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リベレーティング・ストラクチャーとレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッド(26)ソーシャルネットワーク・ウェビング

 今回取り上げるのは「ソーシャルネットワーク・ウェビング(Social Network Webbing)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。

 リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はまず、こちらのNoteを読んでいただければと思います。

この方法で何ができるか?

 ソーシャル・ネットワーク・ウェビングは、グループ全体が、既存の人間関係のネットワークの中にどのようなリソースが隠されているのか、そしてそのリソースを活用するためにどのようなステップを踏めばよいのかを、素早く明らかにします。また、より強いつながりや新しいつながりを築くための機会も簡単に明らかにすることができます。包摂的アプローチは、グループ内の全員が同時にネットワークを可視化し、理解できるようにします。トップダウンで指示を受けるのではなく、より強力なネットワークを構築するために個人が積極的に取り組むことを奨励します。インフォーマルな、あるいは緩やかなつながりはー友達の友達であってさえー綿密な計画や大きな投資をしなくても、進歩に強力な影響を与えることができる方法で利用することができます。

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 「ウェビング・マップ」という言葉がある。マインド・マップに代表されるように、情報をつなげてつくった関連図である。この「ソーシャルネットワーク・ウェビング」では社会的なつながりに焦点を当てたウェビングマップ作りということになる。

5つの構造要素

1.始め方
・目的を共有したコアワーキンググループのメンバーを招き、ネットワークのマップを作成し、ネットワークの拡大・強化の方法を決定する。
・現在一緒に仕事をしている人、今後一緒に仕事をしたい人(目的達成のために必要な影響力や専門知識を持つ人)を挙げてもらう。
・ 目的を達成するために、ネットワーク・ウェブのつながりを「織る」ように誘う。
2.空間の作り方と必要な道具
・長く開けた壁面に紙や複数のフリップチャートを設置。
・5×5cmほどの付箋(8色以上)
・太字の黒ペン(シャープペンなど)
3.参加の仕方
・中核となる作業グループまたは計画策定グループに関わるすべての人が含まれる。
・誰もが平等に貢献できる機会を持つ。
4.グループ編成の方法
・「1-2-4-All」で、すべての重要なグループの名前を出します。
・みんなでネットワークに入る人の名前を出し合い、マップを構築する。
5.ステップと時間配分
・目的を達成するために必要なネットワーク内の主要なグループのカテゴリーをつくり、それぞれに付箋の色またはシンボルを割り当てる。5分
・中核グループのメンバーは全員、自分の名前を付箋にはっきりと書く。付箋は壁の中央にまとめて置く。5分
・中核グループのメンバー全員に、「この仕事で活躍している人はどんな人が知っていますか?」と聞く。それぞれの名前を書いた付箋を作成するように伝える。各デザイングループのメンバーとの距離に応じて、付箋を並べるよう指示する。10分
・中核グループのメンバー全員に、「この作品に参加させたい人は他にいますか?」と尋ねる。ブレインストーミングを行い、参加させたい他の人たちの付箋を作成するように促す。付箋のマップを、中心部と周辺部の構造を持つウェブとして構築してもらう(実際の参加者と希望する参加者の広がりを模倣する)。このグループには、あなたの友人の友人も含まれるかもしれません。 網の目が広がるにつれて、新しいカテゴリーや色が必要になるかもしれません。10分
・中核グループに、一歩下がってもらい「誰が誰を知っているのか?」「誰が影響力と専門知識を持っているか?」「誰が進歩を阻むことができるか?」「誰が進歩を後押しできるのか?」を問う。その答えを、線で結んで説明してもらう。15分
・グループ内で、次のような戦略を立てるように指示する。1)新しい人を仕事に招き、引きつけ、「織り込む」、2)妨げを回避する、3)進歩を促進する。10分

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 ステップの最初となる、目的達成のためのグループの「カテゴリー」を作るというところが少しわかりにくいが、例えば、何かの商品開発プロジェクトなら、「業界の事情通」「アドバイザー」「調査が得意な人」「技術開発者」などの区分が挙げられるだろう。

 また「1-2-4-All」はLSの一つであり、その行い方については以下の記事にまとめてある。 

実施にあたっての追記事項

 ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。

なぜ その目的なのか?
・行動や結果に間接的かつ強力な影響を与えるインフォーマルなつながりを利用する。
・組織内外の境界を越えて、知識とイノベーションを普及させる。
・変革に向けた現場のオーナーシップとリーダーシップをより高める。
・つながりや「ブラックホール 」が見えるようにする。
・人々が自己組織化し、より粘り強くてちゃぶ台返しを吸収できるグループを開発するのを支援する。
・ポジティブな変化に向けて、バランスを取る。
・インフォーマルなソーシャルネットワークを活用し、人々に貢献するよう呼びかけることで、大きな予算や大規模な計画を立てることなく運営する。

