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変革型シナリオ・プランニングをレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでサポートする

 社会変革に関するファシリテーションで、世界的に実績を積み上げている人物として必ず名前があがるのが、アダム・カヘンである。

 彼による上記の著作では、その手法を「変革型シナリオ・プランニング」として名づけ、さまざまなケースと共にそのやり方を紹介している。
 この手法は以下の5つのステップから構成されている。

①システム全体からチームを招集する
②何が起きているか観察する
③何が起こりうるかについてストーリーを作成する
④何ができ、何をなさねばならないか発見する
⑤システムの変革を目指して行動する

アダム・カヘン『社会変革のシナリオ・プランニング』

 このステップの進め方の根底には「システム思考」があり、とりわけオットー・シャーマーのU理論に影響を受けている。まず、結論を急がず、行動も急がずに保留して現状がどうなっているのかを観察することが最大のポイントであるという。問題ある状況にある(アダム・カヘンの力を借りたいと思うぐらい)人々は、自らの理解の正しさを問う余裕もなく、問題解決を解決しようと焦って行動をとってしまうため、それが問題をますます悪化させてしまうのである。

現状の把握をサポートする

 この現状の把握については、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドをつかうことで、その人が感じている問題をそのまま表現させることで大きく貢献できる。実際に注釈(第4章13番)ではあるがアダム・カヘン本人が優れた手法としてレゴ®︎シリアスプレイ®︎を挙げている。

 現状を把握するのに優れた手法であるならば、何が起こるのかについてもレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドは有効であるはずだ。実際に、現状を表現した作品同士を連結させ、さまざまな変化をシミュレーションする、リアルタイム・ストラテジーという手法が存在する。
 この手法は、最低でも2日間ぐらいは必要なため、実施される機会は決して多くないが、アダム・カヘンのワークショップの実例をみると3日間ぐらいはワークショップにかけている例は多く、しかもシナリオ作成のために繰り返し行なっている(それだけ予算と向かい合う問題が大きいと当事者が感じているのだろう)。
 それだけの時間が確保できるならば、リアルタイム・ストラテジーは非常に大きな成果を確実に出すことができる。

リアルタイム・ストラテジーのために組まれたシステムの例。
モデルが相互に連結されているため、影響力の伝播をシミュレーションでき、
一貫性をもって変化を把握することができる。

シナリオの作成をサポートする

 現状をシステムとしてブロックで表現することがしっかりとできたなら、その後に検討する、未来に起こりうるシナリオも作りやすくなる。ここでもレゴ®︎シリアスプレイ®︎は貢献できそうだ。

 アダム・カヘンは、優れたシナリオである条件として(A)「現状に関連している」(B)「現状認識や固定観念に一石を投じる」(C)「現実味がある」(D)「明確である」と述べている。
 このうち、(A)と(D)は、ブロックで表現されたシステムを動かすことでシナリオを表現すれば自然と満たされる。なので「現実味がある」「現状認識や固定観念に一石を投じるような」シナリオは何かを考えていけばよい。

 シナリオの生み出し方としては、シナリオの根底にある変化を生み出す「不確実性の高い(2つのどちらに転ぶかわからない)」要因を先に定める演繹法と、たくさんのシナリオを考えていくつかに絞り込む帰納法がある。

 それらをレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで探求していくと、次のようになるだろう(以下は一例、もっと良い問いかけもあるだろう)。

 演繹法の場合には、「現状に大きなインパクトをもたらす、かつどちらに転ぶかわからない現状の世界の選択肢は何か」という問いで作品を作り、意見を交換し、作品相互の関係を考察しながら、統合して2つの作品に集約していく。

 帰納法の場合には、「今後起こりうる最善の出来事は何か」と「起こりうる最悪の出来事は何か」という作品を参加者にそれぞれ作ってもらい、テーブルの上で配置を考える方法が考えられる。平面のテーブルでの配置を探っていけば、自然と並びの「軸」が浮かび上がってくる。シナリオ整理のポイントになりそうだ。

シナリオの検証と行動変革をサポートする

 さらに上記で作ったシナリオは、最初に作ったブロックのシステム・モデルに反映して動かして検証することができる。システムのモデルは相互に連結しているので、シナリオに合わせてどこかを動かすと、他への影響も視覚的に確かめることができる。
 こうした目の前で作品の要素が動く体験は、ワークの参加者に「どのシナリオを実現するために自分達に何ができるか」を考えさせ、現実世界の行動を変えるための大きなきっかけを与えることができる。

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