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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(19)会話カフェ

 今回取り上げるのは「会話カフェ(Conversation Café)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 混乱や衝撃的な出来事を理解し、新しい戦略を生み出すための土台を作るために、何人もの人を巻き込んでいくことができます。会話カフェの形式は、議論や口論を少なくし、より傾聴することで、人々が落ち着いて深い会話をすることを助けます。円卓に座り、簡単な取り決めと話すための道具を持ち、小グループは非生産的な衝突をほとんどすることなく、何度も対話を行います。課題の意味が明らかになるにつれて、新たな行動への能力が解放され、合意された直感が形成されます。

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 何らかのテーマについて、お互いに立場を横に置いてオープンに意見を交わし合うということはあまりにも基本的なことである。その一方でそう簡単ではないことをこのLSの存在が思い出させる。

5つの構造要素

1.始め方
・参加者全員が小グループに分かれ、お互いの考えを聞き、共通の課題について一緒に考えるよう誘い入れる。
2.空間の作り方と必要な道具
・小さなテーブルを囲む5~7脚の椅子を無制限に用意する。
・話すための道具(例:トーキングスティック、石、アートオブジェなど)。
・マーカーとフリップチャート紙(1~2枚)(任意)。
3.参加の仕方
・全員が参加する。
・誰もが平等に貢献する機会がある。
4.グループ編成の方法
・5~7名の多様な参加者による混成グループ
5.ステップと時間配分
・通常、質問の形で、会話のテーマを述べる。
・各テーブルで、トーキング・オブジェクトを使った最初の第1・2ラウンド、オープンな会話としての第3ラウンド、トーキング・オブジェクトを使った最終ラウンドの計4ラウンドの会話があることを説明する。各ラウンドの所要時間を伝える。
・トーキング・オブジェクトを配布する。
・会話カフェの6つの合意事項を読む。
・各テーブルの誰かにホストとして志願してもらう。ホストの役割は、参加者が6つの取り決めのいずれかを守らないことが目に見えてわかる場合のみ、優しく介入することである(最も多いのは、延々と話し続けることである)。
・トーキング・オブジェクトを使った第1ラウンド:各自がテーマやトピックについて考え、感じ、行っていることを共有する。1人あたり1分
・トーキング・オブジェクトを使った第2ラウンド:各自がテーブルの全員の話を聞いた後に、考えや感情を共有する。1人あたり1分
・第3ラウンド:オープントーク(トーキング・オブジェクトを使用するオプション)。20〜40分
・トーキング・オブジェクトを使った第4ラウンド:各メンバーが 「持ち帰り」を共有する。5〜10分

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「トーキング・オブジェクト」は、その場において誰に発言権があるかを明示するための道具で、基本的には何を使っても良い。手渡ししやすいような棒や柔らかいボールを使うことが多い。

 また、「6つの合意事項」は以下のような事項である。人数が多い場ではこのようなものを示す(参加者に復唱させる)ことが効果的な手法である。

合意事項
①できる限り断定しない
②互いを尊重する
③説得するのではなく、理解しようとする
④多様な意見を求め、尊重する
⑤個人的な心情や意味をあることを話す
⑥くどくど話さず、正直で深みのある話をする

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・複雑で困難な、または苦痛を伴う状況を理解し、次に進むための土台を作る。
・新しいアイデアを生み出し、イノベーションを推進する。
・人々がどのように異なる視点や考えを持つようになるかについて、共通の理解を得る。
・理解不足に基づく論争を避ける。
・信頼関係を築き、カタルシスの機会で恐怖心を軽減する。
・会話には話すことと聞くことが含まれることを参加者に理解してもらう。

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 ここでいう「カタルシス」とは心の中にあるネガティブな感情を吐き出すことである。テーマが深刻なものであればあるほど、不安や弱さを曝け出すことができる状態が重要だ。心が解放され良い方向にお互いの思考が前を向いていくようにしたい。

コツとワナ
・常にトーキング・オブジェクトを使用する:それは違いをもたらす。
・最初のラウンドを始める前に、ホストまたは参加者に6つの合意事項を読み直してもらう。
・課題を与えない:対話が直接行動につながることを意図してはならない。
・ディナー・パーティーのように、参加者全員が参加できるようにする。
・「意地悪な問いかけ」を使って会話を深める。
・ 問題があれば、「私たちは合意事項を守っていますか?」と尋ねる。
・自分の考えを話すように促す。
・静かな人に話すように促す。
・参加者にとって象徴的な意味を持つトーキング・オブジェクトを選択する。
・参加者に「テーブルクロス」というフリップチャートに洞察を描いたり、記録したりするよう促す。
・Vicki Robinとその仲間たちが、コミュニティで使える会話カフェを作ったので、もっと詳しく知りたい方は、www.conversationcafe.orgへ。

