今回取り上げるのは「発見と行動のための対話(DAD:Discovery & Action Dialogue)」というリベレーティング・ストラクチャー(Liberating Structures: LS)である。
リベレーティング・ストラクチャーとは?という方はこちらのNoteを読んでいただければと思います。
この方法で何ができるか?
ここに書かれているように、参加者たちが改めて自ら問題を分析しなおし、今までとらなかった解決のための行動(良い意味での逸脱)を導き出すことを目的としたLSである。
5つの構造要素
このLSの一番のポイントは「始め方」にある(1)〜(7)の問いにある。この7つの問いがこのLSの全てといっても過言ではないくらいだ。この問いの順番を守って皆の声を反映させながら、検討を積み上げていくということである。
(2023.2.8追記)
この問いについて、裏にある狙いも含めて、より詳細な表が紹介されているので以下に日本語訳版を示しておく。
問い以外の進め方の説明は比較的、シンプル(その分、大雑把)であるが、ファシリテーションのコツについて紹介のページに「してはいけないこと・すべきこと」の表があるので、以下に日本語訳をつけておく。
実施にあたっての追記事項
ここでは「5つの構造要素」以外の項目を紹介する。
問題を解決するのは自分たちなのであり、自分たちで考えなければならない。そして自分たちの足元に解決につながる知恵が眠っているという考え方が感じられる。
最初の2つめの問いに対する指摘は重要で、問題を自分ごとの部分と他人にどう影響するかの部分に切り分けてそれぞれ考えていくことで問題が「自分ごと」になる。他のコツもいかに問題を「自分ごと」にさせるかというところに集中している。
「TRIZ」はLSの一つである。これについては以下の記事で紹介している。確かに、問いの立て方として参考になる。
また1対1のコーチングのような場にもそのまま持ち込めるということである。問いに沿って考えれば確かに1対1(一人でも)考えていけそうだ。
「即興劇プロトタイピング」については以下の記事で紹介している。問題が対人間のものであれば効果を発揮するだろう。
第3部「現場からの話」は事例集で、LSの公式ページの中のコンテンツとして15の事例が紹介されているが、そのうち2つがこのDADに関係している。どのような分野でも一定の成果が出そうな普遍的な問いがこのLSの中心となっているので使い勝手は良さそうだ。
レゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドとの関係
「始め方」の(1)〜(7)の問いは、問題の分析から解決までの流れができているのでレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドのワークでも応用できそうだ。そのまま少しずつモデルを作って加えていって、一つのテーブルに問題の構図と解決策を表現でするようなワークになりそうだ。
問いを中心としたLSになっているため、その進め方については特段の工夫がなく、結果として「このようなファシリテーションの手法を高いレベルで身につけるには練習が必要である」というコメントが「ワナ」の中に書かれている。この点についても、参加者がフロー(集中力が高まって創造的な思考が展開されやすい状態)に入って前のめりに参加しやすいようなプロセスが確立されているレゴ®︎シリアスプレイ®︎メソッドで行うメリットは大きそうだ(このLSで紹介されている標準時間よりもかかるので、そのこととのバランスを考える必要がある)。