話したくなる、聞きたくなる
話す力をつける授業は、どうすればよいか。
私の記事「日々、話す稽古」では、指導者としての話す力の基本・鍛錬について述べましたが、その中のいくつかは、子らにも身につけさせたいものでもあります。
次に示すものは、中学1年生の頃から取り組ませたい事項のひとつです。
これらの指導を学習活動として子らに仕組むときに必要な配慮のひとつが、子らが話したくなること、子らが聞きたくなることへの配慮です。
この記事では、私が中学1年生の国語の授業でおこなった実践について紹介します。
授業のスタートでは、まず、ひとりの生徒だけに次のものを見せ、次のように指示します。
「あなたが見ているものを、クラスのみんなに正確に伝えなさい。」
読者の皆さんなら、どのように説明して伝えますか?
ここからはじまる授業のポイントは、全体と部分とを意識し、部分を順序よく話すことです。
これが今日の授業への導入です。
いったい今日の授業は何を目標にしてがんばるのかを確かめます。これをうまく説明できた生徒は、得意顔です。うまくいかなかった場合には、「私なら、もっとこう説明する…」と考え出す生徒もいます。
さあ、次です。
4人のグループをつくらせ、そのグルーブごとに1枚、次のような課題文と図とを1枚ずつ配布します。4人に頭を突き合わせてそれを確認させます。
グループの4人が一斉に考え出します。
読者のみなさんも、
シンキングタイムです!
指導者は、一切の助言を控えます。控えねばなりません。
そうこう考えているうちに、クラスに一人、二人、「あっ、わかった!」という生徒が出てきます。(出てくるまで、待ちます。)
わかった生徒は、話したくなります。皆にもわかってもらうために話したくなるのです。いまだにわからない生徒は、聞きたくなります。何がどうわかったというのか聞きたいのです。
話す必要性と聞く必要性がグンとあがっていく瞬間です。
場合によっては、「わかった!」という生徒を、指導者のところまで来させて、こんなふうに「こそこそ」させます。とても、楽しいです。
この時、指導者は、正解であれば教室中に聞こえる声で、
「すごい!正解!」とあおった後、その生徒にこう言います。
「全体と部分とを意識して、わかりやすく説明できるようにしなさい。」と。
「わかった!」という生徒は、残りの3人がわかるように説明し出します。そして、やがて4人ともが分かった状態へ。「わかった!」が出ないグループは、焦りだします。
指導者は、制限時間を設け、それをこえる場合には、次の一手です。
4人ともがわかったグループのメンバー1人ひとりを、まだわかっていないグループへと派遣させるのです。ただし、派遣者には、「一回の説明しかできないよ!」というプレッシャーを与えておきます。
「どうしたら、一回でわかってもらえるようなわかりやすい説明ができるだろうか? そうか、全体と部分、そして、順序よくか…。」
派遣者は、どう説明したらわかりやすいかをさらに探り出します。
このあとは、もう紹介するまでもないでしょう。
このあと、それはそれは活発な話す姿、聞く姿が、教室にうまれます。
そして、全員がわかった後で、教室全体でよりわかりやすい説明の仕方について確かめ合います。
子らが話したくなるように。
子らが聞きたくなるように。
プロの指導者なら、そんな学習を仕組んで「話す力」をつけさせたいものです。
P.S.
まだ、よくわからないという読者のために。