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THE GAZETTEを読む(53)2022年12月号 出現した未来から導く

 本記事は、ラスムセン・コンサルティングが発行しているメールマガジンTHE GAZETTEのバックナンバーを、日本語訳をしながら、コメントを加えながら読んでいくシリーズの一つである。レゴ®︎シリアスプレイ®︎(LSP)のファシリテーター・トレーニング修了者向けに書いている。
 この記事の引用元原文はこちらのURLから確認することができる。

 LEGO SERIOUS PLAYのファシリテーター・トレーニングを担当する際、私はよく受講者に「U理論」を知っているかどうか尋ねるのですが、オットー・シャーマーと彼の変革のコンセプトについて知っている人があまりに少ないことにいつも驚かされます。
 2007年、ドイツ生まれのシャーマーは、MITの講師として、世界のリーダーシップを解き放つカギを見つけたと信じていました。『Theory U: Leading from the Future as It Emerges』が出版されると、世界のオピニオンリーダーやビジネスの第一人者たちの多くが、これに同意しました。デンマークを代表する経営学者であるスティーン・ヒルデブラント教授は、このU理論を「経営と組織の分野において、この10年で最も重要な本」と絶賛しています。
 シャーマーは、トム・ピータース、バックミンスター・フラー、老子、カール・ユングなどの専門家や世界中の150人以上の社会的リーダーへのインタビューをもとに「U理論」を開発しました。彼は、真のリーダーシップとは、状況や可能性を全体の外側から思い描くことができる心の状態であり、未来と現在が航路のようなパターンで織り成されている、ほとんど幽体離脱のような経験であると気づいたのです。

THE GAZETTE 2022年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 「U理論」は、本書の日本語訳をはじめ、入門書もいくつか出版されている。

 まずは、本編である。

 本編がかなりのボリュームで、少し理論の骨格がわかりにくい方には、ポイントがよく整理されたエッセンシャル版がある。

 著者以外による入門書では、翻訳にも携わっている中土井氏の著作がわかりやすい。

 そして、こちらは、『U理論』の続編にあたる本でU理論を使ってどう世界を変えていけるかについて描いている。前著のU理論を読まずに、書いてあることを理解するのはなかなか難しい本である。

 第2版の日本語訳が2017年に出て、絶版にならずに、日本でも販売が続いているということからも、一定数の支持があることは間違いないだろうが、その広がりはかなりゆっくりで、「U理論」の名前を知らないという人が多いというのは、日本でもあまり変わらないだろう。

未来を創造することは、過去を繰り返さないことである

 『U理論』出版以前も以後も、ほとんどの経営理論は、過去の経験に基づいています。シャーマーは「世界の偉大な経営成果は、過去を繰り返すことにあるのではない。それは、未来を創造することである。それこそが、起業家、イノベーター、クリエイティブな人々の仕事なのだ 」と言います。
気候変動問題、貧困問題、健康問題など、「U理論」が取り組むシステム的でグローバルな課題は、シャーマーの画期的な理論が発表された当時よりも、さらに顕著になっています。アルバート・アインシュタインの言葉にあるように、「問題を作ったときと同じような考え方では、問題を解決することはできない 」ということです。

THE GAZETTE 2022年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 現代が、ますます未来を創造することが求められる時代になっていることに賛同する人は多いだろう。
 そして、ポイントは、過去の繰り返しから脱することにあるということも、賛同する人は多いのではないか。

問題解決のための習慣化された方法を打ち壊す

 「U理論」のプロセスには、(1)観察、(2)内省、(3)テストと調整という3つの段階があります。「観察」の段階では、即断即決を避け、オープンマインドを心がけます。そして、システム外で人びとにインタビューをします。そして、一歩下がって、じっくりと考えるのが「内省」の段階です。シャーマーの言葉を借りれば、「新しい選択と道に対して、心を開く必要がある」のです。そして、3番目の「テストと調整」の段階が最も重要です。抵抗や批判を覚悟で、失敗も覚悟します。このフェーズでは、ラピッドプロトタイピングを行い、そこから得た知識から学び、テストを繰り返していきます。
 LEGO SERIOUS PLAYのワークショップに参加した多くの人が、このプロセスが習慣的な考え方や問題解決の方法から脱却するのに役立っているとコメントしています。チームがLSPプロセスを使って問題解決をするとき、シャーマー氏が言うように、それはほとんど幽体離脱のような体験です。その瞬間の感情に縛られることなく、別の未来の道筋を見ることができるのです。これは「U理論」の提唱者が言う瞑想状態に似ていて、より確実に同じ状態を作り出せると私は考えています。

THE GAZETTE 2022年12月号をDeepLで翻訳・筆者が修正

 知らずのうちに自分自身に染み込んだ考え(習慣的思考)に対する「観察」「内省」「テストと調整」という3つの段階は、それぞれレゴシリアスプレイによって促進される。
 自分の考えについてのモデルを作ることによって「観察」がしやすくなり、参加者同士でモデルに問いかけることによって「内省」が深まる。
 そして、その考えをどう変えれば新たな考えに至るかについてモデルを動かしてみるというプレイが「テストと調整」に重なる。うまくいかないこともあるが、机上のプレイにはトライし失敗できるという特権がある。
 さらに、U理論では、これらの一連のプロセスのうち特に「観察」と「内省」は「瞑想状態」に近い感覚で進めることが望ましいとされる。これは、レゴシリアスプレイにおいてはファシリテーションのポイントである「フロー状態」に持っていくという点に重なる。
 「フロー状態」については、以下に関連する記事を上げておく。

 まとめると、レゴシリアスプレイメソッドのファシリテーションは、U理論のプロセスを意識することで、より変革の力をあげることができるといえよう。

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