北海道の農家さんの話
北海道は10月から猟期に入り、シカが獲れるとスマホに通知をいただくようになった。
猟師さん、毎日山に入ってバンバン銃を撃っている訳ではない。
銃の弾は高いし、何より彼らの多くは生活のための仕事を持っている。
猟師になるのに対してシンプルに最も因果関係が深いのは、農家さんだと思う。
ジビエとかそんなお洒落な名前が浸透する前から、不作の年に農作物を狙って山から下りてきてしまった野生動物を捕獲し、食べたり食べなかったりしていた。
例えばこれは、猟師の資格も持つ、夏の農家さんの話。
7月初め、北海道の田んぼには、虫を食べて元気に泳ぐ合鴨の姿。
田んぼの脇には、罠。
畑には、葉っぱをいっぱいに広げた食べごろの大根。
隣の畝(うね)に張ったビニールシートには、シカの足跡。
夏の猟師さんは、農作物と、合鴨を守って作業している。
乳牛農家に1か月滞在して干し草の上で昼寝をした経験のあるかばん屋(役には立たない)も、少しだけ体験させていただいた。
作業前にひと手間、鎌を研いでくださる。かばん屋も、朝の作業前に包丁を研ぐ。
切れない刃物は作業の効率が悪いし、危険だし、切れ味はいい方がいい。
この日やったのは、トマトのツルを紐で括って伸びる方向を誘導したり、ビニールシートを保護するための柵を畑に刺したり、地味で、でも明らかに収穫量を左右する大事な作業。
こういう細かな作業の技は、農家さん毎に家族で培ってきたノウハウがあり、必ずしも本やインターネットで学べるものではないらしい。
土や天候はその土地によって違うこともあるだろうし、持っている道具や人工(にんく)も違う。
正直に書くけれども、かばん屋は、半日もお手伝いしないうち音を上げて、田んぼの傍でお茶をいただいた。
あきれるジロウ先輩。ジロウ先輩は卵を産む鶏たちを守るべく、日夜、野生動物と戦ったり、昼寝をして過ごす農場のマスコット的存在。
なお、草刈りも骨の折れる作業だが、なんと草刈りを専門職とするヤギがお手伝いしている。
日が暮れると揃って夕食を食べて、お風呂に入って、寝る。
農作業の合間には収穫した作物を売りに行ったりして、夏の間、農家さんの生活にお休みらしいお休みの日は少ないのだと想像できる。
晴れたらその日は大忙しで野菜の世話をしないといけないし、これは北海道の夏だ。無駄にできない日差しだ。
猟、流行っていると言ってもいい位に、身近でその単語を聞くようになったのは、つい数年前からのように思う。
狩猟には、罠で行うにも免許が要る。都道府県には登録のための税金も払う。
特に銃での猟は日本ではかなり厳しく管理され、きちんと講習を受け、免許を更新した上でないと参加できない。
それでも猟をするのは、農林水産省がウェブページの名前を”higai”と銘打つ程に、農林水産業被害が深刻化・広域化しているのも一因と考えられる。
簡単に言うと、農家さんはシカの多さにとても困っている。
環境省の位置づけでは、狩猟は鳥獣の「保護管理」。
つまり、種の根絶を目指しているのではなくて、環境保護と野生動物の個体数の管理が目的。
管理と言うと偉そうに聞こえるかも知れないけれど、少し調べるとその理由が分かる。
昔、日本に猟師さんがたくさん居たころ、シカはたくさん捕獲されすぎて、絶滅の危機に瀕したことがあるのだ。
そして、「じゃあ獲るのをやめよう」となり、ここ数年は増えすぎている。
管理が必要だという声が出るのも、理解できる。
画像のポテトサラダはジャガイモのみが材料。本当に本当に美味しい。
農家さんの畑では、毎日の生活をかけて、手間をかけて、美味しい野菜が作られている。食べられている。
短い夏の恵み、イノシシやシカには、大事な野菜を掘り起こしたり横取りしたりを、遠慮して欲しいのだ。
おまけ、5月頃の合鴨の雛たちの様子。
夏には野生動物に食べられたりして数を少し減らしつつ、冒頭のように育つ。更に大きくなったらお役御免。狩猟で捕獲した野生動物同様、食用にもなる。
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