今回取り上げるのは「会話カフェ(Conversation Café)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
何らかのテーマについて、お互いに立場を横に置いてオープンに意見を交わし合うということはあまりにも基本的なことである。その一方でそう簡単ではないことをこのLSの存在が思い出させる。
5つの構造要素
「トーキング・オブジェクト」は、その場において誰に発言権があるかを明示するための道具で、基本的には何を使っても良い。手渡ししやすいような棒や柔らかいボールを使うことが多い。
また、「6つの合意事項」は以下のような事項である。人数が多い場ではこのようなものを示す(参加者に復唱させる)ことが効果的な手法である。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
ここでいう「カタルシス」とは心の中にあるネガティブな感情を吐き出すことである。テーマが深刻なものであればあるほど、不安や弱さを曝け出すことができる状態が重要だ。心が解放され良い方向にお互いの思考が前を向いていくようにしたい。
会話のテーマを少し変えて発想を刺激する「意地悪な問いかけ」はLSの一つである。以下のNoteで解説している。
「テーブルクロス」は机に大きな紙を敷き、そこに参加者に印象に残ったことを直接メモ的に書き込ませる手法である。
会場全体で、参加者の学びやどのようなことが話題になったかなどを手軽に振り返ることにも使うことができる。
最後のwww.conversationcafe.orgは英語のサイトであるが、具体的に会話カフェを進めるための情報がたくさん詰め込まれている。
「会話カフェ」は全体的に問題解決のアクション決めというよりも、その問題についての意識や理解の共有という側面が強い。そのため、問題解決のアクションまで含めたいということであれば、他の問題解決のアクションを導くLSを使った方がいいということである。
なお、LSである「3つのW」「15%での解決策」については以下の記事で紹介している。
「デザイン・ストーリーボード」「ユーザー体験フィッシュボウル」または「オープン・スペーステクノロジー」もLSの一つであるが、機会を改めて紹介したい。
事例からは「大きな変化」を私たちが体験したときに使うべきLSであるということである。このブログを執筆している時点では、「新型コロナ」「ロシアのウクライナ侵攻」「異常気象の頻発」などがテーマとしたふさわしいだろう。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使うワークでも、この「会話カフェ」が狙っている「感じていること」「考えていること」のオープンな交流を力強く促進することができる。
また、「会話カフェ」の発言の平等性を支える大きな要素である「トーキング・オブジェクト」を使わなくても、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは手元にあるモデルがその代わりとなる。そして、「問い」に対する単なる情報整理を超えて、自分の気持ちや信念なども自然とモデルに反映され、さらに自分で確認できることもレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの強みとなる。
逆に「会話カフェ」から参考になるのは、意見交換を性質の違う4つのラウンドに分けている点である。それに合わせて、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにもラウンドを持ち込むと以下のようになるだろう。
(1)各自が作ったモデルについて順番に説明する。
(2)全員の説明を聞いて感じたこと、考えたことを順番に話す。
(3)お互いのモデルの比較や関係性についてオープンに意見交換をする。
(4)全体を振り返り気づいたことについて一人ずつ話す。
個人的な経験から言うと(2)は私も時々入れる仕掛けで、問題を自分ごとにするためにかなり効果的であると感じる(データ的に検証はしていない)。人数にもよるがグループの構成人数x1分ぐらいでできるので時間対効果はかなり高いので積極的に入れてみたい。
このうち、(3)をモデルの比較や関係性を配置(ランドスケープ・テクニックと呼ばれるものがレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドには存在する)表現するのでもいいし、モデル同士をパーツを使って連結させてみてもいい(こちらについてもコネクション・テクニックと呼ばれるものがある)。
どちらもそれなりに時間はかかってしまうが、より問題の姿を全員が納得する形で整理することができる。
実際のワークでは時間や人数などいろいろな制約が存在するため、すべての場合に導入できるわけではないだろうが、「ラウンド」という観点から進行方向を見直すことでファシリテーターとして新たな工夫の余地を作ることができるだろう。