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 会話のテーマを少し変えて発想を刺激する「意地悪な問いかけ」はLSの一つである。以下のNoteで解説している。

 「テーブルクロス」は机に大きな紙を敷き、そこに参加者に印象に残ったことを直接メモ的に書き込ませる手法である。
 会場全体で、参加者の学びやどのようなことが話題になったかなどを手軽に振り返ることにも使うことができる。

 最後のwww.conversationcafe.orgは英語のサイトであるが、具体的に会話カフェを進めるための情報がたくさん詰め込まれている。

 繰り返し方とバリエーション
・各テーブルの1人を除く参加者は、20分ごとに別のテーブルに移動できる ワールドカフェスタイル(詳しくはwww.worldcafe.com を参照)をとる。
・グラフィック・レコーディングにつなげる。各テーブルにフリップチャート紙を置き、各グループからの洞察を収集する。絵を描いたり、遊び心で探検することを奨励する。
・アクションに移すには、「3つのW」「15%での解決策」「デザイン・ストーリーボード」「ユーザー体験フィッシュボウル」または「オープンスペーステクノロジー」と連動させるとよいでしょう。

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「会話カフェ」は全体的に問題解決のアクション決めというよりも、その問題についての意識や理解の共有という側面が強い。そのため、問題解決のアクションまで含めたいということであれば、他の問題解決のアクションを導くLSを使った方がいいということである。

 なお、LSである「3つのW」「15%での解決策」については以下の記事で紹介している。

 「デザイン・ストーリーボード」「ユーザー体験フィッシュボウル」または「オープン・スペーステクノロジー」もLSの一つであるが、機会を改めて紹介したい。

事例
・市場や事業環境における大きな後退や衝撃を理解し、そこから回復を始めるために(例:9.11後の米国コミュニティで最初に使用された)。
・よく理解されていない新しい話題や傾向を探るため。
・強い感情を表すようなテーマを扱う場合に。
・大きな変化の後の振り返りに。それは何を意味するのか?どのような仮定を立てることができるのか?どのような結論になるのか?今、私たちは何を信じることができるのか?

”LS Menu 17. Conversation Café”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 事例からは「大きな変化」を私たちが体験したときに使うべきLSであるということである。このブログを執筆している時点では、「新型コロナ」「ロシアのウクライナ侵攻」「異常気象の頻発」などがテーマとしたふさわしいだろう。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使うワークでも、この「会話カフェ」が狙っている「感じていること」「考えていること」のオープンな交流を力強く促進することができる。

 また、「会話カフェ」の発言の平等性を支える大きな要素である「トーキング・オブジェクト」を使わなくても、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドでは手元にあるモデルがその代わりとなる。そして、「問い」に対する単なる情報整理を超えて、自分の気持ちや信念なども自然とモデルに反映され、さらに自分で確認できることもレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドの強みとなる。

 逆に「会話カフェ」から参考になるのは、意見交換を性質の違う4つのラウンドに分けている点である。それに合わせて、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドにもラウンドを持ち込むと以下のようになるだろう。

 (1)各自が作ったモデルについて順番に説明する。
 (2)全員の説明を聞いて感じたこと、考えたことを順番に話す。
 (3)お互いのモデルの比較や関係性についてオープンに意見交換をする。
 (4)全体を振り返り気づいたことについて一人ずつ話す。

 個人的な経験から言うと(2)は私も時々入れる仕掛けで、問題を自分ごとにするためにかなり効果的であると感じる(データ的に検証はしていない)。人数にもよるがグループの構成人数x1分ぐらいでできるので時間対効果はかなり高いので積極的に入れてみたい。

 このうち、(3)をモデルの比較や関係性を配置(ランドスケープ・テクニックと呼ばれるものがレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドには存在する)表現するのでもいいし、モデル同士をパーツを使って連結させてみてもいい(こちらについてもコネクション・テクニックと呼ばれるものがある)。
 どちらもそれなりに時間はかかってしまうが、より問題の姿を全員が納得する形で整理することができる。

 実際のワークでは時間や人数などいろいろな制約が存在するため、すべての場合に導入できるわけではないだろうが、「ラウンド」という観点から進行方向を見直すことでファシリテーターとして新たな工夫の余地を作ることができるだろう。

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