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 活動において「インフォーマル」という部分つまり、何かの活動に正式に責任を負う人々以外のことに目を向けるという意識をつくるのに良い方法である。

 また「ブラックホール」という表現も興味深い。十分な説明がされていないが、文脈的には、アイデアや貢献が自然と集まっていくポイントを見極めるということだろうか。

コツとワナ
・物事を成し遂げる中核グループと、新しいアイデアや成長を加える多様な周辺部の育成に注力してもらう。 周辺部は友達の友達ネットワークにいることが多く、彼らは非常に役に立つかもしれません。
・将来的に誰を取り込みたいかを検討する際に、メンバーに壮大な夢を持つように促す。
・カテゴリーに10以上の機能またはグループを含めないでください。
・役職名ではなく、可能な限り人名を記載する。
・人を紡ぎ、つなぐとき、中核メンバーに小さく考えるよう伝える(例:ペア、小さな利害集団)。
・Smart Networksの共同設立者であるJune Holleyの詳細については、www.networkweaver.com でご確認ください。

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 最後のNetworkWeaverは、この「ソーシャルネットワーク・ウェビング」も含めて幅広くネットワーク作りのセミナーやワークショップを提供している団体のようである。

繰り返し方とバリエーション
・マップを頻繁に見返す:現在誰が関わっているか、成長のパターンをアップデートする。
・ソフトウェアでネットワークマップを作成し、より詳細な情報を提供する。
・「15%での解決策」、「デザイン・ストーリーボード」、「1-2-4-All」を使用して、ウェビングのセッションをフォローアップのアクションステップと一緒に紐付けする。

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 ここで作ったマップは、その後の状況変化によって変わっていく(アップデートが必要になる)ことが想定されるため、何らかの形で保存して更新できるような仕掛けが欲しいところではある。Miroのようなサービスとの相性は良さそうだ。

 ここでも指摘されているようにLSの一つである「15%での解決策」は、アクションの「何を」と「誰に(手伝ってもらって)」を結びつけるのに良さそうである。「15%での解決策」は以下の記事で扱っている。

 LSの一つでもある「デザイン・ストーリーボード」は、一連の問題解決活動の設計を行うものであるため、その活動に関する参加者の選定のほか、解決活動の1セッションへと組み込んでいくことにも良さそうである。このLSについては以下の記事で扱っている。

事例
・感染症の拡大防止に全員参加で取り組む病院のコアチームに対して。
・速攻開発コーチのグループが、現場のスタッフの間でスキルや手法を非公式に広めるために。
・金融機関のミドルマネジャーが、複数の市場で試作品を開発し、新製品を発売するために。
・多様な場面で政策から実践への取り組みを「翻訳」する州政府のリーダーに向けて。
・新しい技術の利用を拡大するために、アーリーアダプターが集まって、潜在的な新しいユーザーを特定するために、ネットワークの地図を作成した。

”LS Menu 23. Social Network Webbing”より。DeepLで翻訳し一部修正したもの。

 事例から見て、多様な人々を巻き込んで影響の幅を拡大しながら解決しなければならない問題との相性が良さそうである。

レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係

 自分たちがもっている社会的なネットワークは、常に活性化していて活用されているわけではない。単に「知り合い」程度にとどまっている関係が、現状の改善や解決のためのヒントになるということは、ネットワーク分析などの議論で古くから指摘されている。
 つまり、改めて自分たちのもっている社会的なつながりを見直して、可視化するということが、問題解決に有効である。

 そこで、レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドを使って手を動かして、どんな人たちが自分たちの状況改善のキーになるのかについて、存在をモデルで表現する(メソッドの中ではエージェントと呼ばれる)ことは有効だろう。エージェントを配置していく中で、空白を見て改めて知り合いを思い出したり、これから関係を築くべき相手に気づくという効果もありそうだ。

 また、関係性の表現についても、結びつきを表現するためのパーツを使うことでこの「ソーシャル・ネットワーク・ウェビング」に相当するワークを行うことができそうである。

 さらに、今回のLSのステップの中で、ネットワークがある程度明らかになってきた後半に「誰が進歩を阻むことができるか?」「誰が進歩を後押しできるのか?」という問いは、視覚化された自分たちとエージェントからなるネットワークのモデルに対しても有効であるだろう。まさに邪魔が入るシナリオと助けが来るシナリオで「プレイ」することで活動方針に対して大きな気づきが生まれるに違いない。


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