リライトを活かす
向田邦子さんがつづった随筆『字のない葉書』が、令和7年度から使用されるすべての中学校国語科の教科書に採用されています。中1の教科書に1社、中2の教科書に3社です。
この『字のない葉書』は、定番教材のひとつですから、中学校の国語科の先生なら一度は授業であつかったことがあるでしょう。
読者の皆さんも、「死んだ父は筆まめな人であった。」という書き出しに、中学生の頃の国語の授業を思い出されるのではないでしょうか。父が小さな妹の疎開の際に持たせたおびただしい葉書。「元気なときは○を書くように…」と。しかし、大きな○がついた葉書は、すぐに小さな○になり、やがて×になり…。そんな随筆でした。
この教材は随筆ですから、私の記事『鳥の目、虫の目』で取り上げた「大人になれなかった弟たちに…」と同様の読み進め方で学習していきます。(この記事の最後に『鳥の目、虫の目』をガイドしておきます。)
この随筆における、向田さんの「父」にまつわる体験は、次のとおりです。
この随筆では、「私(向田邦子)」の目から「父」の姿が描かれることから、「父」が何をどう考えていたか、どういう気持ちでいたかがなかなか書かれていません。しかし、「私」が最も心に残っているものは、父の涙、大人の男が声を立ててなくのを初めて見たことであり、「父」の涙のわけ、その心中をどう読み取るかがポイントにります。
そこで、リライト!
リライトとは、書き換える活動のことです。
書き換えることをとおして、「父」の心中に迫らせます。
リライトさせるシーンは、次のシーンです。
まず、「弟」の部分を「息子」にします。そうすることで、この部分を「父」を書き手にして書き換えさせることに子らを誘導します。そして、「父」になりきらせて( ★ )の部分をリライトさせます。もちろんこのリライトには、ここまでの学習で読み取ってきた「父」像を確かに反映させなければなりませんね。
リライト後は、できあがったものを皆で交流できるといいですね。
当時のあの「葉書」は残っていなくとも、向田さんの心の中には、家族への深い愛情を持つ父が今も残っているのです。リライトによってここへつなげたいですね。
こうしたリライトは、登場する人物の心情をとらえるための活動としてさまざまに活かすことができます。
次に示す『大人になれなかった弟たちに…』(米倉斉加年)をあつかう授業においては、母の「強い顔」「悲しい悲しい顔」にある心情をさぐらせることをねらいとしてリライトに取り組むことができます。
課題 この部分について、「母」を書き手にして、次の書き出しでリライトしなさい。
みなさんなら、どうリライトしますか?
紹介した2つの教材に限らず、リライトが活きる学習について、さらにその可能性を探っていけるといいですね。
(行動や様子の描写でしか表現されていない部分への採用が効果的です!)