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放送作家はボツ企画製造マシーン。恥ずかしがらずにどんどん企画を出して行く。放送作家 竹村武司のとがった企画論。
5月にスタートした「企画でメシを食っていく2019」。第7回目は「テレビの企画」。放送作家の竹村武司(たけむらたけし)さんをお迎えします。
竹村武司(たけむら たけし)
1978年生まれ。大学卒業後広告代理店を経て、放送作家に。『山田孝之の東京都北区赤羽』『山田孝之のカンヌ映画祭』『山田孝之の元気を送るテレビ』『植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之』など、山田孝之の出演作品を手掛ける。現在はその他、ドラマ『サ道』の脚本、『キッチン戦隊クックルン』のアニメ脚本、『BAZOOKA!!!』『天才てれびくんYOU』『世界さまぁ〜リゾート』、『痛快TVスカッとジャパン』、『あいつ今なにしてる?』などの構成をドラマ、『サ道』などの脚本構成も担当している。
プロフィールの通り、これまで手掛けた番組は『山田孝之の東京都北区赤羽』をはじめ、インパクトを放つ数々の番組たち。
講義前半では、放送作家になった経緯や竹村さんの仕事の仕方。人とかぶらない企画をつくる方法をお伺いしました。
小学校の時代の恩師をきっかけに放送作家を目指す
引っ込み思案だった小学校の頃、竹村さんはその後の人生を大きく左右する恩師・有田先生に出会います。
有田先生は、世の中で疑問に思ったことを毎日ノートにまとめる“はてな帳”を書くように生徒に指示します。
竹村さんの書いたはてな帳が、帰りの会や保護者会で発表されると、周りの友達が笑うことが嬉しくて、それが自信に繋がり、明るい性格になったそうです。いつしか自分が作ったもので人がリアクションしてくれることに喜びを感じるようになっていきます。これが放送作家の原点だそうです。
有田先生は授業が面白く、大人になった今でも、授業内容を覚えている竹村さん。世の中につまらないものなんてなくて、伝え方次第でなんでも面白くなる、と教えてもらったそうです。
(たとえば、生まれた時にクラスで一番重かった子の体重を粘土の重さで表現し、生徒の興味を惹いていたというエピソードも)
「子供の頃はテレビは面白かったし、何よりカッコよかった」
「昔から表に出ない軍師に惹かれ、放送作家に憧れていた」
テレビへの憧れは強く抱いていたものの、大学卒業後は放送作家のなり方がわからず、仕事内容が近いと考えた広告代理店に入社されました。
夢は大声で叫ぶと誰かが入り口まで連れて行ってくれる
入社後も、竹村さんが放送作家になりたいという夢は変わりませんでした。
放送作家になりたい旨を、たまたま知り合った所ジョージさんの元マネージャーに言ってみると、当時の鉄腕DASHチーフ作家・田中直人さんに会わせてもらうことができたそうです。
鉄腕DASHの企画を30個を考えてくるように言われ、その翌週に提出。
田中さんから企画の講評と再度30個の企画を考えてくるようにと、何度も繰り返すしているうちに、「鉄腕DASHの会議に来てみれば?」と声をかけてもらったそうです。
当時働いていた会社には外回りに行くと嘘を伝え、鉄腕DASHの会議にスーツ姿で参加。周りの人に「お前誰だよ?」って思われながらも、会議で企画を出し続けていたそうです。そうこうしているうちに「やる気があるならDASHの作家で入れてあげるよ」と言われ、次の日に会社を辞めたそうです。
(こんな転職の仕方があるのか…!と驚く企画生一同)
この転職を「若気の至り」という竹村さん。自分一人の力ではどうしようもない。夢を叶えたいなら、たくさんの人に、なるべく大きな声で伝えることで、誰かが入り口まで連れてってくれる、と当時を振り返っています。
放送作家の仕事はボツ企画を考えること。
念願が叶い晴れて放送作家となった竹村さんですが、駆け出しの放送作家にとって会議での苦悩が待ち受けます。
「鉄腕DASHなどの規模の大きい番組には作家が6〜8人いることがあります。1人の作家が5個企画を出すと、合計で40個。会議で通るのが1つだとすると残りの39個はボツになる。」
自分の絞り出した案も会議では、通らないことの方が多く、むしろ逆に竹村さんは「ボツ企画製造マシーン」と割り切り、仕事をしているそうです。
ボツになった企画は、いずれ形を変えて、その後の仕事に生かされるので、いつか陽の目を見るまで冷凍室にしまっておく。ボツに一喜一憂せず、企画を出し続けることを大事にしていると語っていらっしゃいました。
「放送作家の最大の特権は、他の作家のボツ企画をたくさん共有できること。周りのアイデアを見るとなんでボツで、なんで通るかがわかるようになるし、何より考え方、視点の参考になる。会議に出れば出るほど、自分の引き出しが増えていく感じがある。」
放送作家はディレクターの愛人。
