏み込む組織はそうは多くない)。
次善策とはなるが、その問題を克服するために、ある人の小さな取り組みが大きな変化を起こすことについて理解してもらうためのケース紹介が重要だろう。
多くのワークショップでは最後に「明日から何をするか」を締めくくりにするため、「15%での解決策」ワークショップと銘打たなくても、小さな行動が大きな変化を起こすことを意識させ、そのような思考を促す有効なケースを知っておくことの重要性は変わらない。