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日々、話す稽古!

話す力」をつけるための国語の授業について、ここまでいろいろとチャレンジしてきました。子らが意識して行う「話すこと」のトレーニング。このことについては、多くの実践事例が多くの場で発表されたり紹介されたりしていますから、私がこの場であれやこれやと述べる必要もないでしょう。

この記事では、子らではなく、指導者の話す力、指導者のスキルとしての話すことについて記していきます。

結論から先に言うと、
指導者が確かな話す力を身につけるためには、子らの前に立つこと自体を常に「稽古(けいこ)」の場として意識し、場数(ばかず)を積み上げることしかありません。

若い先生は、次の6点からまず稽古するとよいでしょう。

ノイズ(「えぇ~」「あのぉ~」など)を取り除く。

全体と部分とを意識し、全体を先に述べる。(これから〇〇について◯つの話します。まず、…。次に、…。)

・話題にはナンバーリングをする。(一つ目は、二つ目は、…)

・話題にはラベリングをする。(これから話すことは、〇〇です。……

長くだらだら話さない。(子らの耳には、聞くことの許容限度があります。皆が我慢強く聞いてくれると思ったら大間違い。)

・まず話に興味を持たせ、子らの顔をあげさせてから伝えたいことを話す、という2段構え

この6点ができるようになるだけでも、ずいぶん違います。

次に、
この稽古の先」についてです。

先日、
「一人で大勢に話すための話芸」と題してた落語家の三遊亭わん丈(わんじょう)さんのお話を聞く機会にめぐまれました。
これが、とてもとても勉強になりました。

▲ 三遊亭わん丈さん

その中からいくつかを次に紹介します。

「間(ま)」の勉強は、師匠へのお茶出しで学んだ。相手のことをよく見た「間」の取り方がとても大切。

独りよがりではなく、自分とお客様との共通点を探りながら、お客様と同じ気持ちになった時にいいものができる。自分が生徒の側だった頃のことを忘れず、聞く方の気持ちになって話すこと。

稽古していることを、悟られない。
ものすごく稽古をして、人前ではアドリブっぽく話す。これがプロ。

このように、子らの前でよりよく話すためのヒントをたくさんいただきました。

こうしたお話の中で、
私が最も心に残ったものは、わん丈さんの次の言葉です。

大きく見せたいときは、大きく見せたいものを大きくするのではなく、そのまわりを小さくする。

これは、高座での一挙手一投足の見せ方について述べた時のものですが、これは子らの前での「話すこと」にも当てはまります。
指導者の中には、子らの前で大きな声をはって話す方がおられます。「私は今だいじなことを話しているんだぞ!」という気持ちはわかりますが、一本調子のアツさ(!?)ですから、子らの耳にはワンワンと響いているだけで、ちっとも届いていません。むしろ、聞く気のクローズ、閉店ガラガラ…が心の中に起こっています。
わん丈さんのこの言葉は、指導者が抑揚をつけて話すことの大切さだけでなく、「平常時のトーン」への意識こそが大切で、「平常時のトーン」でない「今日の先生のいつもとちがうトーン」が子らをひきつけるのだということを教えてくれます。
聞かせたいときには、聞かせたいことを大きくするのではなく、そのまわりを小さくする。普段からゆったりとのびやかにやわらかく話すことができているからこそ、いざという時の普段と違う物言いがストレートに伝わっていくのでしょう。

これは、なかなかのハイレベル。
むずかしい極意ですね。

私たち指導者は、子らを前にして、日々、稽古に励まねばなりません。
意識してこの稽古ができる先生と、そうでない先生とでは、けっこう大きな差となるものです。