死にたがりだったあなたへ
「ひまわり畑を見に行こう」
そう言ったあなたは、わたしをひどく拒んだ。何かに怯えるように、逃げるように、救われることを恐れ、別れを告げた。
あの頃、誰よりも会える場所にいたのに、あなたは会うことすら許さなかった。近づき過ぎたのだろうか、わたしが恐怖を与えてしまったのではないか、どうして差し伸べた手を拒んだのか、どうしても分からなかった。
だからこそ、いなくなったあなたの代わりなんて、誰もいないと知ってしまったのだ。ただ虚しさと、悲しさだけがわたしを捕らえて離さなかった。
何がそんなにもあなたを苦しめていたのか理解するだけの闇がわたしの中にはまだなかったから、あなたを深く暗い場所に追いやってしまったのだろう。
そのことに気づいた時、わたしもあなたと同じように、差し伸べられた手を握り返すことの恐怖を知った。
救って欲しいと頼んだつもりもなくて、救われたいと思ったこともない。それでもやって来るその優しさという名のエゴに、心が、わたしの聖域が侵食されていくことの恐怖。それが恐ろしくて堪らなかったのだ。
「きみを救いたい」
友人からのその言葉に、
「救われたいなんて思ったことない。わたしの世界を壊そうとしないで。」
言葉にするのすら苦しくて、それまでの出会いのすべてをを否定してしまったようで、悲しくも思った。
わたしがあなたにしてしまったことの重大さを痛感したのは、この時だった。切り捨てたかったわけじゃない。そうするしかなかったのだ。
あなたと別れて9年、片時も忘れることのなかった約束。9年越しに叶ったんだ、わたしにとって、希望のような約束。わたしを覚えていなくても、いつかあなたに届きますように。
死にたがりだったあなたへ、あの頃のわたしにとって、あなたは希望で最愛の人でした。
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