新型コロナと貧困女子(中村淳彦著)~自分だったら生きていられないかも
読み進めているうちに、リアル描写が次々と展開され、その人になってしまったかのようななんとも言えない重たさがしみわたってきて、自分だったらどうするのだろう、と思った。
「東京貧困女子。」(東洋経済新報社)「日本の貧困女子」(SB新書)「証言貧困女子」(宝島社)につづく貧困シリーズで、「東京貧困女子。」においては本屋大賞ノミネートまでされ、今なお売れ続けている。今回の書籍は今年2月ころからじわじわと日常に影響を及ぼしてきた新型コロナウィルスの大きな影響と打撃を受けた東京歌舞伎町を筆頭に、ネオン街に生きる貧困女性の悲痛な叫びの集大成だ。
著者の中村淳彦氏はつい数か月前の2月ころ、「平成の貧困は女性だったが令和は年功序列が逆転し中年男性が最下層に転落する」「おじさんはえらそうにするな」とYouTubeで声高に叫んでいた。
ところが3月に入って悲鳴をあげたのは平成の貧困女性だった。貧困に至るまでの原因は、非正規、シングルマザー、介護、高齢、ネカフェ、女子大生、搾取、とさまざまだ。セーフティーネットである風俗でもデフレが起こり、今回の新型コロナ騒動でもはや稼げない状態に陥り、もう明日のためのお金がない、という女性が一気に増えた。当然他の職種に至っても同じようなことは起こるが、彼女らより数か月のちに浮き上がってくるという。
3月からのいわゆるforbidden zoneに足を踏み入れてまで取材に徹した中村氏独特の「寡黙的取材術」は功を奏し、行ったことのない場所なのに、誰もいない歌舞伎町の赤いネオン街は文字と共にリアルに迫ってきたのだ。
自分だったらどうするのだろう。
自分だったら生きていられるのだろうか。
今回はただただそう思うだけであった。