「放送作家はイヤイヤやっている人がいない職業。企画を考えることが苦しいと思ってる人は、放送作家をやっていない」
「ディレクターは放送作家になれるが、放送作家はディレクターになれない」
「放送作家は、編集作業やカメラアングルなど、ディレクターの仕事には手を出せない一方で、ディレクターに比べて、仕事の数をこなせる分、業界の事情や動向に詳しくなる」
担当する番組の幅が広い竹村さんだからこそ語れる、仕事の仕方について、企画生一同、前のめりに聞いています。
さらに、企画についてこうおっしゃいました。
「企画は、全員にハマろうと思わなくても良い」
「会議ネタ(会議でしか盛り上がらないけど自分の色が出せるネタ)が大事。会議ネタを面白いと思ってくれたディレクターが違う番組に呼んでくれる。笑ってくれるディレクターにすり寄っていく」
多くの番組の裏側・企画会議を見ることができる。いろんな局やディレクターに会え、その度にアイデア出しのやり方が見れる放送作家ならではの仕事の立ち回り方を教えていただきました。
竹村さん自身、1本の太い柱で支える職人気質とは違い、1本は細いけどたくさんの柱で支えているパルテノン神殿のような作家だと例えていました。
「作家はディレクターの愛人であり、多くの番組を受け持つ。各ディレクターの求める企画やアイデアを出す」
「だから、放送作家にイズムはいらない。持っていてもいいけど、ヨーヨーのように、すぐに手放せる柔軟性が大事」
「放送作家はお誘いを受けて仕事が始まる。そのため、“センスはいい”に越したことはないが、結局は“人間がいい人”に仕事が集まる傾向にある。昔はセンス100だけど社会性ゼロみたいな人がいっぱいいたと思うんですけど、今は締切を守るとか、遅刻しないとか、ちゃんとしてることが大事。これは正しいことだけど、少し悲しい」
良くも悪くもそうなんだと笑いながらおっしゃられていました。
誰もやったことがないことをやる
企画会議で一番きついのはかぶる事。同じことを言うのであれば呼ばれている意味がない。誰も考えてないことを思いつくことが求められるそうです。
「繁華街よりも路地裏で爆竹を鳴らしたい」
天邪鬼気質の竹村さんはとがった企画が好き。
竹村さんの代表作、「山田孝之の東京都北区赤羽」では見ている人にこれまで見たことがない不思議な感覚を与えます。
「この作品ではノンフィクション漫画をドラマにするという、誰もやったことがないことに挑戦した。」
結果的に、局の偉い方が集まる試写では、竹村さん・監督たち・山田孝之さんだけが笑っていたそうです。
新しさは理解されづらい。けれども…
「多くの人が理解できないのは新しい証拠。それに誰もやったことがない作品は、他に比べる作品がないから、とりあえずランキングの暫定1位は必ず取れる」
企画の切れ味を
後半は、企画会議形式で進めて行きます。
事前に出題された課題は「新しい罰ゲームを考えてください」というものでした。今回は課題が事前に共有されない分、罰ゲームを提案した時のその場のリアクションがわかります。
一人ひとり発表して、丁寧に講評をいただきました。
企画生の中から出た、「位置情報をネットで一週間公開」という罰ゲームに対して、「たしかにイヤだけど、位置情報が公開されていることをテレビで表現するのが難しい」と本物の企画会議を再現していただけます。
「フレーズの切れ味」「ネタはなるべく具体的に」など、テレビ番組で求められる考えを指摘いただきます。
「飛び出せ!笑うおじいちゃんの入れ歯キャッチ」
「自身のネタを池上彰に解説される」
などの罰ゲームに対して、振り切っていて、会場に笑いが起きる場面も多くありました。
ラスト30分では、放送作家が企画会議で求められる瞬発力を体験するべく、「池の水全部抜く」や「ポツンと一軒家」のように、“既に世の中に存在してることで、そのままやれば企画になること”が他にないか、アイディアを出し合いました。
企画生一同、議論が白熱したところで、あっという間の3時間が過ぎました。
竹村武司さんが考える「企画とは」
「企画はいろんな人をいろんな形で幸せにすること」
人類史の中で一番素晴らしい企画は「世界遺産」という竹村さん。「世界遺産」という考え方ができたことで、歴史的な建造物が保護されるし、その土地が知られ、観光で人が集まっている。
いろんな人を幸せにすることが、企画の醍醐味だと仰られていました。竹村さんに、数を考えること、かぶらないことの大切さを教わり、企画生は次に進みます。
キャリアハックでの記事はこちら↓
ライター・サムネイルデザイン:小田周介
写真:加藤潤
お読みいただきありがとうございました・・・!
・・・お知らせ・・・
2019年8月31日(土)17時から「企画メシ2019」の特別報告会を下北沢B&Bでおこないます。
きっかけを探してる人、企画やプランニングの仕事に興味のある方、「企画メシ」について知りたい学生や社会人の方など、ぜひお越しください。
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