パパ活女子(中村淳彦・著)
40代中年男性の、それも勝ち組といわれるひと握り以外の集団が、特に若い女性から忌嫌われていることが明らかになった。いや、世代全体として嫌われているかもしれない。
一方、視覚的に認識できることに「パパ活」が今、盛んなのだという。中年男性と若い女性という妙な取り合わせのカップルがあちこちであふれているそうだ。
嫌われている中年男性と嫌っている若い女性の組み合わせでデートをする、という見えているものは歪な構造であり、それはパパ活女子とパパをする男性が欲しいものの大きいズレがあることから起こる。パパ活女子と、パパ活のパパ、またパパ活の仲介業者を中村氏独特の寡黙的取材からパパ活のすべてが明らかにされた。
私が中村氏の著書で最初に読んだのは「崩壊する介護現場」(ベスト新書)だった。あまりにも突き刺さる後味に惹かれて、超気持ちわるかった「ルポ中年童貞」(幻冬舎新書)、「職業としての風俗嬢」(宝島社新書、勅使河原守共著)などを次々と読み漁った。
ロングセラーとなっている「東京貧困女子。」(東洋経済新報社)では、国策による女性の貧困状況を取材している。誰もが身近に迫る貧困は特に若い世代に多く、学生にまで至る。大学生の半数は奨学金を使っており、社会人になった途端、数百万円の借金を背負う時代だ。
生活の困窮から女性が風俗に走ることは知られている。しかし今や売春でも援交でもない「パパ活」は、医療職や国家資格をもつような一般的な就労女性にとって副業のような位置になっている状況だ。売春でも援交でもない「パパ活」、未成年者を対象としないので犯罪ではない。ゆえ、政府が提示した自助になるという。
正直言って今の日本はどうなっているんだろう、と思う。50代で専業主婦の私には「パパ活」は全く縁がなく、周囲にもそういう空気はない。多分、同年代の女性ならほぼ似たようなことだろうと思う中、次世代やその下の世代の女性には「パパ活」は蔓延しつつあるという現状。中村氏の示す、そうなる経緯を読めば納得はしても、世界が違いすぎる。
世界の違いを知るか知らないかは、大事に至る。若い世代の貧困率の高さは、今後の日本を思うと、暗い影を落とすことになるのは間違いない。