「プーチンは好き?」ーー交際前、ロシア人に確認していたこと
このウクライナとロシアの情勢が依然落ち着きません。この問題を耳にするたびに旧ソ連国や共産国の友人のことを思い出してさまざまな複雑な気持ちになります。今回もそのうちのひとつを書き記したいと思います。
私は2007年にドイツに行き、そこで20カ国以上の人と障がいを持つ方への介護の実習をし、また多くの国籍の障がいを持つ方たちと共同生活をしました。
私はそのドイツでの生活で実習者や障がい者を含め8名ほどのロシア人と知り合いました。
知り合った多くのロシア人は温厚で優しく魅力的でした。音楽や美術に精通した人が多かったです。また友人の多くが日本好きでした。そのうちのひとりのAnaと2012年私が仕事を辞めて海外を放浪旅しているときに再会しました。
2012年ロシア人の友人との再会
彼女は学業と仕事の両立をしており忙しかったことと私も限られた時間と予算の中で旅のスケジュールを多く詰め込んでいたため、ある日の夕方から夜までという限られた日時でしか会えませんでした。そんな限られた時間でも私に会おうとしてスケジュール調整してくれたことに感謝でした。
彼女と再会してから知ったのですが、その同じ時に彼女にアプローチをかけているドイツ人男性とも約束をしていたとのことで、なんと交際前の男女2人におじゃま虫の私、という奇妙な組み合わせの3人で会うことになりました。その男性には申し訳ないと思いつつ私が彼女に会えるのはその時しかなかったこともあり、厚かましくも同席させていただきました。
その彼は私にも気を遣ってくれ3人で和やかに楽しく過ごせたかなと思っています。(もちろん彼はほんとうは二人で会いたかったに違いないとは思いますが)。
ドイツ人男性とロシア人女性の会話
3人で進む会話の中で時折二人がお互いのことを訊き合い探り合うような場面がありました。付き合う前にお互いのことを知りたい、確かめたいと思うことは当然たくさんあると思います。その繊細なやりとりを私は厚かましくも近くで見ていました。私たちはオープンテラスのカフェにいて、野外に設置された大画面のテレビにたまたまプーチンが映し出されました。そこでドイツ人男性はふとロシア人女性に「プーチンは好き?」と尋ねました。
するとそれまで静かだった彼女が少し感情的になり「嫌い」「支持しない」と語気強く返答をしていました。そして彼の政策の批判をしていましたが、具体的にどんな話をしていたかは忘れてしまいました。ただ普段穏やかだった彼女がこのように感情的になったことが驚きで、私は今もその時の彼女の様子が心に残っています。
思えば今まで政治的な会話を好むドイツ人や他の国の人たちには多く出会い、私自身も彼らに何度も日本の政治の話を振られました。当初はそんな話を日本ではあまりしてこなかったこともあり、面くらってしまい、あまり言葉にすることができませんでした。その時自分の浅はかさを思い知ったような心境になり、自分を奮い立たせて政治や歴史を勉強をし直し、そして拙い知識や考えながらも何とか言葉にして伝える習慣ができるようになりました。
上記のドイツ人の男の子もこの「ドイツ人にとってはあたり前のこと」として、ふとプーチンのことを聞いたのかと思います。また付き合う上で政治的価値観を知ることは重要だとも考えたために彼女にこのことを訊いたのかもしれません。
ロシア人と政治の話をしたことがなかった
その後彼と別れて彼女の家で二人で夜遅くまで過去のよもやま話から先ほどの彼の話までさまざまなことを話しました。大学の課題があったりと夜もあまり長く一緒にいられないと聞いていたのですが、結局ロシア料理を振る舞ってくれ、夜遅くまでさまざまな話をし続けました。しかしその話の中で政治の話は全くありませんでした。振り返れば私自身もAnaを含めどのロシア人も自分から政治の話を持ちかける、ということはありませんでした。先ほどのプーチンの話題について、Anaが感傷的になっていたのが気になって、詳しく聞いてみたいという気持ちは少なからずあったのですが、日本人の思考なのかなんとなく聞いてはいけないような気がしてしまい、聞けませんでした。
ロシアのことやロシア人の考えをもっと知りたい
先述のとおり、ロシア人も日本人のように一般的にはあまり政治的な話を自分からしたがらないのかもしれません。ですが、今は彼らの考えを切実に知りたいと思います。Anaはプーチンに強い嫌悪感を抱いているということを先述のドイツ人の質問で初めて知りました。この時は2012年でしたが、これまでにもプーチンに対して強く批判したいことが蓄積していたのだと思います。もちろんロシアを巡る世界情勢はその時もある程度のことは把握していましたが、現在ウクライナがロシアにより非常に苦しく悲しい状況となっている中で、今一度自分で様々なソースから情報収集をして、改めて考えてみたいと思いました。同様にプーチンを支持する人の意見も知りたいです。
現在の彼女と他のロシア人の友人たち
その後結局このロシア人女性とドイツ人男性は付き合わなかったそうです。そして現在彼女はロシア人の男性と結婚し小さなお子さんとモスクワ近郊で生活をしています。彼女のSNSのプロフィール画像はこのウクライナへの侵略が始まった直後から真っ黒になりました。ドイツメディアのロシアを批判する記事を一度シェアしたのち、何も投稿しなくなりました。私のロシア人の知り合いはドイツで知り合った人たちと別件で知り合った友人を加えてもさほど多くはありませんが、他のロシア人の友人のSNSも2月24日以降ほとんど投稿されていません。
おわりに
このAnaのようにロシア人でもこの戦争が反対の立場にあるとき、この現在の状況は居た堪れないものであると思います。ましてや徴兵され、ウクライナと戦えなどと言われたなら。。
ウクライナ人のためということは言うまでもなく、戦争反対のロシア人たちのためにもそしてこのニュースに胸を痛める私を含む全世界の人々のためにもこの戦争が早く終わることを望みます。