戦略と設計図
令和7年度から使用される中学国語科の教科書において、中学1年生で最初に出会う説明的な文章は、次のとおりです。
この記事では、説明的な文章(論説文を含む)の読み進め方について、B社の『ちょっと立ち止まって』(桑原茂夫)の教材をもとに具体的に記していきます。
まず、この教材での「読むこと」の指導内容(中1)は、次のとおりです。
ただし、これは指導者サイドのことであって、子らにとって学び取りたいことは、説明的な文章の読み進め方です。これから先の人生の中で、説明的な文章をどう役立て、どう楽しみながら読んでいけるかについて学ぶことです。自分の足で歩けるようにする学びです。
そこで、説明的な文章の読み進め方について、学習のはじめに子らに次のように示し、①から④の流れで進めていくことを確かめます。
ここで大切なことが、2つあります。
1つ目は、説明的な文章は、何のために読むのかということです。
それが「③」です。私たちは、自分が持ち合わせていなかった新たな情報やものの見方・考え方に出会うことを楽しみにしながら人生の中でそれらの文章に手を伸ばすのだということです。もし、手にした文章が「つまらない」と感じるときは、それと出会えなかったということです。学習の終盤で必ず子らに問いたいですね。「読んで、おもしろかった?」と。
2つ目は、「読むこと(理解)」を「書くこと(表現)」へとつなげていくことです。
「②」に学んで、「④」へとつなげていく。自分が文章を書くときの設計に活かしたり、優れた表現を「まね」したりして、自分の表現を豊かなものにしていくという視点です。
この2つを授業づくりの大きな「軸」にしていくのです。
さて、
学習に向けて指導者が必ず準備すべきものは、『ちょっと…』の全文を1枚にまとめたプリントです。A3サイズ1枚にまとめます(まとめきります)。このことの大切さは、私の記事『鳥の目、虫の目』(この記事の最後に紹介中)に取り上げたとおりです。『ちょっと…』の全文を「鳥の目」になってながめ、全体像を常にとらえさせます。
次のものが、そのプリントの実際です。上段に形式段落の番号を示し、自由に書き込みができるスペースがあるのがミソです。
さあ、学習のスタートです。
「①」のこと、つまり、一読して話題の中心をつかむことからです。一読でこれにチャレンジさせることが大切です。(大人になったら、何度も何度も読み返すということはしませんね。ならば、一読でそれができる力をこの時期から養わねばなりません。)
筆者は、この中心の話題を読者に伝えるために「戦略」を練るのですね。そしてそれを十段落で構成していきます。
さあ、次は「②」です。筆者の「設計図」の復元です。文章にあわられる筆者の「思考」をたどりながら、その設計図を明らかにしています。その際には、指導者が示す「問い」が、よりよいものであることが大切です。
実は、この問いは、子らにとっては「ドキッ」とする問いです。3つの「絵」があるのに、2つに分けなさいというのですから…。しかし、最終段落である➉段落をしっかり読むことで、きちんと2つに分けることができるのです。
次の「問い」も、よい問いです。
「何が書いてあるか」というより「どう書き進めているか」を問いにしていますね。その段落が持つ「働き」を問うたり、筆者の「戦略」をさぐったりするのです。こうすることで、筆者の「設計図」が先の板書のように確かめられていくのです。
さて、
次は「④」です。学習の最終段階となるすぐれた表現をまねさせる活動です。
ここでは、⑧段落のまねをさせます。この⑧段落は、論理の筋が通っており、子らのお手本となる文章です。「ほかの見方」の練習にもなり、一石二鳥です。
さあ、やってみましょう!
次の「1枚絵」を子らに与えます。
ほらほら、こうすると、次の絵が見えてきましたね。「コウモリの目」による見方です。
筆者の「戦略」や「設計図」を明らかにしながら楽しく読み、自分の表現に役立てていけること。
どんな説明的な文章が教材として子らの前にきても、この学習スタイル・流れを中学校の3年間かけて貫き、力をつけていくのです。もちろん指導者は、ここに示した視点から教材研究をすすめます。
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