「ごきげん」についてちゃんと勉強してみることにしたら、全然言語化できていなかった話
ごきげんをテーマにライフコーチに取り組んでいる僕だが、そういえばごきげんについて書かれている本をちゃんと読み直した方がいい気がすると思い立った。
そこで、辻秀一さんの『「機嫌がいい」というのは最強のビジネススキル』という本を読んでみることにした。
この本では、認知脳と非認知脳をテーマに「機嫌がいい」とはどのような状態で、「機嫌がいい」状態になるにはどうすればよいかということが解説されている。
じっくり読んでいるのでまだ途中ではあるが、まずは「ごきげん」とはどのような状態であるのかというパートは読み切ったので、記載内容に触れながら考えをまとめていきたい。
ごきげんとは「揺らがず囚われず」な心の状態
心の状態は「気持ち」や「気分」と表現することができるが、ここには思考や考えも含まれており、例えば「もうちょっと頑張りたい気分」はなんとかしたい状況があることに対する「考え」であったりする。
その点「機嫌」は間違いなく心の状態のみを示すことができる言葉と言える。
心の揺らぎを「セルフイメージが大きくなる・小さくなる」と表現したモントリオールオリンピック射撃競技のキンメダリストであるラニー・バッシャムや、無我夢中の状態を「フロー」であると理論化したシカゴ大学の行動科学教授チクセントミハイなどが、機嫌について言及している。
「機嫌」は日本独特の表現であり、さらに機嫌がいい状態は「ごきげん」機嫌が悪い状態は「不機嫌」という言葉で表すことができる。
「ごきげん」にはワクワクした状態、リラックスした状態、楽しい状態、安心した状態などが含まれており、「不機嫌」にはイライラ、怒り、落ち込み、がっかり、不安、心配を全て含まれている。
フロー理論では、「ごきげん」のように何にも揺らがず囚われない自然な状態を「フロー」であるとし、「不機嫌」のように何かに揺らぎ囚われてストレスを感じている状態は「ノンフロー」だと表現している。
言葉と意味を持つ人間は認知機能に溺れている
人の脳は全てのモノ・コト・ヒトを「言語」で定義し、そこに「意味」をつけて認知する。
そして各々が勝手につけた意味から感情が発生する。
例えば「イヌ」と言語で定義された生き物には、人それぞれが「人懐っこい」という意味や「襲ってくる」という意味を勝手につけたとする。
人懐っこいと意味付けした場合、イヌを見るとかわいいだったり癒されるという感情が生まれ、また襲ってくるという意味付けをした場合、イヌを見たら怖いという感情が生まれたりする。
人間はネガティブな意味付けをする傾向が強く学校や部活、仕事などに対してストレスを感じて不機嫌になりやすい。
認知機能は行動の内容を考える機能で、「〇〇のために何をする」ということを考える。
ここで〇〇というのは「結果」であり、人は結果を出すためにどうすればいいのかということを永遠と考えている。
結果を出すために何をするか考えるため、認知脳は自分の外にある環境・出来事・他人という情報を求め、これらの情報から何をするか決める。
現代社会は情報に溢れており、人間が持つ認知脳のキャパ以上に情報が流れ込んでくるため、これらを処理しようと認知脳は暴走状態に陥って脳が自分をコントロールできなくなり、心を無くした状態「マインドレス」に陥る。
人は日々未来の計画を立て結果を出すためにするべきことを確立する「PDCAサイクル」を回したり、さまざまな環境・出来事・他人を対応・対策・対処してストレス状態から抜け出そうと考えているため、認知脳はフル回転している。
現代社会はあまりに情報に溢れていて、外界のマネジメントで自分をストレスから守るには限界がある。
大事なのは非認知脳の能力を発揮させること
認知脳では「何」をするかという「内容」を考えるが、人が生きる上でもうひとつ重要なのが先ほどから触れている「機嫌」であり、非認知脳はこの「心の状態」を考える機能である。
認知脳では自分の外側に対して「認知」していくのに対して、非認知脳では自分の内側に対して考えを及ばせる。
日本社会では「どう行動したか」「何に取り組むか」といった結果にアプローチする認知的な行動がほとんどで、「どう感じたか」「心の状態はどんなか」といった非認知的なアプローチは蔑ろにされている。
ひとが何かをする上で結果が出るかどうかは行動の内容で決まるが、その行動の「質」はどのような心持ちであるかによって決まるため、いくら効果的な技術を持っていたとしても、不機嫌であればパフォーマンスは発揮されず、その行動は質が悪いと言わざるを得ない。
そのため「どんな行動をするか」を考える一方で、「どんな心持ちで臨むか」も人生において重要な要素であると言える。
「機嫌がいい」ということは心に余裕があるということであり、何かに心を揺さぶられたり、何かに固執して囚われていたりすることなく、ただ自然な状態であるということである。
機嫌がいいと日々のあらゆる行動の質が上がるので、活力が生まれ、成長でき、健康的で、人間関係もよくなり、運も味方につく。
逆に機嫌が悪いとあらゆるものを失い、その先にはうつが待っている。
不機嫌で失うものが列挙されていたので、ここに転記しておく。
また、この本ではただ気分がいいだけで認知脳が働いていない状態を「偽ごきげん」としており、ビールを飲んでやることをせずにハッピーな状態はよしとしていない。
結果に向けて行動の「内容」を考える認知脳と、心の状態を整えて行動の「質」を上げる非認知脳の両方の機能を発揮させてこそ「ごきげん」な状態であり、「機嫌よくやるべきことをする」ための脳の使い方がビジネススキルとしての「ごきげん」だとしている。
外は変えられないが、自分の自然体で自分の心の状態を自分で作っている感が「ごきげん」にとって大切なのである。
言語化できていなかった「ごきげん」について
以前ごきげんについて記事を書いてみたとき、ごきげんの説明として「愉しむ心」と「活きる感覚」が生む「自燃」の状態と記述した。
この本から「ごきげんとは認知脳と非認知脳が発揮されている状態」と読み解いた僕は、あながち間違ったことを言っていたわけではなかったと感じている。
結果のためにどう行動するのかを考える認知脳が発揮された結果「活きる感覚」が得られ、非認知脳を発揮して「愉しむ心」を持つことで行動に質が伴うのである。
そして、ごきげんとは「揺らがず囚われない自然な状態」という記載も、ニュートラルな「自燃」の状態という僕の表現に親和性を感じる。
ただこの本の著者は30年かけて「ごきげん」を極めたメンタルトレーニングの専門家なだけあって、さすがの言語化力に圧倒されている。
行動、思考、練習、勉強、生活の質を上げるためのキーワードが「ごきげん」であるというこの本当の出会いは、「ごきげん」をテーマにコーチングをしていきたいと考えている自分にとってはとてつもない追い風に感じた。
引き続き読み進めるとともに、今後は非認知脳を学び、発信に取り入れていきたいと思う。
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